【ニュース・中国】国と地方の共同建設による中西部の高等教育機関14校、発展が再加速

 
「学校の運営条件も運営のレベルも中間で、上と比べれば足りないが下と比べれば十分だ」。学校の発展について鄭州大学の劉炯天学長はこう述べた。公認「トップグループ」高等教育機関からみれば、中西部に位置する鄭州大学は明らかな差があるが、一般的な地方の高等教育機関からみれば鄭州大学はリードする存在だ。
 
長年、中の上に属していた鄭州大学だが、2017年になって国の世界一流大学建設の対象校に仲間入りし、また2018年には国と地方が共同で建設する高等教育機関に選ばれた。それはまるで特急列車に乗ったような感覚であり、「未来に対する自信がみなぎった」と劉学長は言う。
 
中西部の高等教育機関の発展を阻む様々な問題の解決も、「1校1施策」政策の具体的準備の中で実行された。「孔雀は南東に向かって飛んでいく」という詩句で喩えられている優秀な人材が沿岸部に流出する問題も、国と地方が共同で建設する高等教育機関に選定されてわずか1年後に解決された。鄭州大学が両院(中国科学院と中国工程院)の院士3人、国家傑出青年科学基金の獲得者1人、国家優秀青年科学基金の獲得者4人、長江学者奨励計画・長江学者奨励計画青年学者3人を誘致し育成したことはその代表事例である。
 
「以前なら考えられなかったこと」だと劉学長は言う。2018年2月24日、教育部は中西部高等教育の発展支援および向上のための座談会を開催し、直属高等教育機関のない中西部14省(区・兵団)に対し、国と地方の共同建設モデルを適用し、それぞれ1校の高等教育機関の発展を支援する国・地方共同建設プロジェクトを発足させた。鄭州大学の発展の加速は、「国と地方が共同で建設する高等教育機関」プロジェクトの発足1年あまりの縮図だ。
 
最大の変化は「同等の扱い」
 
教育部発展規画司の劉昌亜司長によると、国・地方共同建設モデルの初めの志は、「優れた高等教育資源の地域分布の不均衡および中西部高等教育の発展の不十分さという難題を打破する」ことだった。
 
劉学長の言うように、鄭州大学は中原に位置しており、河南省は1億800万人の人口を抱える人口大省であるにもかかわらず、985高等教育機関が一つもなかった。他に雲南大学や青海大学なども同様の「困難」を抱えていた。東南部の高等教育機関と比べると、これらの学校は経済基盤、体制・組織、人材流動などが欠けていた。
 
劉司長によれば、プロジェクト発足から1年あまり、教育部と地方政府、共同建設高等教育機関、提携高等教育機関の四者が手を組んだ共同建設機構がほぼ形成され、直属高等教育機関と共同建設高等教育機関が協同で発展する新たな仕組みがほぼ実現した。
 
プロジェクトは主として五つの面で展開している。

一つ目は枠組みの構築。共同建設プロジェクトの発足後、教育部は各省(区)政府および兵団と共同建設合意書を交わし、『同等の扱い』『包括的な支援』の方針を確立し、国・地方共同建設全体枠組みを構築した。
 
二つ目は産業への焦点。14校30学科に4大産業の優勢学科を編成し、地方の先進的な特色産業建設計画とマッチングさせ、共同建設高等教育機関の地方発展への奉仕に関する思想と行動面での自覚を強化した。
 
三つ目は学科の強化。共同建設高等教育機関の学科建設の照準を新『双一流』審査に合わせるという努力目標を明確にした。学科群の中で既に一流建設学科となっている学校は、建設の成果と地位をさらに固め深化する。基礎が良好で、近々ブレークスルーを実現する可能性のある学校は、一流学科の創設に努める。現時点で基礎が相対的に弱い学科も、一流レベルに近づくよう努力する。
 
四つ目はプラットフォームの構築。各共同建設高等教育機関を組織し、既存の学科基盤に立脚し、地域資源の優位性を発掘し、地方産業のニーズにマッチングさせた。全体的に見て、現在、各校が形成している優勢特色学科大型シリーズ研究施設建設計画は、理念が相対的に整然としており、内容が比較的明確で措置も基本的に実行可能である。
 
五つ目は架け橋の構築。教育部発展規画司では、各校の提携意向や学科特徴を分析・研究した上で、 37の直属高等教育機関と共同建設高等教育機関のカウンターパート提携を手配実行した。『多数が一つを助ける』『一つが多数を助ける』の枠組みが初歩的に形成され、シナジー効果が絶えず発揮され、効果が絶えず顕著に現れている」

劉学長が言うには、最も変化が大きいと感じるのは「同等の扱い」だ。直属の計画対象の高等教育機関と「同等の扱い」を受けることで、多くの枠組みが瞬時に順調になった。
 
「ボトルネック」の難題はこう解決する
 
教育部人事司の呂傑副司長は、この1年あまり重点的に攻略してきた「ボトルネック」の難題について解説してくれた。まず実態を明らかにし、メカニズムを健全化し、強力な指導グループを配置し、チーム全体の能力を確立した。「まず、直属高等教育機関と国・地方共同建設高等教育機関の幹部の相互出向と交流を推進し、多ルートの幹部交流枠組みの形成をさらに進めた。その一方で、ウイグル支援やチベット支援などの派遣支援任務と結びつけ、重点的に被援助地区の共同建設高等教育機関に幹部を派遣した」
 
