【ニュース・タイ】学問の自由を妨げる独裁政治(1)

  
学問の自由は、表現の自由の中でも、報道の自由やインターネットユーザーの自由に比べ、あまり議論されていない分野の一つである。
しかし最近になって、アジア全域で議論されるようになってきた。この地域では、独裁政治が強化されるにつれて、学問の自由も悪化している。

 
では、アジアではどのような現象が起きているのだろうか。

 
タイをはじめとする東南アジアでは、社会の超保守的な要素が学問の自由を脅かしている。王党派をはじめとする保守的なグループが自警団のように
行動し、反王政的と思われる意見を述べる一部の教員や学生を攻撃している。その結果、学術的な著作や活動が監視され、これらのグループが大学や
高等教育機関に働きかけ、学生や職員を懲戒処分にしたり、退学させたりしている。

 
この点に関しては、タイだけではなく、ミャンマーの高等教育もここ数十年、同様の保守的な圧力にさらされてきた。インドネシアでは、主に政府官僚
からの攻撃を受けている。この5年間で、学問の自由への理解に欠ける政府官僚が、学者やキャンパスを攻撃するケースが増え、こうした状況に
対処すべく、インドネシアの学者らは、相互支援と安全のため、団体や協会で団結している。

 
政府の圧力はフィリピンでも見られる。2021年1月、国防省は、フィリピン大学が共産主義者である新人民軍(NPA)の勧誘の場になっている
として、フィリピン大学(UP)との間で10年間に渡り交わされてきた治安部隊の構内への立ち入りを禁止する協定を突然撤回した。この動きは、
ドゥテルテ大統領が2020年11月に、NPA との関わりが疑われる大学への資金援助を打ち切ると脅した後のことである。

 
南アジアでは、多くの高等教育機関で教員や学生に対しこうした攻撃が行われている。バングラデシュ、インド、パキスタンでは、進歩的な学者
たちがその活動のために時には宗教団体の支援を受けて、攻撃された例が無数にある。

 
例えば、2021年2月には、学者であり反体制派の作家でもある Mushtaq Ahmed 氏が、在監中に亡くなった。Mushtaq 氏は2020年、新型コロナ
ウイルス感染症の公衆衛生上の惨事に対する政府の管理ミスを批判するコメントをソーシャルメディアで発信したことにより、強権的なデジタル
セキュリティ法に基づき逮捕されていた。
 


地域 アジア・オセアニア
タイ、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
レポート 海外センター