【ニュース・イギリス】英国繁栄計画の鍵となる研究とイノベーション

 
2019年6月27日、英国大学協会(University UK:UUK)は、英国が研究及びイノベーションの世界的リーダーであり続けられるよう、英国産業界の代表や、学会、高等教育機関などと、これまでに前例の無い連名で、共同声明を発表した。
 
この共同声明において、次期首相に対して、ブレグジット後の英国の繁栄のための計画の中核に、研究とイノベーションを置くように要求している。
 
UUKを含むこの団体は、次期保守党党首に、既存の公約に基づく英国の研究開発に向け、強固で機が熟したビジョンを果たし、雇用促進、重要な医療、技術、社会的な飛躍をもたらすよう促している。
 
2027年までに研究開発に対し、GDPの2.4%を費やすという確固たる公約にも関わらず、政府は目標を達成するための軌道に乗っておらず、英国は既に国際的競争相手に遅れを取っており、新たながん治療の開発や、気候変動への取組、未来の知識集約型産業への支援などの努力を無駄にしつつある。
 
これらの公約を元の軌道に戻し、言葉ではなく行動でリーダーであることを証明するのは次期首相次第である。
 
共同声明の全文は以下のとおり。

「保守党の次期党首は、英国が研究及びイノベーションの世界的リーダーであり続けられるよう約束すべきである。
 
我々は、保守党の党首候補に対し、英国が世界的な競争力を維持し、ブレグジット後の経済と社会に、強固で豊かな未来を提供することを保証するために必要な研究開発の公約を誓約してほしい。
 
研究開発への投資が、生産性を高め、生活水準を向上させ、英国全土の人々とコミュニティに対して利益をもたらすのは明らかである。がん、気候変動、食料安全保障、高齢化社会への対応を含む我々の時代の大きな課題から、高度技術職と新たなビジネスの創造、及び国民医療サービス(National Health Service:NHS)に力を供給するイノベーション-英国研究とイノベーションは、まさに実生活に影響をもたらすのである。
 
次期政権が国内外の投資家に、英国はビジネスにオープンであり、世界を変える機会を受け入れる準備が整っているという明確なメッセージを送ることが重要である。我々の国際的な競合相手であるドイツ、イスラエル、韓国、そして日本は、既にGDPの3%以上を研究開発に投資している。
 
次期首相は、2030年までの研究とイノベーション投資に関する長期計画を策定しなければならない。これは、2027年までにGDPの2.4%、長期的にはGDPの3%、に研究開発全体への投資を引き上げるという政府の目標に基づいている。
 
しかし、言葉と目標だけでは不十分である。英国は、世界をリードする新たな技術のグローバルハブとしての地位を確立し、複数の分野に跨る英国の長所を引き出し、世界中から才能を惹きつけ、英国の企業家精神を促進するための首尾一貫した長期計画を必要とする。
 
行動に移す時である。保守党の次期党首は、英国の研究開発について大胆なビジョンを作り上げ、それを実現するための確固たる道に我々を導く首相になる機会を得るのである。」

 
この声明は、医学アカデミー、医学研究慈善協会、ブリティッシュアカデミー、化学工学キャンペーン、英国がん研究協会、英国産業連盟、英国物理学会、王立アカデミー、ラッセルグループ、そしてUUKによって署名された。
 
【政府の取組について】

  • GDPに占める研究開発への現在の投資は以下のとおり。
  • 韓国4.55% イスラエル4.55% ドイツ3.02% 米国2.79% 中国2.13% 英国1.69%
  • 英国の研究開発は、3分の2が民間部門から、3分の1が公共部門から投資されている。(2017年)

 
【実生活への研究による影響例】

  • 研究に積極的な病院で治療を受ける患者は良い結果を得る。研究活動のレベルが高いほど、緊急入院後の患者の死亡率が低くなる。研究は1970年以降、英国でのがん患者の生存率を2倍に高めている。
  • 世界の上位100の処方薬のうち、約25%は英国で発見され開発された。
  • 研究者がビニール袋料金の導入を推奨する鍵だった。これにより、イングランドで使われるビニール袋の数は、既に83%減少した。料金が導入される前の年は、七つの主要なスーパーマーケットから70億以上のビニール袋が配布されたが、この数は、料金が導入されてから最初の6ヶ月で、5億にまで減少した。
  • 組織犯罪のパターン研究は、詐欺やマネーロンダリング対策や、社会での数十億ポンドのコスト削減に役立つ。
  • 米は人類によって消費されるカロリーの23%をもたらすが、rice blastという壊滅的な病気がその将来を脅かしている。英国の研究者は、食物の安全を守るため、病気に強い新たな品種開発に取り組んでいる。

 
【研究による経済の後押し】

  • 英国の生産性レベルは、他国よりも相変わらず低い。2016年の英国の労働時間あたりのGDPは、ドイツより26.2%、フランスより22.8%、米国より22.6%低かった。
  • 研究開発への投資は、生産性向上と経済成長に直接結びつく
  • ロンドンエコノミクスが実施した調査に基づくラッセルグループの分析によると、公的研究基金1ポンドごとに、英国の大学は平均して8.35ポンドの利益を英国経済にもたらしている。
  • 継続的に研究開発に投資している企業は、投資していない会社より13%生産性が高い。
  • ライフサイエンス業種は、英国経済においてそれ以外の業種1人の雇用に対して2.5人分の雇用を提供している。

 
2019年6月27日
 
UUK:Research and innovation key to plans for UK prosperity
 

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