「ドイツと日本は似ている」という言葉を聞くことがある。日本人特有の観点なのかと思っていたが、ドイツの研究者からもそのようなことを聞いたので、ある程度相互の印象なのだろうと考えている。確かに近代史を見てみると、少々似たような境遇を経験して今に至っているのかもしれないとも思えるし、「時間に正確」「几帳面」と言った身近な事柄を想起する人もいると思う。今回1年間の国際協力員研修を経て、筆者は上記のような漠然とした感想を改めることとなった。
最も違いを感じたのは、行政のトップから発せられるメッセージである。学術に関する声明や政策に進展がある際の発表等で度々聞かれる「学問の自由」という言葉は日本においてあまり行政や政治家から発せられない思想であるように思う。また教育に関しても、ドイツ連邦教育研究省のAnja Karliczek大臣は、連邦奨学金法(Bundesausbildungsförderungsgesetz:BAföG)の月額支給額を増額することを発表したプレスリリースで、「ドイツはチャンスの国である。教育へのアクセスは、筆者たちの社会の最優先事項である。筆者たちは両親の財政状況に関係なく、誰もが可能な限り最高の道を追求できるようになってほしいと考えている。(以下略)」と発言している*1) 。確かに見かけは似ていることが多いかもしれず、個人レベルで見れば似た考え方を持つ国民が多いかもしれない。しかし国全体の動向や政策を見ると、ドイツと日本は根幹の哲学が全く異なっていると感じる。
本レポートにおいては、教育研究、特に研究開発関連の基本的な事項に話題を絞り、ドイツの学術に関わる基本的事項、政策の現状、国家規模で推し進められている事業、研究者個人の支援体制の違い、最近の学術動向等をまとめ、最終的にドイツから何を学べるか、この1年で受けた印象とともに述べる。
*1) Mehr BAföG für mehr Studierende: 14.10.2019, Pressemitteilung: 119/2019, B M BF, „
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【氏 名】 宇美 友加里(うみ ゆかり)
【所 属】 東京大学
【派遣年度】 2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ボン研究連絡センター