【ニュース・イギリス】科学の信頼を築くために投資を行わなければならない

 
2023年1月18日、Research Professional NewsはThe Lancetの編集長でLancet Groupの発行人、また「The Covid-19 Catastrophe」の著者であるRichard Horton氏がCovid-19の遺産として、科学の注目度が増えたが、科学者はより良いコミュニケーションをとるべきである、と述べたことを伝えた。

 
3年前、新しい呼吸器疾患の病気が中国で増え、他の国でもその傾向が現れ始めた。2年前はCovid-19の予防接種を受けた英国在住者が400万人を超え、世界的に予防接種普及のペースが上がってきた。現在、Covid-19の状況を考えてみると、研究者、科学者、医療専門家など、驚くべき進歩を可能にした人々には感謝するべきである。ワクチンは科学にとって疑いの余地のない勝利であった。しかし、Covid-19のすべての結果が決して良いものではなかった。

 
Economist誌の政策研究機関のEconomist Impact は、Lancetの出版社であるElsevier の支援を受け、最近、世界の科学研究者の3,100人以上を対象とした調査を行った。その結果によると、研究者はCovid-19により科学に関する世間の関心が増えたことを歓迎している。しかし、その関心は研究の経過に対するより良い理解とは一致していないことが分かった。しかし、世間の関心は否定的な影響も与えることになる。調査の対象となった32%は、自分自身か、もしくは近くにいる同僚が自分の研究をオンラインで発表した後に嫌がらせ行為を受けたと回答している。これよって、研究者にとってSNSを利用することが神経質になることは理解でき、SNS上で自分の研究を発表することに自信があると回答しているのはわずか18%であった。

 
英国主任医務官であるChris Whitty氏や最高科学顧問のPatrick Vallance氏など、Covid-19により一夜にして世間からの注目を浴びることになり、早く順応しなくてはならなかった。世界各国でも科学者は世間の監視により大きな圧力を感じ、未だにその感覚は残っている。研究者や科学者がより世間と対応する役割になることで生じる問題もある。それはSNSを中心として様々なコミュニケーション手段を利用し、一般人、政策立案者、メディアに対して積極的に物事を推進しようと関わる機会でもある。研究界は次の健康上の緊急事態に備え過去3年間の経験から学ばなければならない。

 
その一つが科学的な過程の説明である。研究に関わっている人であれば理解が進むにつれ結果が変わる可能性を知っており、それは科学の魅力の一つでもある。外部の人々は科学の繰り返しという本質をほとんど理解していない。世間の人々は研究の結果はいつも暫定的なものであることを認識せず、読んだものを信じてしまうことが多い。そのような不確実は、危機の中では受け入れることが大変難しい。Covid-19の流行がピークを迎え、世間が明確な情報を求めたとき、どっちつかずな研究の成果が摩擦を起こした。例えばマスクに関する科学的なアドバイスの発表では、世間の批判を呼び、専門家への不信を呼んだ。

 
新しい科学の多くは興味のスピードと世間からの要求により、査読前に発表されたことも、当時の状況をより複雑にしている。研究者は直接一般人、政策立案者、メディアと対決しなければならなかった。研究者とその支持者は、科学に対する世間の理解を向上させる責任がある。世間、メディア、政策立案者は、科学と研究の過程がどのように関係しているのか、より多くの情報を得る必要がある。

 
社会的信頼の構築

 
科学的な過程に対する理解をより深めることを推進し、査読やその他の品質保証方法を説明し、再度焦点をあてることは、科学の信用を再構築することに役立つ可能性がある。これらを効果的に実施することは誤報を払拭し、対処することを意味する。研究者は自信をもってSNSを利用し自身の研究を発表する必要がある。一般の人々や政策立案者と関わった時に必要なコミュニケーションスキルを向上するための支援が必要である。科学界として、科学の世間からの信用を構築することに投資を行い、間違った情報に対抗するキャンペーンを実施し、メディアの研究リテラシーを強化し、科学コミュニケーションに関する更なる研究を行い、新しい研究成果を一般人に説明する精力的な努力を行い、もっと公的な役割のために準備しなければならない。

 
私たちは、科学的な政策の決定、特に健康に関することに対して政策的なアイディンティティのレッテルを貼られることを心配する傾向がある。マスク着用の議論は、典型的な事例である。しかし、一方で我々の日常生活に影響する政策に関しての議論を止めることもできないし、するべきではない。政策立案者が「科学に基づいて」行われる訂正は誤った情報をなくし、社会に利益をもたらす科学への敬意を育むのに役立つであろう。

 
研究界は、その名誉に安住するのではなく、Covid-19から学んだことを教訓としていかなければならない。明るい未来が待っているが、それに辿り着くための道具を持ち、研究者とつながり、支援するためにまだまだやることはある。


Research Professional News: ‘We must pour investment into building trust in science’


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