【ニュース・中国】高等教育機関の募集に31の学部専攻が加わり、見えてきた新たな傾向とは

 
2022年中国の大学受験(高考)の出願が続々と開始される中、学部専攻の設置と学生募集計画に変化が生じている。教育部のデータによると、「普通高等教育機関学部専攻目録」に31種類の専攻が新たに加えられた。また、一部の高等教育機関は公共事業管理、情報管理、情報システムなどの専攻を廃止し、今後の学生募集を停止した。

 
教育部の統計によると、2012年以降、計265の専攻が学部専攻目録に新たに加えられ、1万7,000ヵ所の学部専攻が新設され、1万人分の学生定員が専攻廃止または学生募集停止の影響を受けた。

 
高等教育機関の学部専攻の調整はかねてより経済・社会発展の人材に対するニーズを示す「バロメーター」とされ、学生や保護者の関心が高い。最新の専攻調整にはどのような傾向が現れているのだろうか。

 
新設専攻は工科が約半数、「インテリジェント」「スマート」が頻出

 
教育部が発表した2021年度普通高等教育機関学部専攻届出・審査結果によると、新設された31種類の学部専攻には、工学、経済学、法学、芸術学などの9の学部が含まれる。

 
炭素貯留科学・工学、航空宇宙インテリジェント電気推進技術、スマート林業などの新たな専攻が一部高等教育機関の学生募集計画に初めて現れた。

 
「新華視点」の記者が整理したところによると、この3年では、工学系の新設専攻が多い。2019年度の31種の新設学部専攻のうち、20種が工学専攻である。2020年度と2021年度の新設専攻数はそれぞれ37種と31種であるが、いずれも工学専攻が14種となっている。

 
「スマート」「インテリジェント」などの文言を含んだ「新工科」専攻が頻繁に現れている。例えば、北京交通大学が新設したインテリジェント運輸工学専攻、ハルビン工程大学が新設したスマート海洋技術専攻、西北農林科技大学が新設したスマート林業・スマート水利専攻などである。

 
「これまでがインターネット+とすれば、これからは人工知能+」。国家教育考試委員会専門家グループのメンバーである陳志文氏によると、これは大きな流れであり、人工知能、スマート製造などの「新工科」専攻が今後数年にわたり高等教育機関の学科発展の重要な方向性となり得るという。

 
21世紀教育発展研究院の熊丙奇院長は、新設専攻には国家戦略、科学技術イノベーション、経済・社会発展のニーズが現れていると指摘する。

 
重慶大学などの高等教育機関4校は今年、炭素貯留科学・工学専攻を新設した。説明によると、この専攻は国の「双炭(訳注:2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現する)」目標に忠実に沿ったもので、複合型人材の育成を狙いとしている。

 
今回新設された労働教育専攻については、新時代の小・中(高)・大学労働教育の全面的強化に関する国の要求を積極的に実施徹底するものとする有識者の見方がある。

 
管理系、芸術系専攻拠点の一部廃止が多い

 
近年、高等教育機関で一部の専攻が廃止されている状況について、社会から関心が集まっている。

 
内モンゴル大学は2021年度に12の芸術系専攻を廃止した。重慶大学は2020年、学校の運営方針と合致せず、専門的な基盤が脆弱な専攻の学生募集を段階的に停止していることを理由に、長期的に学生募集が停止状態にある財政学等の10の学部専攻について今後廃止する旨の公示を出した。華南理工大学は2019年以降、社会の需要が不足している、就職状況が悪い学部専攻の募集資格を一時停止している。

 
教育部高等教育司の責任者によると、2021年度に廃止された専攻は804あり、主に社会の変化の需要に適応できない、就職率が低い専攻であるという。

 
記者の調べによると、2021年度の専攻調整では、管理系と芸術系専攻を一部廃止した高等教育機関が多い。そのうち、情報管理・情報システムと公共事業管理の2つの専攻は、それぞれ33校、31校が廃止している。次いでファッション・アパレルデザイン、情報・コンピュータサイエンス専攻で、19校が廃止した。また、プロダクトデザイン専攻は15校が廃止した。

 
華南師範大学粤港澳(広東・香港・マカオ)大湾区教育発展高等研究院の陳先哲副院長によると、一部の専攻における設置「過熱」を防ぐため、教育部は芸術系などの専攻について調整の度合いを高めているという。「廃止されるからと言って、その専攻が重要ではないということではありません。これまであまりにも多く開設され、全体的な学生規模が大きくなり、正常な市場の需要を上回ってしまった可能性もあります」

