【ニュース・中国】就職前の戸籍登録、補助金の支給など多くの対策 各地で大卒者の雇用を促進

 
卒業シーズン真っ盛りの中、大学卒業生の就職・起業を促す政策が多くの地方で打ち出されている。上海、杭州などでは高等教育機関卒業生の最新の戸籍登録(原文:落戸)政策について、有為な人材の戸籍取得のハードルを大幅に引き下げることで、大学生が「就職前の戸籍取得」を行えるようにしている。このほか、武漢、合肥などでは高等教育機関の卒業生向けに面接・就職補助金を交付している。

 
上海・杭州などで戸籍取得の条件を大幅に引き下げ、「就職前に戸籍取得」

 
上海ではこのほど、新たな政策が発表された。上海の各研究所、高等教育機関の新規修士課程修了者、世界一流大学建設の対象大学の新規修士課程修了者、世界一流学科建設の対象大学・学科の新規修士課程修了者については、「ポイント」条件をクリアする必要がなく、基本的な条件を満たせば、直接戸籍を取得することができる。また、上海の「双一流(世界一流大学と一流学科)」建設の対象となる新規学卒者については、5つの新興都市、南北地域重点構造転換地区の企業で働く場合、基本的条件を満たせば戸籍を取得することができる。

 
現在、上海以外の普通高等教育機関卒業生が上海で就職して戸籍を取得するための必要ポイントは通常72点である。卒業生の卒業大学、学歴などの要因がポイントに一定の影響を及ぼすという。

 
浙江・杭州は6月27日、全日制普通高等教育機関の学部・修士課程大学院生、2017年以降に入学した条件を満たす非全日制大学院生を対象に、卒業後2年以内に「就職前の戸籍取得」が可能となる「全日制学部・修士学歴人材戸籍登録政策」を公布した。これ以前は、全日制普通高等教育機関の博士課程大学院生に限り「就職前の戸籍取得」が認められていた。新しい政策の公布後は、この政策の対象となる卒業生が拡大した。

 
「上海、杭州のような雇用やキャリアアップの機会が多い都市で働きたいし、就職する都市を選ぶにあたっては、人材政策が緩和されているところを優先的に考えています」とある卒業生は話す。

 
「新華視点」の取材によると、上海、杭州のほか、武漢、大連、アモイなどでも最近、高等教育機関の卒業生の戸籍取得制限がいっそう緩和された。

 
武漢では就職前戸籍取得政策を押し進めており、満45歳未満(大学院生は年齢制限を受けない)の大学卒業生は卒業証書により市内の戸籍が取得でき、その配偶者と未成年の子女も戸籍を移転できる。大連では地方から大連に来て就職する卒業生に対する制限を撤廃した。満50歳以下の博士・修士課程学生、満45歳以下の普通高等教育機関(高等職業学校を含む)卒業生については、就職前戸籍取得政策の対象となり、本人とその配偶者、未婚の子女については戸籍登録先の派出所が戸籍登録手続きを行う。アモイでは学部以上の卒業生の戸籍取得条件を緩和した。全日制学部以上の既卒者の戸籍取得について年齢要件を引き下げ、従来の「満45歳以下」から「法定退職年齢まで5年以上」に調整した。

 
専門家の分析によると、今年の全国高等教育機関の卒業生数は例年よりやや増加しているが、コロナ禍の影響で就職、転居のペースが例年よりずっと遅い。中央の求人安定・雇用保障政策を背景に、各地では戸籍取得の条件が次々と引き下げられている。高等教育機関の卒業生が生活環境を整える手助けをし、その後の就業・起業につなげることに狙いがあるという。

 
浙江大学公共政策研究院の夏学民研究員によると、戸籍の取得は教育、医療などの公共資源をより十分に享受できるようになることを意味する。これまで戸籍取得の条件が厳しかった1級都市が今回緩和に踏み切ったことには、有能な人材を切に求め、大学生の就職を後押ししようとする積極的な姿勢が現れている。

