【国際協力員レポート・スウェーデン】北欧諸国の高等教育機関における意思決定と学生の役割

 
 近年、「大学改革」という言葉をよく耳にする。実際、様々な場面で大学改革が求められている。例えば、文部科学省の「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」 *1) 、日本経済団体連合会の「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」 *2) 等、官民を問わず大学改革の必要性を訴えている。こうした状況を鑑みると、高等教育機関(以下、「大学等」という。)が、社会、環境、社会の潮流等の状況に適応しながら改革を行うことは、もとより必要要件である。
では、多種多様な情報や価値観で溢れている現代社会において、大学等は何をどのように改革すべきなのか。異なる利害を持つ関係者が議論し、その結果最適な解を組織として意思決定することが必要になる。

 
 日本の大学等においては、国立大学法人法 *3) で規定している経営協議会や教育研究評議会、私立学校法 *4) で規定している理事会や評議員会等が組織の最高意思決定機関として重要事項を審議・決議しているのが大半である。最高意思決定機関が重要事項を審議・決議する場合、それぞれの大学等の定款に定められるところによるが、多くがその組織に所属する教職員の代表、外部の学識経験者、企業経営者等、組織・学術・経営分野における有識者によって構成されている。

 
 2017年当時学校法人の運営に関する事務に携わっていた筆者は、北欧の大学等では学生が意思決定の場に参加しているという事実を知り、次の疑問を抱いた。「日本では、教育・研究の受け手である学生が、組織の最高の意思決定の場に参加している大学等はあるだろうか。このような場に学生が参加する必要はないか。また、学生の声や要望をどのように反映しているのか。」これが本調査の実施に至った直接の動機である。

 
 組織の最高意思決定の場に学生が参加している北欧諸国の大学等においては、どのように意思決定が行われているのか。学生は意思決定への関与をどう考えているのか。彼らはどのような経緯で意思決定の場に参加しているのか。学生の声や要望は、意思決定に影響を及ぼしているのか。

 
 本稿では、「北欧諸国の高等教育機関における意思決定と学生の役割」をテーマに、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークの大学等における意思決定の仕組み、いわゆるガバナンスについて検証する。

 
 調査は、(ⅰ)北欧諸国における大学等の制度面についての文献・インターネット調査、及び(ⅱ)実際に学生代表として、大学等の最高意思決定機関への参加を経験した学生へのインタビュー調査、の手法で行う。特に、実際に学生代表として、最高意思決定機関に参加した学生へのインタビューを通して、その場に参加する背景・意義について探るとともに、日本の大学等において適用する場合の留意点についての考察を行う。

 


*1) 文部科学省(2019年9月21日アクセス)
*2) 一般社団法人 日本経済団体連合会(2019年9月21日アクセス)
*3) 電子政府の総合窓口「e-Gov」(2019年9月21日アクセス)
*4) 一般社団法人 日本経済団体連合会(2019年9月21日アクセス)

 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約1MB)
 

【氏  名】  和泉 一義(いずみ かずよし)
【所  属】  東京理科大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ストックホルム研究連絡センター

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン、その他の国・地域
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事
レポート 国際協力員