【国際協力員レポート・アメリカ】大学コンソーシアムの日米比較

 
 日本では、高等教育における国際通用性、国際競争力を強化する事業 *1) などを中心に、大学間の競争が激化している。海外志向の学生を育成するため、複数の大学で海外留学を必須化する *2) など、「グローバリゼーションに対応する国力向上のための多様で活力ある原動力の源泉 *3) 」の発掘・養成を目指した教育(人材育成)に大きな投資をし、海外留学者数の増加に貢献している。このように、大学間の競争により、高等教育のアドバンスメントのみならず、日本国内におけるグローバルイニシアティブの意識が高まっている。

 
 一方で、高等教育業界において非常に深刻な問題とされている18歳人口の著しい減少というダウンサイドも存在する。「2016年の18歳人口は120万人程度であるが、2040年には約80万人まで減少する *4) 」ことが見込まれており、「大学」という高等教育を受ける環境や機会は供給されているが、教育を受ける人口(需要)が減少することでいわゆる「供給過多」の状態が生み出される。「供給過多」の状況下で、各高等教育機関はそれぞれの存在意義を問いただすと同時に、これまでの大学経営や教育・研究支援方法を見直す必要がある。特に地方私立大学を中心として、経営面において困難に直面する高等教育機関が増加しており、日本の大学はどのように課題解決に向けた努力をするか詳細に検討していくことが求められている。

 
 各高等教育機関は教育・研究機関としての将来的な役割をより一層考えていくこと、またその中で教育・研究の質を維持・向上し、それを保証していかなければならない。特に筆者が所属する私立大学の収入の大半は学費収入 *5) であるため、財政構造上、入学者確保を行うことが必須である。入学者を確保するためには、大学の独自性や教学理念に沿った教育の質保証・大学の高度化を追求していくことが重要であることは明らかである。そして一方では、一国一大学で高度化や改善策を考え、実行するには限界もあるため、国や大学を超えた連携を通した教育・研究が求められる。

 
 そこで本レポートでは、産官学連携から単位互換、生涯学習、のみならず近年は学生交流活動、国際連携事業にも力を入れている大学コンソーシアムの活動に焦点をあてていきたい。

 
 筆者の所属大学が所在する京都には、「全国大学コンソーシアム協議会」の事務局にもなっている「公益社団法人 大学コンソーシアム京都」があり、「単位互換事業 *6) 」を筆頭に、インターンシップ事業、留学生誘致・支援事業等多岐にわたる連携強化事業を行っている。米国ワシントンDCでもまた、教育・研究を中心とした質の高い大学機関が多く存在しており、その特性を生かし、大学コンソーシアム「Consortium of Universities of Washington Metropolitan Area」(CUWMA)を組織している。これら2つのコンソーシアムにおける成り立ちから組織や財政構造等を比較することで、大学コンソーシアムのこれからの在り方を考え、高等教育機関の高度化を実現するための一助となれば幸いである。


*1) 「スーパーグローバル大学創成支援事業」を指す。
*2) 早稲田大学国際教養学部、関西大学外国語学部などは2年次より1年間の海外留学の機会を設け、授業料免除や奨学金等で費用面の
   サポートを行うなど国際化に大きな投資と貢献をしている。
*3) 中央教育審議会教育振興基本計画部会(第15回)にて配布されたヒアリングにおける各団体提出資料「4.私立大学の21世紀の方策」より抜粋。
*4) 文部科学省「高等教育の将来構想に関する 基礎データ」(平成29年4月11日)より抜粋。
*5) 文部科学省「私立大学の財政基盤について」(平成28年6月28日)参照。
*6) 他大学等で取得した科目の単位を自大学の単位として修得したと認定する制度。

 
報告書全文はこちらから閲覧可能(PDFファイル:約1MB)

 
【氏  名】  河合 涼介(かわいりょうすけ)
【所  属】  立命館大学
【派遣年度】  2019年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ワシントン研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、予算・財政
大学・研究機関の基本的役割 教育
社会との交流、産学官連携 地域連携、産学官連携
レポート 国際協力員