【ニュース・イギリス】2021/22年度、英国大学エージェントに900万ポンドの手数料を支払い留学生勧誘

 
2022年8月5日、Pie News は英国の大学で留学生を勧誘するため、国際教育エージェントへの依存が高まっていることを伝えた。2021/22年にはエージェントの手数料で900万ポンド支出した大学もあるという。2021年、University of Exeter は教育エージェントに対して、1,800人の大学院生、750人の学部生の募集に際し900万ポンド支払った。5年前は大学はエージェントに大学院生765人、学部生335人に対して250万ポンドを支払っている。

 
University of York は過去5年間エージェントに対して支払った額は公表していないが、手数料は同様に増加している。2017/18年度には、エージェントへの手数料として242万ポンド、その5年後には907万ポンドとなっている。その他の機関でも同様に手数料が高くなってきており、Kingston University では2017/18年度の140万ポンドから2021/22年度の730万ポンドまで跳ね上がっている。Cranfield では、2017/18年度に大学院生誘致のため110万ポンド、2021/22年度には370万ポンド支払っている。

 
University for the Creative Arts では手数料が2016/17年度から2020/21年度にかけて750%増加し、373,191.42ポンドから310万ポンドで、2020/21年度では614人の大学院生、330人の学部生を誘致した。Leeds Beckett University では、5年前は比較的低い費用の726,953ポンドで始まったが、昨年エージェント経由の学生が1,695人で510万ポンドまで上昇した。Wrexham Glyndwr University でも同様な傾向があり、2017/18年度ではエージェントへは23,500ポンドの支払いであったが、2021/2022年度では240万ポンドまで膨れ上がった。

 
Pie News が情報公開を通じて入手したこのデータによると、北ウエールズにある Wrexham Glyndwr University は、エージェントを利用することでより多くの大学院生を誘致していることがわかった。2017年にはエージェントを利用し5人のみ誘致したが、2022年までに8人の学部生、547人の大学院生を誘致した。多くの大学が学生数とエージェントに支払われた額の回答を拒否した。Durham University では、2017/18年度に学部生244人と大学院生1,086人を誘致しエージェントに250万ポンド支払ったと詳細を回答した。そして5年後、441人の学部生と1,206人の大学院生に対して、450万ポンドをエージェントに支払っている。英国は2020/21学事年度では605,130人の留学生を迎えた。60万人の誘致目標を10年前倒して達成したことは有名な話であるが、情報公開によって、エージェントの貢献により目標を早期に達成したことが明らかになった。

 
例えば、University of Warwick では人数と金銭的報酬を公開すれば、その他の関係者は手数料の計算ができるようになるという。手数料を決めるのに数ヶ月かかることもあり、決められなかった場合、数年に及ぶこともあり、エージェントと大学の間でもそのレートが異なる。同じエージェントでも大学によって手数料が異なる。しかし、大学は利用しているエージェントのリストを共有している、という。

 
英国でいくつかの大学が大手のエージェントに対して20%以上の手数料を払っているという疑惑があり、「標準的な」10%の手数料率からかけ離れてしまっているという懸念がある。Pie News では、大学に対してどのぐらい手数料率があるのか確認ができなかった。しかし、計算上では2021/22年度でExeterは学生一人につき平均で3,529ポンドを支払っていることになる。Kingstonは3,055ポンド、Durhamでは2,819ポンド、Kent では1,659ポンドである。しかし、実際には学費、学部、レベル、エージェントと学生間の契約内容などによって異なる。また、大学が学生誘致に対してエージェントにあまりにも頼り切っている状態になることの懸念や、透明性に関する問題も指摘されている。

 
Pie News がデータを求めた129大学のうち、19大学が情報共有を拒否し、過去5年間の間にどれだけのエージェントと提携したかという質問にさえも答えなかった。データ情報を拒否したところは、Liverpool、 Essex、 Newcastle、Cardiff、 Birmingham などであった。オーストラリアでは、このような情報はオーストラリアの教育省のウエブサイトから得ることができる。しかし、データによると過去5年間の間に英国の大学とエージェントとの提携が増加していることを示している。

 
エージェント契約の成長

 
Pie News の調査で、University of Creative Arts が最も多くエージェントとの契約をしており、今年は365件のエージェントと提携していることがわかった。2021年では、South Wales が2番めに多く362件、De Montfort が320件、Cardiff Met は273件、2022年では Arts University Bournemouth が267件であった。しかし、エージェント契約の増加は全ての大学で行っているものではない。例えば、York St. John では2018年から2020/21年度にかけて正式な契約数が増加し、148件となった。その年にはエージェントを通した誘致は48人の学部生、680人の大学院生であった。しかし、2021/22年度では14のエージェントしか提携していないにも関わらず、エージェントの経由の誘致は学部生85人、大学院生は705人であった。

 
その他、正式なエージェント契約の数を減らしている大学は Derby(2018年の133件から2022年の104件)、Solent(2017年の115件から2022年の92件)、Suffolk(2018年45件から2021年の38件)Bradford (2019年の303件から2022年の282件)である。Robert Gordon は、だいたい同じ数のエージェントと契約をしており、2017年の114件と2021年の113件である。過去5年間でReading は163件から164件、UEA は156件から154件、Edinburgh は45件から47件であった。

 
BUILA が2021年に行った調査では、英国高等教育機関の回答者105件によると、すべての機関が少なくとも1件と契約しており、多いところでは400件というところもあった。BUILA の前回の調査によると、高等教育機関に所属する留学生の半分は、エージェントを介していることがわかっている。

 
Pie Newsによる調査では、いくつかの高等教育機関は学生の誘致にもエージェントに依存していることがわかる。例えば、University of the Arts London (UAL) ではエージェントを介した留学生の割当は2017年の学部生26%、大学院生41%から、2021/22年度では学部生46%、大学院生63%であった。University of West Scotland では、エージェントを介した留学生の割合は2017/18年度で25%、2021/22年度で87%であった。Kingstonでは2017/18年にエージェントを介した割合は57%から76%に増加している。

 
大学院生獲得のためのエージェントの活用

 
Pie News では、Wrexham Glyndwr と同様にエージェントを通じた大学院への進学人数の増加が見られることも分かった。2019年、英国政府は2020/2021学事年度の卒業生から Graduate Route という留学終了後の労働ビザの復活を発表したので、このことが、大学院生の進学数を上げた要因かもしれない。Oxford、Imperial、Cambridge、University of Wales、UHI West Highland、Open University の6つの大学では、留学生の募集にエージェントを利用していないと回答している。

 
Imperial College London は留学生勧誘エージェントに対するポリシーを発表しており、「学生を誘致するための手数料は誰にも一切支払いをせず、またそのサービスも認めない。」と述べている。大学は、エージェントが大学の代理として行っていると主張し、同大学との「特別な関係」によって入学できる可能性が高いとして、願書費用を請求するエージェントをはっきりと否定している。Plymouth Marjon University は、現在の学事年で初めて2つのエージェントと契約を結んだが、まだ一人としてエージェントを介して入学していないと指摘した。
 


Pie News: Exeter and York pay £9m to agents in 2021/22 as UK commissions boom


地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化