2019年1月15日、英国の慈善団体でシンクタンクであるIntergenerational Foundation(IF)は、英国の大学学費制度に関する報告書を発表した。プレスリリースでは、報告書の内容について以下のような説明がされている。
IFが得た2016/2017学事年度の最新のデータによると、英国に居住する百万人以上のフルタイム・パートタイム学生のうち最も裕福な10%は、学費を前払いすることによって学費システムから逃れており(注:後述のように、前払いをすることにより政府の学生ローンを利用せず、そのため利子を払わずに済ませられているということ)、このことは現在のシステムが進歩的だという政府の度重なる主張を掘り崩すものである。
学費の前払いは、これら110,000人の学生が、6.3%の金利を課せられる彼らの同級生とは異なり、在学中の6,000ポンドの利子を回避できるということを意味する。この金利は政府借入金の金利である1.5%の4倍以上にもなる。また、これらの(裕福な)学生は、その後30年にわたり、年収25,000ポンド以上の場合に収入の9%を引かれるということもない。このことにより、自分で学費をまかなえる学生(注:学生ローンを使わずに済む学生というニュアンス)は、貯蓄力の関係で同様の卒業生よりも相当な経済的優位を得ている。
Intergenerational Foundation:Escape of the wealthy: The unfairness of the English student finance system(報告書PDFあり)
1ポンド≒140円(2019年1月15日)
【メディアの反応】
最も裕福な学生達は、学費を前払いすることによって最も安い費用でイングランドの大学へ進学していると研究者達は言っている。
約10%の学生が学生ローンを利用しておらず、そのため、他の学生が支払っている6.3%の利子も回避することができているとIFが述べた。
このシンクタンクは、学費システムが貧しい学生にとって公平なものであるとする主張を“嘲笑う”ものであるとしている。
政府は、学費制度の見直しは、払った学費に対する価値を保証するものだとしている。
(IFの)報告書の著者であるRakib Ehsanは、“裕福な家庭は、自分の子どもがうなぎのぼりの利子率と、将来的に民間セクターに売り払われるかもしれない30年間に及ぶローンから逃れるのを助けることで、子どもに監獄から出る権利を与えることができるのだと気付いている。”と述べた。
“政府は全ての学生を公平に扱うべきであり、それはつまり在学中に課される利率を下げ、学費を安くし、生活費給付奨学金を復活させ、返済利率を低くするということだ。”と、同シンクタンクのAngus Hantonは述べている。
英国学生連合(NUS:National Union of Students)のShakira Martin会長は、これはあまりにも多くの貧しい学生が何とか“生計を立てて”いる一方で、裕福な学生が借金と高い利率を逃れうるということを意味していると述べた。
彼女はまた、“高等教育界は平坦にならされた競技場だという政府の主張は無意味なもので、生活費給付金の廃止は、事実として、政府が我々の社会で最も貧しい人々に対し直接余計な負担を課したということを意味する。”とも言っている。
BBC News:Rich students save by paying fees up front[2019年1月15日付け]