【ニュース・タイ】学問の自由を妨げる独裁政治(2)

 
東アジアでは、台湾のように学問の自由が認められている国でさえ、高等教育の商業化が進んでいるという新たな課題がある。これは、世界の大学ランキングで上位に入ることを目指している台湾政府が、大学に対し、一流雑誌に掲載される研究を優先して支援するよう促していることに起因している。
つまり、研究者は、自分がやりたい研究の種類や発表できる場所の選択肢が少なくなっているのである。

 
香港の国家安全法は、学問の自由に対する新たな挑戦である。1997年に中国に返還されて以降、香港の学問の自由は減少している。大学が反論の精神を
維持しながらこの法律に対処できるかどうかは不明である。

 
可能性としては、職員や学生が法律の禁止事項をうまく利用したり、大学、学生団体、法執行機関の間で対話を試みたりすることが考えられる。
しかし、香港で 自己検閲よりも学問の自由が優先されると考えるのは、あまりに楽観的である。

 
グローバル公共政策研究所、国境なき記者団、フリーダムハウスがそれぞれまとめた学問の自由度、報道自由指数、インターネット上の自由度などの
世界的な指標を見てみると、明らかな相関関係が見られる。いずれかの指標で低いスコアを記録した国は、全体の指標でも低いスコアを記録しているのだ。

 
これは、世界中の学問の自由の低下が、表現の自由などの基本的な自由の低下と並行して起こっているためである。権利はその普遍性と相互依存性によって定義されることが多いため、ある権利が侵害されると他の権利にも影響が及ぶことになる。言い換えれば、学問の自由への攻撃は、世界的に広く行われて
いる政治的抑圧の反映
にほかならないのである。

 
しなやかな強さを持ち、変化を促すためには、学問の自由、報道の自由、インターネット上の自由を併せて考える必要がある。なぜなら、これらの権利
はまとめて表現の自由を構成し、民主主義の発展に貢献する権利群を形成
しているからである。

 
そうでなければ、教員や学生が民主主義への移行の原動力とみなされなくなり、大学やその他高等教育機関で多元的な民主主義が育たなくなって
しまうだろう。
 


地域 アジア・オセアニア
タイ、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
レポート 海外センター