【ニュース・フランス】研究の位置情報化ツール

 
 研究者は、世界中の共著科学論文の分析と視覚化のために、いままでにない新たなツールを開発している。このツールによって研究者は、自分の研究の位置するところをより正確につかむことが出来るようになる。

 
 また、新型コロナウイルス感染症のような、喫緊のテーマについての研究者の動向をすぐに知ることができる。新型コロナウイルスのような新しい課題について、科学コミュニティーの動向を追うことによって、国家間や国内研究機関間での協力体制の重要性を理解することが出来る。

 
 都市地理学を専門とするMarion Maisonobe氏が、その課題に取り組んでいる。その課題解決のためにMarion Maisonobe氏は、情報と科学計量学が専門のGuillaume Cabanac氏、地理学と地理情報システムのLaurent Jégou氏と共同で、オンラインアプリであるNETSCITYを始動した。

 
 このアプリによって、世界の科学研究活動や、そのネットワークを様々なレベルで可視化、分析することが出来るようになる。国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique:CNRS)で活動するこれらの研究者は、「従前の文献調査ツールにおけるベースの細かさは国家である。

 
 我々のグループは、文献に表示されている著者の住所を知ることができるレベルにまできている。これには相当量の「ジオコーディング:地理座標(経度・緯度)の付加)」作業が必要であった」と説明している。

 
 NETSCITYによって、全ての文献を表・グラフ・図によって表示することができ、ある分野について、共同研究者と科学論文に関して何をどの様に(文献数、場所、年)研究しているかということを知ることができる。

 
 Marion Maisonobe氏は、「例えば2020年3月23日に新型コロナウイルスについて199の文献が“Web of Science”で検索されたが、それらの共同執筆者の都市間ネットワークについてNETSCITYを利用して可視化した。「199の文献のうち121は都市部の研究者間において研究されており、これらのリンクは137の地域を繋げるネットワークを形成していることが分かる。

 
 これを利用することによって、現代の研究が協調的かつグローバル化した状況や特定の環境にかかわらず、異なる都市、国、大陸にいる研究者間で維持されているコミュニケーションを明らかにします。」と述べている。

 
 このツールによって“Web of Science”のデータ、即ち世界に存在する20億本の文献のデータ、競合するデータベースであるオランダのElsevier社が管理するScopusや提携するユーザーの検索データベースを分析することが出来るようになる。

 
 「これらは、我々が活動当初から蓄積したデータベースであるが、現在他のデータベースにおいても良い結果が得られるように研究している。しかし、ジオコーディングの結果の確認と修正の作業には時間がかかる。」とMarion Maisonobe氏は述べている。

 
 「我々の研究が他の文献調査のデータ処理ツールと比べてより価値のある点は、ジオコーディングを行えるということではなく、都市部区域のグループ分けを世界規模で明確に行えるという今までにない機能である。例えば、パリと上海を比べることに余り意味はない。

 
 上海はパリ周辺の面積の半分で、逆に人口は二倍だからである。パリとその郊外についてのデータを分析することのほうが意味がある。科学研究の中心であるパリの科学的潜在性において、比較しやすいからである。

 
 「それは、このプロジェクトが地理学から始まっていることにある。これまでに地理学は、科学的な活動によるデータを殆ど利用してこなかった。しかし、科学としての地理学は、その根本に新たな興味深い課題をもたらす。そして、いくつかの世界に派生していく可能性のあるものを明らかにし、それを科学的研究の領域まで育てていく。」とも述べている。

 
3月23日
 


CNRS: Un outil pour cartographier la recherche

地域 西欧
フランス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究