【国際協力員レポート・中国】中国の高大接続改革

 
 日本の高等教育における重要な課題のひとつに「高大接続改革」が挙げられている。近年、高等教育に対するニーズが大きく変化し、社会において即戦力となるような人材や、国際社会で自立して活躍できる人材の育成が求められるようになった。これらの状況を踏まえ、2007年の学校教育法改正では、グローバル化の進展や人工知能技術をはじめとする技術革新などに伴い、予見の困難な時代の中で新たな価値を創造していく力を育成するため、「基礎的な知識及び技能」「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」「主体的に学習に取り組む態度」という、「学力の3要素」から成る「確かな学力」を育むことが重要であることが明確にされた。しかし、現行の大学入試においては、知識・記憶力などの測定しやすい一部の能力や、選抜の一時点で有している能力の評価のみに留まっている、また丁寧な評価よりも学生確保が優先されるなど、高等学校教育で培ってきた力や、これからの大学教育で学ぶために必要な力を評価するものとなっていない状況が続いている *1)。このため、2012年から中央教育審議会において「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」の審議が開始され、2年程の議論を経て、「高等学校教育」「大学入試」「大学教育」の一体改革を実施すべく、2015年に、文部科学省より「高大接続改革実行プラン」*2) が発表された。現在は、これに基づき、高等学校教育改革、大学入学共通テストの導入、大学教育の質的転換が進められているところである。

 
 一方、中国の状況をみると、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの世界大学ランキング2020からも明らかなように、世界上位100大学に清華大学(23位)、北京大学(24位)、中国科学技術大学(80位)の3校がランクインしており、同誌Chief Knowledge Officerであるフィル・ベイティ氏も、「中国の大学ランキングにおける順位上昇は、数十年にわたり一貫して教育改革と教育投資に尽力した賜物であり、著しい成果をあげた。また、この情勢は今後もなお続くであろう。」と分析している *3)。日本学術振興会北京研究連絡センターが事務局となっている在中国日本人研究者ネットワークにおいても「世界の中で、どうしたら日本の学術研究が生き残れるか」といった話題が取り上げられ、「まだ、日本がトップレベルと言える分野もいくつかはあるが、(理系の)ほとんどの分野の研究において中国が日本を凌駕しているのが実情である。これらの研究は、アメリカ留学から帰国した研究者によって牽引されており、豊富な資金にも支えられ、今後ますます発展していくと思われる」といった状況が報告されるなど *4)、目覚ましい成果をあげ続けている。本報告では、広く世界で活躍する人材を生み出し続けている中国の教育改革、特に2014年から実施されている高大接続改革(新大学入試総合改革)について概観したい。
 


*1) 中央教育審議会、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」
   文部科学省HP、平成26年12月22日公開
*2) 文部科学大臣決定、「高大接続改革実行プラン」、文部科学省HP、平成27年1月16日公開
*3) 【中国那些事儿】世界大学最新排名清華北大領跑亜洲、中国日報网、令和元年9月14日公開  (2020年2月13日アクセス)
*4) 令和元年7月1日開催、第一回在中国日本人研究者ネットワーク「さろん」にて

 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約1MB)
 
【氏  名】  簗 美浦子(やな みほこ)
【所  属】  筑波大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 北京研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 入試・学生募集
レポート 国際協力員