【ニュース・イギリス】大学職員の考える、研究評価制度(Research Excellence Framework:REF)の影響の良い点と悪い点

 
リサーチ・イングランド(Research England:RE) 、カーディフ大学、シェフィールド大学は、2019年6月24日、研究者が研究評価制度(Research Excellence Framework:REF)に対して様々な意見を持っており、良い影響ももたらしているが、まだ改善の余地があると考えているという報告書を発表した。
 
調査とインタビューにおいて、四つの大学(カーディフ大学、シェフィールド大学、サセックス大学、リンカーン大学)の学者とその他大学関係者は、REFは多くの点でプラスの影響を与えると回答した。例えば、

  • REFは、学外での取組、例えばコミュニティとの取組を奨励する
  • 大学の学部は、しばしば優れた研究成果と社会的影響をもたらすことを通じ、研究者たちをより良いREFの結果に向けて動機付けし、導くような支援活動を行う。
  • REFでのオープンアクセスとオープンな研究慣習に焦点を置くことは、研究者自身の活動と、英国の学術文化双方に対し、より硬軟にプラスの影響を継続的にもたらしている。

直近に行われた2014年のREFと比較して、現在のREF2021における変更点についても好意的に捉えられている。例えば、

  • リサーチマネージャーは、REF2021における平等性と多様性に対する考慮が、REF2014と比較して学者の幸福にプラスの影響を与えることを期待する。
  • 調査回答者は、REF2021がREF2014よりも協力的であるという意見に緩やかな同意を示した。
  • 研究者は、REF2021をREF2014よりもやや柔軟性が高いとみなした。
  • 回答者は、REF2014よりもREF2021が研究成果の量よりも質に焦点を置いていることに肯定的だった。

しかし、今後の研究評価において、学術界が解決したいと考えている問題がいくつかある。例えば、

  • 一部の大学は、都合の良い結果を導くため、必要とされる戦略を超えた追加の戦略を実施しようとしている。このことは、創造性や学術文化の他の側面に影響を与える。
  • 回答者の6分の1未満が、所属機関が研究に対して圧力を加えている可能性を指摘している。
  • 研究コミュニティの健康と幸福への潜在的なネガティブな影響
  • 回答者の大半は、REFに適応するため自らの研究内容を変えるよう要求されたことはなかったが、15%の回答者がそのように要求されたと回答した。

この研究は、REF2021を履行するときに優れた慣習を実践する高等教育機関の重要性と、そのような場合に学者がより肯定的な経験を積む可能性が高いことを強調する。
 
回答者は、研究者が公正に扱われていることを確実にするためのREF2021内の平等性と多様性の規程強化について肯定的である。これらの規程は、高等教育機関がREF2021での評価のための研究を提出する際に従う必要のあるガイダンスの柱である。
 
この調査は試験的なものであり、REFに対する認識と姿勢に関する初めての根拠を得るために実施された。REは、将来の研究評価を配慮した研究活動で幅広い評価から得た一連の証拠と並行して、これらの結果をREF2021以降の研究評価の開発の情報として利用する。
 
REF2021は既に実施されており、影響は受けない。
 
REのリサーチディレクターであり、REF2021ステアリンググループの議長であるSteven Hill氏は以下のとおり述べた。(以下発言内容は抜粋)

REは、REFが常に公平、平等、透明性の原則に基づいていることを保証するために、英国の他の高等教育資金提供機関と密接に協力している。
この研究の目的は、研究評価の将来的発展に役立つ確実な証拠を収集すること。
調査結果によって、REFに関して世界をリードする高等教育部門の学者の実際の経験と、どの側面がプラスまたはマイナスに見られるかについて貴重な理解を得ることができた。
この報告書には、プロセスについて好評価もあった一方で改善できるという証拠もいくつか得られたため、今後の実践で活用することを検討する。

 
カーディフ大学の上級講師として動機付けと行動の変化を研究し、この報告書の共同著者でもあるNetta Weinstein氏は以下のとおり述べた。

REFは、学者の行動と「心身ともに良好な状態(well-being)」に影響を与える可能性が高いが、その影響と研究活動への影響を理解するための経験的証拠はほとんど収集されていない。
高等教育の現場における認識が、研究者の「心身ともに良好な状態(well-being)」と生産性を決定する鍵であることが分かっているため、様々な状況において、研究者がREFをどのように理解し、受け取るかを慎重に評価することが重要である。事実、証拠に基づいた意思決定を基本的に重視するREFを研究することが重要である。

 
シェフィールド大学の研究政策教授であり、報告書の共同著者であるJames Wilsdon氏は以下のとおり述べた。

今回の試験的調査は、最前線の研究者や研究マネージャーが経験したREFの長所と短所のより微妙な関係性をさらに深く掘り下げて明らかにしようとした。そして、REF2021が実施されている間に、このことをリアルタイムで研究しようとした。

 
2019年6月24日
 
UKRI:University staff see positive and negative impacts of Research Excellence Framework, study shows 

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