また、この2年で15名の直属高等教育機関幹部が共同建設高等教育機関の指導グループに就任した。呂副司長によれば「共同建設高等教育機関を支援する形で、優れた党委員会書記・校長を配置する一方、優秀な幹部を送り、共同建設高等教育機関指導グループの補佐職に就けた。今年に入って、直属高等教育機関の2名の中堅幹部を共同建設高等教育機関の補佐職に推薦した。中央の海南自由貿易区建設支援計画と要求に従い、直属高等教育機関の校級指導幹部2名を選抜して、海南大学副学長に出向派遣し、海南大学建設を効果的に支援した」
 
その一方、長江学者・青年長江学者といった学術人材の選抜においても、中西部高等教育機関の就任経験を条件にすることを提案した。これらの政策は、人材不足の中西部高等教育機関にとって、実質的な効果があった。雲南省教育庁の趙徳栄副庁長は雲南大学の発展について、人事制度改革において「雲南大学への人材改革試験モデル区の設立を支援した。また、審査プロセスを簡素化し、人員配置の届出管理を実行した。審査結果の届出制を実施し、専門技術職の審査改革を推進した。雲南大学は近年、各種の人材を150名あまり誘致したが、うち院士が6人(フレキシブル)、『千人計画』が8人とハイレベル人材が短期間で倍増した」と言う。
 
また、学校調達の自主管理権限をさらに拡大し、自分たちで調達を計画実行し研究器具や設備の審査専門家を自分たちで選択できるようにしたうえで、サードパーティのオンライン取引プラットフォームを利用してネットオークションによる調達を行った。趙副庁長は「2年間で、各種重大プロジェクトの予算を9億元以上調達し、学校の生命科学センター・古生物研究センター・天文学研究センターなどの重要な研究基盤の建設を確保した」と言う。
 
「我々は研究の体制と枠組みの改革を深化し、雲南大学を省唯一の試点機関として科学技術の『放管服(行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化と権限委譲との両立、行政サービスの最適化)』を実施し、重点研究開発計画プロジェクトおよび応用基礎研究プロジェクト(青年向けを重点に)を自主選択し、雲南大学に十分な研究自主権を与えている。過去3年間、雲南大学の国家級研究プロジェクトの立ち上げ件数は増加し続けている」
 
中西部高等教育機関には優れた資源が依然不足している
 
成果は上げたが、一方で欠陥もある。欠陥は何か。劉学長が言うには、困難は主として三つの方面に集中している。

一つ目は優れた資源が依然相対的に不足しており、ハイレベルな指導者の誘致・育成能力が弱く、ハイエンド研究基盤や博士課程設置大学などの発展を支える優れた資源が極めて不足していること。
 
二つ目は牽引作用があまり顕著でなく、優勢な学科と関連学科が協同し特色学科群を創り出す連動枠組みもまだ十分健全化されておらず、学科群の優位性が形成されていないこと。
 
三つ目は社会貢献の能力向上が不十分で、地方の先進的な産業ニーズとのマッチングが緊密でなく、産官学の融合メカニズムもさらなる完全化が待たれることだ。

将来的に、支援はさらに拡大することが予想される。
 
劉学長はさらに「共同建設高等教育機関を、質の向上を核とする内包型発展の道を歩むよう導き、学科の総合力および地方経済・社会の発展への貢献能力を向上させていく」と言う。
 
「今後は発展改革委員会や財政部門などと積極的に連携し、中央からの資金援助をさらに獲得できるよう努めていく。各地方に対する支援措置が実施され効果が現れるよう促していく。カウンターパート提携プロジェクトを推進し、各校の実施プランおよび提携プロジェクトを実行し、早期に効果が得られるよう努める。同時に、優勢学科を建設し、社会への奉仕能力も向上させなければならない。地方に根ざし、地方に奉仕し、地方を建設することを方針とし、大々的に優勢学科と地方の先進的な特色産業プロジェクトとのマッチングを推進し、各共同建設高等教育機関がハイレベル研究施設を建設し、キーテクノロジーを獲得し、一流学科を創設し、リーディング特色産業の発展を牽引できるよう支援ならびに誘導し、優勢学科群の総合力と放射効果をさらに向上させ、学校の地方経済・社会の発展に対する奉仕能力を強化していく」
 
だが、最終的に必要なのは、健全なプロジェクトの枠組みだ。ひょっとすると、これこそが答えなのかもしれない。
 
劉学長は最後に「健全な特別経費管理制度を確立するには、国・地方共同建設特別経費に対する監督検査と成果評定を強化し、評定結果に基づき常に支援の度合いを調整していく必要がある。健全で統一性があり調和がとれていて全体が連動する国・地方定期会合枠組みを確立し、共同建設プロジェクトにおける重大問題を速やかに解決していくことが重要だ」と述べた。
 
2019年11月24日
 
中华人民共和国教育部:西北有高楼,孔雀不再东南飞[来源:光明日报]
 

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価
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