【ニュース・イギリス】英国の研究における中国の影響は過去20年間で10倍に

 
2021年3月9日、King’s College London の政策研究所及び Harvard Kennedy School は、英国の高等教育及び研究における中国との融合の実態
を示した報告書「The China question」を発表した。

 
前の大学大臣の Jo Johnson フェローが中心となってとりまとめた当該報告書によると、中国と英国の共同研究はここ数十年で著しく増え、両国の
関係をコントロールするための強力な方策の必要性が強調されている。

 
2019年の中国と英国の共著論文は2000年の約750編から増え16,267編であった。Web of Science の「global citation index」によると、20年前、
中国人著者を含む英国の研究成果の総数のわずか1%だったものが、現在は約11%に達するまでになっている。

 
当該報告書は、現在の軌道に基づくと、中国は英国を追い抜き、世界最大の研究開発費支出国になるとともに英国の最も重要な研究パートナーとなる
ことが想定され、地政学的緊張が高まる中、政策立案者に差し迫った問題をもたらすことを提起している。

 
現在、英国のインパクトが高い研究のうち中国との共同研究が20%以上を占めている分野が20以上ある。3つの主要な分野(自動化と制御システム、
電気通信学、材料科学・セラミック)ではその研究成果の30%以上が中国との共同研究である。

 
著者は、この増大した融合度合いから、中国から分離するといういかなるアイデアも実行不可能であり、かつ国益になる可能性は低いと論じている
が、現実的なリスクを軽減する余地がある共同研究への明確かつ戦略的なアプローチの必要性を示唆している。

 
大学の規制当局である学生局(OfS)は、これらのリスクをより積極的に監視するとともに、多様化戦略等を通じ、それらを防ぐように警戒する計画
を整備することを高等教育機関に要求する必要があると著者は提言している。

 
当該報告書では、中国に対する高等教育の輸出は、英国唯一の最大のサービスであるが、赤字の研究を内部補填するために中国人学生からの多額の
授業料収入の黒字を頼みにすることは、戦略的な依存と潜在的な脆弱性を生み出すことを示唆している。

 
しかしながら、当該報告書によると、中国自身の高等教育システムの収容能力及び機関の質の伸びは、中長期的に、中国人学生が留学することに
対して重大な下押し圧力となる可能性があるとともに、中国は今後10年間で、中国自体が高等教育の世界的な目的地としての魅力を確固たるものに
する可能性があるとしている。

 
また、当該報告書は、英国の中国人留学生は全体の満足度がとても高く、退学率もとても低いことを示し、英国の大学が、中国国外で学習する
ことを選ぶ中国人学生を引き付ける強い立場にいることを示唆している。

 


「The China question」(報告書全文): Students more confident with online learning than lecturers are about teaching digitally


地域 西欧
イギリス
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国際交流 国際化
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