【ニュース・タイ】ASEANの完璧なEV拠点をつくる(1)

 

タイ投資委員会の優遇措置がタイのEVビジョンを後押しする

 
想像してみてください・・・

 
 排気ガスの煙やエンジンの騒音なく、バッテリーで動くバイクや自動車、バスが行き交う、都市部の繁華街を。

 
 大気中に高温の黒煙を吐き出し、水中にオイルを放出することなく水路を走行し、静かに埠頭に停泊している電子フェリーを。

 
 健康的な空気ときれいな水のある、より住みやすい都市を。想像してみてください。ASEANの完璧なEV拠点を。

 
タイは、グローバルな電気交通革命において主導的な役割を果たし、温室効果ガス削減のための国際的なコミットメントを果たすことを約束している。
実際、タイでは電気自動車(EV)の普及が急速に進み、国内外のメーカーから発売されている複数のモデルのEVは、環境に優しく、価格も手頃で、
長期的な使用に対する信頼性も高いことから、タイの自動車ユーザーの間で大きな人気を集めている。

 
タイでは既にハイブリッド車(HEV)が人気を博しているが、今後数年間で、プラグインハイブリッド車(PHEV)やバッテリー電気自動車(BEV)
といった、より強力なバッテリーを 搭載した車両が増えていくことが予想される。これらEVの販売台数の増加に伴い、規模の経済により価格も
低下しており、従来の内燃機関を搭載した自動車に代わる魅力的な選択肢となっている。この傾向は、活発な消費者市場に加え、EVの普及と信頼性の向上、
充電施設ネットワークの拡大、EVを支える産業の発展という国家的な具体的枠組みを反映
している。

 
デジタル技術を活用して機能性を向上させるEVは、次世代交通の実現に向けた重要な第一歩であると考えられており、タイ政府はEV産業への投資を積極的に
誘致
している。

 
EVエコシステムの推進
 

タイ政府が設置した国家電気自動車政策委員会は最近、5年、10年、15年の各期間におけるEV開発の枠組みを示すマスタープランを発表した。
このマスタープランは、タイで確立された 自動車サプライチェーンをバッテリー電気自動車の製造に向けて変革し、モダンモビリティのため
の技術力を構築することを目的としている。

 
この計画の主な目的は、2035年までに、ゼロエミッション車、次世代自動車技術、次世代ビジネスモデルの革新という3つの分野で、タイを
「ASEANのセンター・オブ・エクセレンス」として確立
することにある。

 
この計画の個々の目標は、電気自動車の普及、充電設備、産業 能力の向上、電気自動車導入のための優遇措置、次世代交通の認知度などに関する
ものである。タイ政府は、自動車分野における熟練した労働力やエコシステムの世界的な競争力を活用し、世界で最も急速に成長している経済圏の
一つである東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、タイが最大のEV投資拠点になることを想定している。

 
2,000社以上が進出しているタイの大規模な自動車サプライチェーンでは、世界の自動車メーカー30社がタイをASEANにおける主要な生産拠点として
活用している。40年間に渡り自動車 産業の技術的ノウハウ、労働力、部品生産、支援施設などを整備してきたおかげで、タイは2020年には総生産台数220万台
で世界第11位の自動車生産拠点
としての地位を確立した。

 
また、化石燃料を使った内燃機関の製造とは異なる組立方法が必要なEV技術の進歩は、現地企業にとってEV市場への参入という大きなチャンスを
もたらしている。世界的なEVの進化に伴い、タイのEV市場では、乗用・商用のEV、電気バス、電動バイク、電気三輪車、電気ボートの生産から、
内燃機関からEVへの転換の一環として、EV用バッテリープラント、充電ステーション、家庭用充電システムサービスの導入まで、様々な分野で国内外
の企業家が事業を展開している。
 

グローバルな「30@30」キャンペーンへの参加

 
タイ政府は、各国が温室効果ガスの一定量削減を目標とする「30@30」に合わせ、2030年までにタイ国内で販売される自動車の3分の1(約75万台)
をPHEVやBEVを中心とした電気自動車にすることを目標としている。この目標を達成すると、10年後にはEVの走行台数が120万台に達する。タイでは
昨年末時点で約20万台のEVが走行していたことを考えると、政府は今後5年間でEVへの投資と普及を加速させ、国内のEVエコシステムを強化して
いくことになる。

 
こうした目標に向け、タイでは今後10年間で公共部門や公共バスにおけるEVへの完全移行が期待される。さらに2035年までには、民間企業に
おいても、長距離移動にはBEVやPHEV、都市部では高出力の2輪EV、物資の輸送には3輪・4輪EVなど、EVが主流になることを想定している。

 
タイ政府は内燃機関自動車の段階的な廃止を計画しており、公共部門がBEVの導入をリードし、2025年までに公共部門が新たに調達する自動車の
すべてをBEVとし、同年までに民間部門で 販売される自動車の15%をBEVとすることを目標としている。また、2025年までに半径50km以内に
1万か所、2035年までに8万か所の充電ステーションを全国に設置することで、国内のEV利用の利便性を高めていく予定である。タイでは現在、
国営企業と民間企業の協力により、合計650か所のEV充電ステーションと約2,000台の充電器が設置されており、そのうち700台は急速充電設備
となっている。

 
タイのEV開発計画では、タイ投資委員会(BOI)が多国籍企業や地元企業に対する投資促進優遇措置の範囲を拡大し、技術、設計・生産、市場
サービス、革新性、適応性など幅広い分野での産業能力向上を支援することが求められている。技術とイノベーションの開発を促進する政策に
ついては、バッテリー、ドライブトレイン、コントローラーシステムなどのハイテク 部品や、EVのプロトタイプを対象としている。

 
また、競争力のあるデジタル・エネルギーインフラは、IoT、クラウド、AIなどの技術が機能性を推進する上で重要な役割を果たすASEANにおいて、
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)技術を中心とした次世代交通のハブとしてのタイの地位を確固たる ものにするだろう。
国のブロードバンドインターネット設備と効率的な通信システムへの継続的な投資のおかげで、タイは2020年12月にスピードテスト・グローバル・
インデックスに基づく世界最速のインターネット速度を記録した。

 
タイの現在の発電能力の予備率は50%近くに達し、世界平均の15%~20%を上回っており、EV開発への準備が整っていることを示している。一方で、
タイは、より効率的な方法で電力を生産・分配し、国内でのEVの開発をサポートする「スマートグリッド」システムの開発にも取り組んでいる。
 


バンコクポスト: CREATING ASEAN’S FULLY CHARGED EV HUB


地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 政府レベルでの取組
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