 
「管理系専攻は新小売、新物流、新商業などの経済形態の変化に伴って構造転換・高度化が進みつつあり、近年の管理系専攻の新設には、ビッグデータなどの情報技術との融合という傾向と特徴が現れています」と陳氏は話す。

 
学科の位置づけが不明確である、学校の運営方針と一致しない、学生の供給源が不足している、教育と就職の質が芳しくないなども、高等教育機関が専攻を廃止する理由であるとの考えを複数の専門家が示している。

 
熊氏は、専攻があっという間に設置されたかと思うと、すぐに募集停止となる状況は流行への闇雲な追従によるものと指摘する。「専攻を開設する際に、自身の位置づけ、学校の運営条件を加味せずに慌てて取りかかり、特色や高い品質を打ち出せていない高等教育機関があり、廃止も無理ありません」

 
「専攻の廃止には、高等教育機関が絶えず資源配分を最適化し、より一層中核分野に的を絞り、力を集中して優位性のある学科を創出しているという点もある程度反映されています」。陳氏によると、一部の専攻は、学部段階での開設に適さず、大学院生以上の段階で人材を育成したほうが、育成の法則に合致している専攻もあるという。

 
専攻調整には原則があり、進学、就職への影響は限定的

 
高等教育機関の専攻は簡単に開設・廃止してよいものなのか。

 
教育部は、専攻の新設にあたっては、「普通高等教育機関学部専攻の教育の質に係る国家基準」に照らして、新設する専攻の必要性と実現可能性を厳格に論証し、学内での審議と公示を行う必要があり、その上でオンライン申請を行うよう高等教育機関に要求している。専攻申請書類の集中公示期間に、教育部は4,300人余りの専門家によるオンライン評議を実施し、申請された専攻の人材育成案、教師陣、教育条件などについて意見、建議を提起するとともに、リアルタイムでフィードバック・指導を行う。

 
教育部高等教育司の責任者によると、専攻の設置と調整の全体的な考え方の筋道は、第一に国家戦略、地域の経済・社会・産業発展の需要に寄与すること、第二に質を重視すること、第三に構造を最適化することであるという。

 
教育部は、専攻設置を申請するにあたって、社会の需要を十分に調査し、詳細で的確な人材需要調査データを専攻新設の理由および基礎とすること、雇用側との意思疎通を強化し、専攻新設に対する社会の具体的なニーズを明確にすることを高等教育機関に要求している。

 
大連海洋大学教務処教育計画・管理課の于旭蓉課長によると、専攻の新設は国と社会にとって早急な育成を要する人材を対象に、就職市場の需要をある程度考慮したものであるという。

 
大連海洋大学は2020年、データサイエンス・ビッグデータ技術専攻を新設した。第1期の学部生、牛浩驊さんによると、新しい専攻に出願した時は不安や戸惑いもあったが、2年間学んでみて、学校側が新しい専攻の準備を着々と進めてきたことが感じられたという。「一人ひとりの学生に指導教員があてがわれ、大学1年の後期には人工知能実験室で研究実験を始めました」

 
取材中には、現在学んでいる専攻が廃止された場合、今後の就職や進学に影響するのではないかと心配する声も学生から少なからず聞かれた。

 
この点については、高等教育機関が関連する廃止規則のさらなる整備を図るとともに、就職指導を強化することで、学生がキャリア開発の可能性を掘り起こし、合理的な計画を立てることを手助けするべきだと複数の有識者が指摘している。

 
曁南大学本科生院の張小欣執行院長は、学部の専攻調整が修士課程への進学に与える影響は限られていると指摘する。学部の専攻と大学院の専攻は必ずしも対応しておらず、学部の専攻に構造転換・高度化や募集の一時停止、廃止などが生じたとしても、所属する学科・分野はなおも存在するため、同じ分野の類似する専攻に出願するとよいと説明した。「学校側は関連専攻の学生が既定の人材育成計画に従って無事に卒業できるよう努め、就職、進学できる環境を整えなければなりません」

 
新华每日电讯2022/06/30


澎湃新闻: 高考招生增加31个本科专业,透露哪些新趋势?


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