【ニュース・フランス】COVID-19感染症を抑えるために選定された20のプロジェクト

 
 新型コロナウイルスSars-CoV2が蔓延している状況だが、全国生命科学・医療研究連盟(Alliance pour les sciences de la vie et de la santé:Aviesan)は国立保健医学研究所(Institut national de la santé et de la recherche médicale:Inserm)と連携しながら、REACTing組合との活動を通して、新型コロナウイルスついての研究推進を実施する。

 
 連帯・健康省、高等教育・研究・イノベーション省の支援を受け、科学会議において20のプロジェクトが採択された。これは、感染症の治療や予防に関する研究のモデル化と同様に、様々なテーマに適用される。

 
 新型コロナウイルスによる感染症のより早い抑止、そして感染患者へのより良い治療のために質の高い研究を行うことは、2019年末に発症者が確認されて以来、AviesanやREACTingのネットワーク下にあるフランス科学コミュニティーの目標であった。

 
 Aviesanは、設立メンバーである9つの重要な科学組織(原子力・代替エネルギー庁(Commissariat à l’énergie atomique et aux énergies alternatives:CEA)、国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique:CNRS)、国立農業・食料・環境研究所(Institut national de recherche pour l’agriculture, l’alimentation et l’environnement:INRAE)、国立情報学自動制御研究所(Institut national de recherche en informatique et en automatique:Inria)、国立保健医学研究所(Institut national de la santé et de la recherche médicale:Inserm)、パスツール研究所、国立開発研究所(Institut de recherche pour le développement:IRD)、大学長会議(Conference des presidents d’universite:CPU)、地域・大学病院センター局長会議(Conférence des directeurs généraux de centres hospitaliers régionaux et universitaires:CHRU))によって構成されている。REACTing組合は、Insermによって運営されている。

 
 フランス国内の研究チーム全体に向けた公募への立候補の中から、科学評議会であるREACTing(これは真に研究の推進となる組合である)は様々な科学分野の20プロジェクトを選定した。最大限効果的に知見を広げるため、この新型感染症の抑止に繋がるようプロジェクトは選定された。このプロジェクトは、次の4つの科学テーマについて研究するものである。

  1. 診断、臨床、治療を対象とする研究プロジェクト 
     治療研究について採択されたプロジェクトは、既に市場に出ており他の病気に対して使用されている薬の研究からモノクローナル抗体に関する研究にまで及ぶ。そして、Insermで進んでいる臨床試験では、4つの治療(レムデシビル、ロピナビル、ロピナビル+インターフェロンと非特異的対症療法(標準治療)との組み合わせ、非特異的対症療法のみ)の評価、比較が行われている。3200人がこの臨床試験に参加する予定であり、そのうち800人はフランスにおいて行われる。この臨床試験は所謂「進化型」であり、ある分子の効果が見込まれない場合は中止される。逆にある治療法候補に効果が現れそうな場合は、臨床試験が行われる。選定されたあるプロジェクトでは、換気と防護マスクに関する実効性と効果が分析される。
  2. 感染症の研究プロジェクト 
     感染症学と感染症のモデル化に関して採択された3つのプロジェクトは、ウイルスの地理的な拡散を予測するためのプロジェクトである。これらのプロジェクトの一つはInsermが進め、フランス国内の感染患者全体の観察を実施する。これは将来、他の研究のための科学的な土台になると考えられている。
  3. 基礎研究プロジェクト 
     そして3つ目の基礎研究は、特に実験環境での再現性をより深く理解するために選定されたものである。ある研究グループは、メコンデルタ地方でのウイルスの伝染のリスクについて評価することによって、ウイルスを保有すると疑われる動物の調査を行う予定である。
  4. 人間社会科学の研究プロジェクト 
     人間社会科学では、感染症について他にはない焦点の当て方をすることが出来る。社会や人々の感染症への対応の仕方の理解につながるものである。また、その状況を推定することもできる。このプロジェクトの研究者は、特に武漢からの帰還者の隔離、科学データの利用、衛生危機に対する効果、ある病気が発生した時のコミュニケーションの仕方を調査する。これにより、より良い公衆政策をもたらすことが期待される。

 
 RECOVER(ヨーロッパ新型コロナウイルス緊急迅速対策)プロジェクトの下で、フランスの研究は、ヨーロッパレベルで進められている。この研究プロジェクトには欧州委員会が出資しており、10の国際協力機関が参加している。柱となる感染症学、臨床学、社会科学のプロジェクトが実行される。

 
 フランスは、Fight-nCoV(抗ウイルス広域スペクトルと新型コロナウイルスとの戦い:動物ウイルスチャレンジモデルの設立)、I-MOVE-COVID-19(研究、予防、新型コロナウイルス感染症のコントロールのためのヨーロッパ学際ネットワーク)、CoNVat(新型コロナウイルスとの戦い:先端ナノバイオセンサーのプラットフォーム:グローバル診断・監視概念実証)に加盟し、研究推進を行う。

 
 これらの挑戦的で質の高いプロジェクトを推進し、特定優先事項に対応することによって、感染症に立ち向かうことが出来る。REACTing組合は新型コロナウイルスの拡散と、感染症が引き起こす社会と健康の問題に関する課題に応えるため、活動を行う。

 
3月12日
 


INRAe: COVID-19 : 20 projets de recherche sélectionnés pour lutter contre l’épidémie

地域 西欧
フランス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究