【国際協力員レポート・ドイツ】競争的資金の審査・評価システムの日独比較

 
 ドイツの科学技術政策の歴史や発展について日本の視点から述べている永野博氏の「ドイツに学ぶ科学技術政策」(2016)の中で、「科学者の自治*1) 」という言葉が印象に残っている。この言葉は、ドイツの代表的な公的ファンディング機関であるドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft:DFG)の組織の最大の特徴として述べられている。ドイツ研究振興協会は、ボトムアップで研究者の基礎研究に対する支援を行う競争的資金の配分機関である。これらの競争的資金の審査をはじめ、協会内の意思決定プロセスにおいては、「研究者の自治」が徹底されており、自治を維持するための工夫が制度の中にみられるという。
 
 日本においては、ドイツ研究振興協会と同様の性質を持つ支援事業として、文部科学省と独立行政法人日本学術振興会が実施する「科学研究費助成事業」(以下、「科研費」という。)がある。本事業は、日本最大規模の競争的資金といわれており、人文学・社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる研究を助成する唯一の制度である。この助成対象の選定には、研究者によるピアレビュー方式がとられ、厳正な審査を経て採択課題を決定し、研究費が配分されている。この審査システムについては、政府が策定した第5期科学技術基本計画(平成28~令和2年度)に基づき、平成30年度助成分より抜本的な改革が行われた(科研費審査システム改革2018)。現在、新たな審査方式の定着に向けて検討や見直しが行われているところである。
 
 本稿では、ドイツにおける競争的資金制度のうち、審査・評価システムに着目して調査することで、日独両国のシステムの特色を比較・考察することが目的である。


*1) 永野博(2016)「ドイツに学ぶ科学技術政策」 近代科学社 148頁

 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約1MB)
 

【氏  名】  渡邉 優(わたなべ ゆう)
【所  属】  広島大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ボン研究連絡センター

地域 西欧
ドイツ
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
大学・研究機関の基本的役割 研究
レポート 国際協力員
研究支援 研究助成・ファンディング