【ニュース・イギリス】EU研究資金終了のため、ウエールズの大学で1,000人の雇用削減に直面

 
2023年2月7日、Guardian紙は大学のトップたちが政府に対し、EU資金が今年で終了するプロジェクトの継続のため、資金提供を行うように要求していることを伝えた。ウエールズの大学は、EU構造基金からの撤退により1,000人以上の技術職が危機にさらされており、大学のトップたちは、政府が約束した代替資金はその失われたEUからの資金とは見合わないと語っている。

 
2014年以降、ウエールズの大学はEUの構造基金から3億7,000万ポンドの研究プロジェクト資金の提供を受けてきたが、英国のEU離脱で今年中に現在進行中の6プロジェクトが終了する。Swansea Universityの学長であり、ウエールズ大学研究イノベーションネットワークの議長を務めるPaul Boyle教授は、国会議員たちに対して、プロジェクトと雇用を救済するには7,100万ポンドの緊急投資が必要であることを述べた。「崖っぷちから一歩後退することで、何百人もの雇用を守り、経済成長を導き、政府が公約しているレベリングアップの野心の核となる分野への直接な投資提供ができる。」とBoyle教授は述べた。「世界市場での競争力の激化で、この国でもっとも永続的で国際的に認識されている強みを利用しきれない危険がある。」

 
例えば、EU構造・投資基金を通して資金提供を受けているSwansea University の特別なプロジェクトでは、太陽エネルギーから電気を貯蔵したり放出できる建物を作ることを目的としており、変換可能な太陽電池、夏の熱を貯蔵し冬に利用する材料などが含まれる。このプロジェクトでは、7つのスピンオフ企業が起業しており、何百もの民間部門の提携プロジェクトが進められている。

 
Swansea West地区 からの選出議員である労働党のGeraint Davis氏は「これらのプロジェクトは持続可能な経済成長を目的とする英国の野心にとって大変大切であり、突然の失効は我々の地域、経済、長期的な利益にとって多大な損失を与える。」「だから、7,100万ポンドと緊急つなぎ資金を提供することが重要である。」構造基金からの資金提供は今年で終了するため、英国政府はUK共有繁栄基金から26億ポンドを提供し、この穴埋めをすると約束している。しかし、配分をめぐる遅延と不確実さにより現在のプロジェクトは資金分配される前に強制的に閉鎖される可能性がある。

 
Cardiff University は、12件のプロジェクトが今年中に終了する予定で、すでに昨年5件のプロジェクトが資金が底をつき閉鎖に追いまれており、約100件の雇用が危機にあるという。Cardiff Universityの学長であるColin Riordan氏は、Research Professional Newsに対して、「このプロジェクトの目的はイノベーションを通じて雇用の創出、経済活動の活発化を図るもので、単に大学の損失ではなく地域的な損失になるであろう。」と語った。

 


Guardian紙:Welsh universities face 1,000 jobs being lost as EU research funding ends


地域 西欧、EU
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
人材育成 職員の養成・確保
研究支援 研究助成・ファンディング