【ニュース・ドイツ】国際的な学習カリキュラムにはカリスマ性がある

 

ジョイント・ディグリーかダブル・ディグリーか:提携大学とのダブル・ディグリーが可能な学位コースを備えている大学は、ただ国際的であるだけではない。コース履修者は研究と教育の集中的な交流の恩恵を受けるとともに、修了生はすばらしい雇用機会の見通しを得ている。ミュンスター応用科学大学、ブランデンブルク工科大学コットブス・センクテンベルク、フィリップス大学マールブルクの成功事例を見てみよう。
 
高等教育機関の使命は、国境を越えて知識を得る基盤を提供し、知識を深め、伝達することである。教師と学生は国際的なコミュニケーションに参画できなくてはいけない。これにはダブル・ディグリーが組み込まれた国際的な学位コースが必須である。それらは、ドイツの大学の国際化と学生の流動性に的を絞っている。それらの学位コースのうち108のプロジェクトは、目下ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst:DAAD)のファンディング・リストに載っている。20年以上に亘り、DAADは「ダブル・ディグリーを有する統合国際学位コース」というプログラムで、そのような学位コースの設立を支援してきた。連携の形式に応じて、修了生は複数の大学が単一の学位を承認するジョイント・ディグリーか、二つの提携大学でそれぞれ学位が認定されるダブル・ディグリーを取得する。
 

ラテン・アメリカの11の提携大学
大学がパートナーを自由に選べることは、ミュンスター応用科学大学のドイツ-ラテン・アメリカ経営学学位コース“CALA”に例示されている。これはCarrera Alemana-Latinoamericana de Administraciónの略称である。ミュンスター応用科学大学は、一つの提携先だけでなく、大陸全体と協力関係にある。この、いわゆるマルチ・パートナーシップにおいて、学生はアルゼンチン、ブラジル、チリ、コスタリカ、コロンビア、メキシコ、ペルーの大学で1年半を過ごす。学業を無事修了すると、彼らはミュンスター応用科学大学とラテン・アメリカの提携大学のそれぞれの学位を取得する。
 

CALAがCALIを導き出す
このパートナーシップは、2003年に退職した経営経済学者のKlaus Rotherのラテン・アメリカ人の知人との付き合いから始まった。彼と共に、2001年に設立されたミュンスター応用科学大学経済学部国際研究室のMartina Ratermann室長は、統合国際研究プログラムの組織の設立を支援した。同時に、彼女は卒業生ネットワークを構築した。このネットワークには、CALAの卒業生だけではなく、コースをサポートし、実践的なセミナーの仲介者ともなり得る企業も含まれている。「このプログラムは拡がっています。」と、ミュンスター応用科学大学の教育・国際問題担当副学長のFrank Dellmann教授は述べている。数か月前、ミュンスター応用科学大学は、CALAの経験を工学科学分野に移行するために、「CALI」という名称で2番目のプログラムを申請したところだ。
 

大学は国際的なプロファイルを明確に
ある発展をTabea Kaiser氏が確認している。彼女はDAADで教育部門の国際化部門責任者を務めている。「ダブル・ディグリープロジェクトは、大学が国際的な地位を確立するための重要な構成要素である。それに、各種学位プログラムはそれぞれの大学の国際的な要素を更に発展させるため、大学が行う努力は非常に価値がある。」
 

優れたコミットメントが成功事例を保証
いわゆるダブル・ディグリー、すなわちそれぞれの提携大学から授与される学位は、「一貫した国際的流動性の理想的な方法である」と、Kaiser氏は言う。なぜなら、それは留学課程を簡素化し、学位プログラムを際立たせる有用な例示となる。海外滞在は概念的に大学での勉学に組み込まれ、独立して運営されておらず、学業に関連付けられる必要がある。例えば、異文化間で発揮される能力に加えて、学生がさらなる専門的知識を獲得し、様々な労働市場にアクセスできるようになるため、国際性は強みを持つ。また、教師は人脈を広げ、共同学習プログラムを活用して教育と研究の更なる協力を図る。
 
Kaiser氏は、参加大学とその代表者に称賛の言葉を送る。「大学の体制の調整が難しい場合など、どれだけの個人のコミットメントが背景にあり、いかに解決策が見いだされるか、といったことは称賛に値する。」さらに、個別指導と語学コースにより、学生は海外で過ごすのが簡単になる。これはすべて、「ダブル・ディグリープログラムが成功事例であるということを保証している。
 

コットブスからメルボルンへ
ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルク(BTUコットブス-ゼンフテンベルク)は、メルボルンのオーストラリア・ディーキン大学と協力して、ユネスコ世界遺産条約に関するダブル・ディグリー修士プログラムを設立した。学生は4学期で、文化、建築、都市計画、環境、ビジネス、観光の観点から、世界遺産のコンセプトの定着と実装に関する知識を習得する。
 
