【ニュース・中国】メディア掲載記事:大学生の就職率が低い背景こそを探るべき(1)

 
華中師範大学が先日発表した卒業生の就職率は、世論の注目を大いに集めた。ネットユーザーがこぞって「いいね」を付けただけでなく、多くのメディアからも称賛の声が上がった。というのも、これは「水増し分」を除いた真実の数値を発表したものと見なされたからである。

 
華中師範大学が発表したデータによると、2021期の学部生、修士課程卒業生、博士課程卒業生の就職率は、それぞれ73.78%、84.81%、86.05%で、未就職率はそれぞれ26.22%、15.19%、13.95%となり、全体の未就職率は20.95%である。

 
卒業生の5分の1は就職先が決まっていないことになり、多くの大学が就職率を90%以上から100%近くと公表している状況とは、確かに大きな開きがある。しかし、華中師範大学は、逆にこのことで賞賛を受けたのである。つまり、人々は、高すぎる就職率の数値を全面的に信じていた訳ではなく、むしろ自分たちの生活や仕事での実感に近い数字を信頼しているということが、この一件で分かった。

 
一部の大学が公表する就職率90%以上という数字は、必ずしも嘘や不正確なものという訳ではないが、人々の感覚とはあまり一致しないため、共感できる要素を見出すことが難しい。過去のデータや、卒業生がネット上で暴露した個々の「就職させられた」事例を通じて、人々は、一部の大学のデータには不備が存在し、卒業生を「紙上卒業」させている可能性もあるため、全面的に信用することは難しいと考えるようになった。

 
一部の大学で、完全に事実に即した数値を出す訳に行かないのは、様々な懸念が存在しているからである。特に大学にとっては、比較対象となる他大学の就職率がみな高く、自校の就職率が著しく低ければ、質の高い学生の獲得に影響が出る。各大学は学生の獲得にしのぎを削っており、そのプレッシャーは想像に難くない。多くの地方大学にとって、卒業生の就職率が高くなければ、地方政府のイメージまで悪くなることも多い。

 
就職率は「面子工程(訳注:実績作りが目的の意味のない公共工事、転じて無意味なプロジェクト全般を指す)」ではないのだから、大学は必ず事実通りの就職率を公表すべきである。就職率データは、教育主管部門が学科や専攻のリストを調整するための重要な根拠であり、教育資源を全体的に配置するための観測ポイントでもある。それだけではなく、大卒者の就職率データは、経済社会の発展を示す指標の一つであり、より高いレベルで経済・社会の意思決定を行うための根拠でもある。一般の人々にとって、就職率は保護者や生徒が学校や専攻を選ぶ際の基準となる。大学にとっても、大学内の資源配置や専攻・学部の調整などの重要な根拠となる。

 
もちろん、就職率が唯一の根拠ではない。例えば、大学の管理面の経験を踏まえて言うと、就職率が低いことはその専攻自体が良くないということを示しているのではない。その専攻は良いものであり、将来性も大きいが、主に教員の割当て、育成プログラムやカリキュラムの設定が関係して、業界の主流に受入れられていないため、就職率が高くないということがあり得る。あるいはまた、業界自体が厳しい局面を迎えていて、学生の就職率の低さが、業界の衰退傾向を表しているのではなく、一時的現象である可能性もある。

 
華中師範大学の就職率についてネットユーザーが賞賛したことは、一定の世論の動向を反映しているものだが、そもそもこの件自体がニュースになるべきではない。就職率というものは、高くても低くても現実を如実に反映したものであるべきだ。今この件がニュースになっているのは、長い間、就職率のデータが社会の実感とずれていたためであり、データがより真実に即したものかどうかが焦点になってしまっているのである。

 
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