【国際協力員レポート・スウェーデン】高等教育機関における国際的流動性と同窓会海外支部の関係 -スウェーデンの大学に着目して-

 
 本稿の目的は、大学の同窓会海外支部が大学の国際的流動性、特に留学生誘致に与える影響や効果について、スウェーデンの大学の国際化戦略や国際的流動性の動向、その中での大学同窓会海外支部の位置付けや活動内容、彼らと大学との連携に関する調査を通して明らかにしていくことである。

 
 筆者がストックホルム研究連絡センターへ着任した2019年4月1日以降、筆者は北欧諸国における日本学術振興会(JSPS)のAlumni Association*1)(日本学術振興会においては「同窓会」と訳している)の活動に携わる機会を多く得た。同年4月12日、日本学術振興会の19番目の同窓会として、JSPSノルウェー同窓会(ACN)が設立され、10月17日にACN設立記念式典が開催された。また、12月12日にはJSPSフィンランド同窓会(ACF)10周年記念式典が行われた。他にも、年に数回行われる各同窓会でのセミナーやJSPSが提供する「外国人研究者 再招へい事業」(BRIDGE Fellowship Program) など、同窓会を通して日本と海外の研究交流が行われた。筆者はこれらの経験から、「同窓会海外支部(Alumni Chapters)」という人的ネットワークが、日本と海外の国際交流の促進や人材の誘致、そして組織の海外でのプレゼンスを高めることに貢献しうるという新たな気づきを得た。文部科学省が2013年にまとめた「世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略(報告書)」の中でも、世界規模で優秀な外国人留学生の獲得をめぐってしのぎを削る状況の中で、各国に存在する帰国留学生会との関係強化やフォローアップを実施していくことの重要性を指摘している。

 
 経済協力開発機構(OECD)が発行する「Education at a glance 2016」によると、2014年時点において、日本の高等教育機関 *2)における留学生受入比率 *3)が約3%にとどまっているのに対し、ストックホルム研究連絡センターの所在地であるスウェーデンは、約6%となっている。また、スウェーデン国内の高等教育機関*4) における受入留学生数は、2010年度の授業料導入に伴い、2013年度には過去最低の約32,600人まで落ち込んだものの、その後は徐々に回復を見せ、2016年度には約35,900人まで増え、依然として増加傾向にある(SOU *5) 2018:78)。「留学生30万人計画」といった戦略を掲げるなど、高等教育機関の国際化を図る我が国にとって、スウェーデンの高等教育機関における国際化に向けた戦略を学ぶことは意義深いと考える。

 
 このような背景から、スウェーデンの高等教育機関で掲げられている国際化戦略、特に、彼らの戦略の中での同窓会海外支部の位置付けや、それらを利用したアプローチの内容などを把握し、我が国への示唆を得ることを目的に、本調査を実施することとした。

 


*1) 「日本学術振興会の事業経験者である外国人研究者」を対象とした「研究者コミュニティ」を指す。
*2) 我が国の大学(大学院を含む。)、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、我が国の大学に入学するための準備教育課程を
   設置する教育施設及び日本語教育機関を指す(日本学生支援機構ホームページ)。
*3) 国内の高等教育機関に在籍している全学生のうちの留学生の割合を指す。
*4) 一般的に、スウェーデンの「高等教育機関(Higher Education Institution)」はuniversityとuniversity collegeを指す
  (The Swedish Higher Education Act)。
*5) Statens Offentliga Utredningar(スウェーデン政府調査委員会報告書、和名は武(2018))

 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約1MB)

 
【氏  名】  吉中 真優(よしなか まゆ)
【所  属】  京都大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ストックホルム研究連絡センター

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
国際交流 国際化
レポート 国際協力員