 
新1級都市が継続的に注力、「補助金」で就職を促進

 
戸籍制限の緩和のほか、武漢、福州、合肥、南寧などを含む多数の都市では今年6月以降、さらに大学卒業生の就職・起業を後押しするための「補助金」を交付していることが記者の調べで分かった。

 
武漢では中小零細企業が大学卒業生を採用しかつ1年以上の労働契約を締結した場合、1人につき1,000元の基準で企業と個人にそれぞれ一時雇用補助金を交付している。

 
合肥では高等教育機関の卒業生を採用し、かつ労働契約を締結して失業保険に加入した企業を対象に、一人当たり1,000元の基準で一時雇用創出補助金を交付するとともに、卒業生本人には一人当たり3,000元の基準で一時雇用補助金を交付している。

 
福州では、卒業後3年以内に、現地で就職、起業および実習・研修を行う意向のある地方出身の全日制高等教育機関の卒業生はいずれも最大1年を超えない期間で無料宿泊を申請することができる……。

 
上述の都市では卒業生向けに雇用促進策、補助金交付を打ち出すほか、自主起業する高等教育機関の卒業生に一時起業補助金、用地支援、起業担保融資の提供、卒業年度にフレキシブル就職した卒業生には社会保険補助金の交付などを行っている。

 
実際のところ、近年、武漢、重慶、西安などの新1級都市では雇用・起業促進政策や住宅優遇政策などで高等教育機関卒業生を引きつけ、一定の効果を挙げている。麦可思研究院 がこのほど発表した「2022年中国学部生就職報告」によると、2021年学部卒業生の新1級都市での就職率は27%で、2017年卒と比べ3ポイント増加した。

 
雇用促進には政策とのコンビネーションが必要

 
「戸籍登録政策の緩和は政策パッケージのうちの一つにすぎず、若者を引き込んだ後、さらにオンライン就職・起業指導および継続的なサービスを強化し、『クラウド』で質の高い就職の実現を後押ししています」と杭州市人的資源・社会保障局の葉茂東局長は話す。

 
6月21日、上海は「当市の現在及び当面の雇用安定業務の適切な実施に関する意見」を発表し、高等教育機関卒業生などの若者の就職を雇用業務の最優先課題とする方針を示した。上海市、区の両レベルの公共雇用サービス機構は求人需要のある各種の重点企業と共同で、上海市人的資源・社会保障局の抖音公式アカウント「上海人社」、WeChat 動画アカウントなどのニューメディアプラットフォームを通じてライブリクルートイベントを10回実施した。ライブ配信イベントは毎週1回行われ、「大学卒業生」「就職・研修拠点」などに的を絞った特色あるライブ配信説明会が企画された。

 
集中的な求人資源、集中的な情報発信、集中的なオンライン人材募集……国務院国有資産監督管理委員会の情報によると、現時点で約100社の中央企業が昨年秋募集、今年春募集を行った上で、夏季人材募集活動を開始した。これは高等教育機関卒業生の就職促進に向けた国有・中央企業の具体的な取り組みの一つである。

 
大学生の就職促進にあたっては、戸籍取得条件の緩和や就職・起業補助金の交付のほか、企業の操業再開、優位性のある産業の創出、雇用機会の増加、公共サービスの質向上、生活環境の最適化も積極的に推し進める必要があるとの見方を複数の専門家が示している。

 
取材に応じた数名の卒業生によると、どの都市かに関わらず、理想的な雇用機会こそが根本で、「張合いのある生活こそが目的」と言う。

 
「私たちの今の人材誘致政策は『お金』で勝負するのではなく、人材がどういった支援を必要としているのか、どのような将来の心配を解決するかを考慮しています」と浙江杭州余杭区委員会組織部の担当者は話す。

 
新华社2022/07/07


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