このプログラムには、客員講師の講義、学習旅行、ドイツ国内及び海外の提携大学とのプログラムが含まれている。コットブスでの勉学は人類の遺産を扱っており、世界遺産とグローバリゼーションの変容プロセスとの関係性を調査している。学位論文は、プログラムの主要分野の一つに焦点をあてる必要がある。コットブスは学位プログラムのドイツでの拠点として好まれている。ベルリンとその周辺城郭、オーバーラウジッツのバートムスカウにあるプリンスプッケラー公園は南東に40キロメートル、ドイツとポーランドの国境の両側に広がる。または、ユネスコ生物圏保護区であるコットブス、ドレスデン、ゲルリッツにまたがるオーバーラウジッツの池の風景も素晴らしい。
 

学位コースラッシュ
ダブル・ディグリープログラムは、既存の世界遺産研究の修士プログラムの優れた別のバージョンとして設計され、2013年以来DAADによって継続的に資金措置されている。
 
Marie-Theres Albert名誉教授とともに「世界遺産研究」プログラムを開始したMichael Schmidt教授は、1999年に、パリのユネスコ世界遺産事務局でプログラムの優位性を高めるための戦略的パートナーシップを見出した。「世界遺産条約をカリキュラム向けに翻訳した。」とSchmidt教授は言う。
 
ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルクは、とても人気の高い学位プログラムにより際立っている。毎年、世界中から100人以上の学生が、通常の学位コース「世界遺産学習」の40人の枠に応募している。ダブル・ディグリープログラムには最も優秀な5名の学生が選ばれる。
 
「修士課程の国籍の多様さは、ドイツ国内でもトップである。」とSchmidt教授は言い、さらに次のように付け加える。「時折、何がより魅力的なのかわからない時がある。学位コースに参加している国々の教育や多様性、そしてその可能性が世界遺産の言説を拡大する。
 
ここでの利点の一つは、DAADの資金措置プログラムである。これは、成功したダブル・ディグリー及びジョイント・ディグリーを流動的な資金措置で長期的に財政的に支援できる。プログラムの卒業生は、二つの学位を取得する。ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルクの世界遺産研究の修士号と、ディーキン大学の文化遺産修士号である。世界遺産の専門家として、彼らは学歴に加えて、ユネスコ、各国の省庁、世界遺産の管理、博物館または民間の文化機関で働いている。
 

同窓生が更なる専門家の議論を開始
さらに、ブランデンブルク工科大学コットブス-ゼンフテンベルクは卒業生との協力関係を培っている。DAADの支援により、卒業生はコットブスに招待され、そのコミットメントと経験について報告する。「そうすることで、学科は絶えず新しい局面を得ている。」とSchmidt教授は述べる。例えば、同窓生が文化財の破壊、強盗行為、または返還に関して報告し、それによりさらなる議論が行われる場合など。
 

マールブルクからケントへ
フィリップス大学マールブルクでは、ジョイント・ディグリー、つまり両方の提携大学が承認する単一の学位を取得できるヨーロッパ圏の修士課程を提供している。エラスムスのパートナーシップに基づいたカンタベリーのケント大学との良好な付き合いのおかげで、両大学は2011年に開始するジョイント・コース「平和と紛争研究」を開発した。モジュールは、対立理論、調停、暴力の社会的再検討などのトピックをカバーしている。このプログラムには少なくとも10週間のインターンシップが含まれている。
 

異なる大学システム、補完的な視点
「かなり当初から、ジョイント・ディグリーの構造の点から考えていた。」と、学位プログラムの責任者であるマールブルク紛争研究センターの副マネージングディレクターであるThorsten Bonacker教授は言う。「学生がある場所で勉学を開始し、別の場所で勉学を修了できるようにする必要がある。」
 
マールブルク側では、補完的な教育及び研究プロジェクトの機会もある。ケント側で国際政治と安全保障に焦点をあてている一方で、マールブルク側では平和心理学と紛争の変容の側面に焦点をあてている。「このように、学生は技術的に補完的な視点で、異なる二つの大学システムに精通するようになる。」と、Bonacker教授は言う。
 

プログラムが意欲の高い学生を惹きつける
両方のシステムをカバーするジョイント・スタディ・プログラムを設立するのは簡単なことではなかった。「特に、行政規制が相互に矛盾していたから」と、Bonacker教授は述べる。とりわけ、入学規則と試験規則の構造が互いに大きく異なっている。例の一つとして、カンタベリーでは、学生は年間4,600ユーロに相当する料金を支払っているが、ドイツではそうではない。幸いなことに、英国の修士課程のプログラムは1年続くため、合計4学期の学位コースを容易に設計できた。
 
様々な提携先の管理体制を互換性のあるものにするのは当初困難だったが、プログラムは今や非常に意欲的な学生を惹きつけている。それらの約半分はドイツ出身であり、他のほとんどはヨーロッパから来ているが、アメリカ、インド、香港からも学生が来ている。彼らはマールブルク大学で歓迎されており、プログラムからも利益を得ている。学位コースは、ドイツ大学長会議による「高等教育の国際化」監査で重要な役割を果たした。Bonacker氏は次のように付け加えている。「これは国際機関、財団、省庁、連邦議会、亡命者との協力などで、最高のキャリアの見通しを提供する。」
 
2019年10月22日
 
DAAD:Internationale Studiengänge haben Strahlkraft
 

地域 中東欧・ロシア
ドイツ
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
国際交流 国際化、学生交流
レポート 海外センター