【国際協力員レポート・タイ】タイにおける日本語教育

 
 日タイ両国は、600年にわたる長い交流の歴史があるといわれており、伝統的に友好関係を維持してきた。

 
 特に近年は、両国の王室・皇室間の親密な関係を基礎として、活発な要人往来や幅広い人的交流の拡大が顕著である。また、持続的な日本の直接投資や両国間貿易にみられる緊密な経済関係は、今日の日タイ関係全体にとって、大きな役割を担っているといえる *1)

 
 筆者は、2019年4月から、独立行政法人日本学術振興会(略称:JSPS)の「国際学術交流研修」で、バンコク研究連絡センター *2) に派遣された。派遣された当初は、主にバンコク市内で業務していたが、そのなかで印象的だったのは、バンコクにおける日本語の浸透ぶりであった。バンコクの街中には、日本同様多くの商業用の看板が掲げられているが、日本語併記であるものが少なくない。また日本語を流暢に操るタイ人も多く見かける。これは両国間の経済活動が大変活発であり、多くの日本人がタイを観光目的、および商業目的などで訪れることの証左であろう。なお現在、タイには多くの日系企業が進出しており、その数は約7,000社に上ると言われている *3) 。

 
 以上のことから、国家レベルの交流関係にとどまらず、個人間の次元で、タイ国内で居住する日本人とタイ人は、生活をともにするパートナーとなったといえる。

 
 こういった背景を見聞した結果、タイ人向けの日本語教育機関が、タイ国内に多数存在しているだろうという予測が、筆者の中で起こった。また日本語を学ぶタイ人はこれからも順調に増加傾向であるだろうと考えた。

 
 しかし、その予想を修正する必要性について、考える機会があった。
2019年6月に、チェンライ県に設置された、メーファールアン大学(Mae Fah Luang University)*4) に出張する機会を得た。この大学は、2019年9月11日に発表された英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education) *5) のランキングにおいて、タイの大学の中では最も高い順位を獲得している。この大学の特色には様々あるが、「中国」に焦点を当てた学部が設立されていることが、そのうちの1つに挙げられる。School of sinology(中国学)として、3つのプログラムを設置している。他国を研究する名目で設置された学部は、この学部以外にない。メーファールアン大学が、中国に関して専門知識を持つ学生の育成に力を入れていることが分かる。さらに、この大学が上述のランキングで最高順位を得たことで、タイ国内でも、中国学に力を入れる傾向が高まることが予想された。

 
 確かに、タイと中国は年々関係性を深めており、2019年1~6月のタイへの直接投資額は、中国が前年同期比で約5倍 *6) となるなど、経済的親密度が急激に増している。
 


*1) 外務省ホームページが参考になる。
*2) JSPSバンコク
*3) 「タイ日系企業年鑑2019: Japanese Companies in Thailand 2019 ハローアジア (ダイレクトリー)」には、タイ国内の日系企業として
   6,258社の情報を収録している。(収録企業総数:8,220社)
*4) Mae Fah Luang University
*5) Times Higher Education
*6) 日本経済新聞

 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約3MB)
 

【氏  名】  濱端 悠祐(はまばた ゆうすけ)
【所  属】  東北大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 バンコク研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
国際交流 国際化、学生交流
人材育成 学生の就職、学生の多様性
統計、データ 統計・データ
レポート 国際協力員