【ニュース・イギリス】大学進学希望者、入学制度の徹底的な見直しを支持

 
 2020年10月29日、英国の教育を通じて社会流動性を促進することを目的に設立されたSutton Trustは、大学入学制度の改革に関する報告書
を発表した。当該報告書によると、大学進学希望者は、現行システムである予測された成績に基づくのではなく、実際の成績に基づいて志願する
大学を決定したいと考えていることがわかった。主な調査結果は以下の通りである。

  • 2020年において、労働者階級育ちの大学進学希望者が、希望する大学に入学する可能性は、中流階級育ちの大学進学者よりも低い。
  • 労働者階級育ちの大学進学希望者が、もし最終結果がわかっていれば、より精選された大学を志願した可能性は高い。
  • 大学進学希望者の3分の2は、予測された成績に基づく現行の方法を大学入学制度から取り除き、実際の成績に基づいて志願する大学
    を決定することを支持している。

 
 今年の大学進学希望者の大多数は、最終成績を受け取った後に大学に志願するシステムに移行することを望んでいる。

 
 これは、若者の3分の2(66%)が、どの大学に志願するかの判断を最終成績を受け取った後に決めるPQAへの移行が、予測された成績に基づく
現行のシステムより、より公平であると考えていることを示唆したSutton Trustの新たな調査によるものである。大学進学希望者502人を対象と
した調査結果では、この新たなシステム(PQA)は公平ではないと考えているのはわずか13%しかいない。

 
 今年の大学入学制度における難局は、学生が教員によって予測された成績で志願する現行のシステムの重大な欠陥を露呈した。
これにより非常に多くの場合、教員によって予測された学生の成績は、正しくないということを証明している。以前行われたSutton Trust
の調査によると、より低所得の家庭育ちの優秀な学生は、成績が過小評価される可能性がより高く、毎年およそ1,000人の学生がその影響
を受けていることが浮き彫りになっている。

 
 今年の入学制度のプロセスは、教員の評価もしくは資格・試験監査機関 (Ofqual)が開発したアルゴリズムの結果のいずれか評価が高い方
によって最終成績が授与されたため、従前とは異なった。しかしながら、試験が中止された場合であっても、大学進学希望者の
たった38%しか教員による初期の予測と当該結果が一致しなかった。

 
 大学進学希望者3分の2(69%)が、最も希望する大学に入学した一方で、中流階級育ちの学生は、労働者階級育ちの学生のそれと比べ、
より希望の大学に入学した可能性が高い(中流階級育ちの学生は72%、労働者階級育ちの学生は63%)。

 
 学生がどの大学を志願するか決定するとき、もし最終成績を知っていたら、労働者階級育ちの大学進学希望者は、より精選された大学を
志願した可能性が高い

 
 これは、PQAシステムは、より低所得の家庭育ちの学生が、彼らの成績により適した大学に志願することについて良い影響があることを
示唆している。また、当該システムは、学生にとってあまり適切でない“無条件許可(※)”を受け入れるプレッシャーをかけられている学生
の課題も取り除く。大学入学のチューターもまた、そのシステムの改革を支持している。PQAは入学制度をすべての人により明快かつ効率的
でより公平にするであろう。

 
 大学は、この学事年度においてコロナ禍に関連して数え切れないほどの難題に直面している。入学制度改革は当然のことながら優先事項
になっていない一方で、政府の今度の戦略文書では、おそらく2022年からPQAといかにしてそのシステムを良い方向に変えていくかについて
の本格的な話し合いの機会が示されている。

 
※無条件許可:
英国の大学入学許可システムにおいて、大学側は出願者の所属する学校があらかじめ提出する「予測成績」に基づき、試験の前に合否判定を行う。
この時に、志望する大学が指定する科目において基準に達している、面接を受けるなどの条件をクリアすれば合格を認められるのが「条件付き許可
であるが、「予測成績」のみによって合格が決まるのが「無条件許可」である。

 


Sutton Trust: University applicants support overhaul of admissions, new polling shows

地域 西欧
イギリス
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