【ニュース・ドイツ・日本】日独共同学長シンポジウム:大学と社会との協力および交流は不可欠であるが、明確なルールが必要

 
未来志向の大学の発展のために大学と社会との協力および交流は不可欠であるが、大学は基本ミッションに忠実でなければならず、かつルールは明確でなければならない。2018年4月26日~27日に東京で開催された日独共同学長シンポジウムでは、このように結論付けられた。本シンポジウムは、国公私立大学団体国際交流担当委員長協議会(Japan Committee of Universities for International Exchange:JACUIE)主催、ドイツ大学長会議(Hochschulrektorenkonferenz:HRK)およびベルリン日独センター(Japanisch-Deutschem Zentrum Berlin:JDZB)との共催により行われた。
 
このシンポジウムで日独両国からの専門家160名(学長65名を含む)は、日独両国の大学が研究や教育といった本来の目的をなおざりにすることなく、効果的かつ互恵的に社会やビジネス界、産業界と協力していく方法について、議論を交わした。長期的な協力のための成功の鍵は何か? 抑制と均衡のどちらが必要なのか? 対等な立場で協力および交流が行われる中で、どのように利益のバランスをとればよいのか?
 
2016年にベルリンで開催された前回のシンポジウムでは、大学と社会との効果的な交流に向けて、以下の3つの指針が採択された。

  • 基礎を健全な教育および訓練に置く総合的かつ学問的に健全な教育および訓練は、イノベーションや社会の進歩の基礎となる。専門知識や専門能力の伝達だけでなく、倫理原則に基づいて行動する成熟した人材の育成もこれに含まれる。
  • 分野横断的、セクター横断的な協力の促進
    専門分野の多様性は現在の水準で維持されなければならない。社会において重要な役割を果たす専門分野には、工学や自然科学だけでなく、社会科学や人文科学も含まれる。 同時に、分野横断的およびセクター横断的な協力を、あらゆるレベルで永続的に推進しなければならない。
  • 教育および研究の本質と必要性に適した資金計画および業績評価基準の創設

 
資金プログラムおよび業績評価の基準は、研究と高等教育の特徴に適したものでなければならない。学術教育および研究の本質と必要性に適し、あらゆる利害関係者に受け入れられるような成功業績の定義を策定することが重要である。そのため、業績評価には、量的側面だけでなく質的側面も適切に組み込む必要がある。加えて、オープンでダイナミック、かつ分野横断的・セクター横断的な研究パートナーシップを奨励するような、適切な資金プログラムが創設される必要がある。
 
これらの3つの指針に基づいて、大学の代表者たちは、日独両国の大学の現状を考慮しつつ、両国のベスト・プラクティスを紹介し合い、この方針を実行に移すためにはどのような行動が必要かを議論した。
 

JACUIEの永田恭介座長(筑波大学学長)は、次のように述べた。
「イノベーションとグローバリゼーションによりもたらされた数々の課題に直面する中で、持続的かつ包括的な未来の社会に貢献し、チャレンジ精神、幅広い視野、高度な知識およびスキルを兼ね備えた人材を育成することが、大学に期待されている。さらに、知識社会の到来に伴い、大学は新しい知識やイノベーションを生み出すとともに、現在および将来の課題を解決することで、国家と地域の経済社会発展に貢献することが求められている。これらの期待に応えるために、大学は幅広い基礎研究を推進するという中核的役割を果たしながら、社会の様々なセクターと連携し、学生、教員、カリキュラム、研究の多様性を高めるべきである。また、このような新たな課題に対処するための効果的かつ柔軟なガバナンス体制を構築する必要がある。このためには、大学が政府による安定した予算を保証されることが不可欠である。さらに、イノベーションを推進するためには、産業界や研究機関と協力して、博士号取得候補者を育成することが重要である。」

 

HRKのヒップラー(Horst Hippler)会長は、次のように述べた。
「大学は、社会との絶え間ない対話の中で、研究および教育における重要な役割を明確にし、発展させている。大学は、社会の科学的、経済的、文化的発展に有益なサービスを提供している。大学と社会との協力および交流が適切に行われ、かつ適用されたルールが明らかで透明性のあるとき、あらゆる関係者(研究者、学生、大学全体、社会、産業界など)が恩恵を受ける。特に、博士号取得候補者や若手研究者の、大学、行政、経済界、産業界の間での双方向の流動的なモビリティは、Win-Winの関係を作り出し、産業イノベーションおよび社会全体の有益な発展にとって重要である。ドイツ政府が、共通の未来への投資が重要であることをはっきりと認識していること、この流動性を維持するために必要な資金を大学に提供していることを、私たちは喜ばしく思う。」

 

ベルリン日独センターのフリーデリケ・ボッセ(Friederike Bosse)事務総長は、次のように補足した。
「大学は、その立地する地域社会の良好な状態および福祉において、非常に重要なインスピレーションの源、かつ原動力である。大学によるビジネス界や市民社会とのネットワーキングや交流は、新たなビジネスやイニシアティブを生み出すための支援と同様に、地域の繁栄に貢献する。教育研究の役割や、マネジメント・スキルおよび起業的精神獲得のための支援を通じて、大学は地域だけでなく社会全体に貢献している。過去3回のシンポジウムを開催してきたが、本シンポジウムを開催できたこと、そして過去12年間の交流を深め、大学と高等教育の役割について日独間の対話を強化できたことを、とても嬉しく思う。」

 
2018年5月14日
 
HRK:Hochschulleitungen aus Japan und Deutschland: Austausch zwischen Hochschulen und Gesellschaft braucht klare Leitlinien
 

地域 中東欧・ロシア、アジア・オセアニア
ドイツ、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育、研究
社会との交流、産学官連携 地域連携
レポート 海外センター