【ニュース・イギリス】大学進学は価値があるのか?若者の動機、願望、学生財政の観点

 
2021年10月29日、超党派の国会議員と大学のトップで構成される大学に関する 超党派大学議員連盟(APPUG) は新しい報告書「Is university
worth it? Young people’s motivations, aspirations and view s on student finance」を発表した。これは現在18歳以降の教育資金提供に関する
政府の協議結果を待ち続けている高等教育機関が、学生の財政システムやその改革の可能性に対して、大学進学希望者の観点から新しい証拠を集めた
報告書である。

 
1000人の学生を対象にして実施された調査によると、無料給食を受けたことがある学生は実家から大学に通学することを計画している学生数が
圧倒的に多かった(無料給食受給者は34%、非受給者は18%)。また両親ともに大学に進学しなかった学生の中では30%が地元の大学への進学を
計画しており、両親が大学に進学している場合は9%であった。

 
調査結果を行った Public First により学生とフォーカスグループに対して実施されたインタビューでは、多くの学生が特定の学部に進学するため
に地元の大学進学を計画している学生が多かったことが明らかになった。恵まれない環境の出身者である学生は生活費を基準として大学を決める
傾向があった。13歳の学生で無料給食受給者の34%が費用を節約するために地元の大学進学を計画しているが、無料給食受給者ではない学生は18%
であった。地元での「良い就職」をするために大学進学するという選択肢は恵まれない環境出身者の中で最も価値が高かった。

 
生活費を心配しているにも関わらず、大学進学希望者や大学新入生は、大学の学費は見合う価値が合うと考えている(66%が価値を見出し、5%が見出さないと回答している)。 今回の調査で、あまり裕福でない家庭の学生は大学にかかる費用や大学を卒業するまでの資金援助に関して、より多くの知識があったことがわかった。無料給食受給者は学生ローンに関して、46%は十分に理解していると答えたが、非無料給食受給者は37%であった。

 
全体的に下記のような結論となった:

  • 学生はなぜ大学に進学したいのか明確であり、将来に向けて有利であると考えている。大学に進学を志望する動機を尋ねたところ、すべての層で、「希望しているキャリアの仕事に付くため(63%)」、が最も多かった。特に裕福ではない出身の学生は、学位を修得することで生涯にわたって利益があると考えている。
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  • 大学進学希望者は、大学での財政計画を立てるため、多くが家族や友人から情報をもらうことに頼っており、その情報源や方法などに明らかな格差がある。57%の学校及びカレッジの最終学年の学生は寮や食費にいくらかかるか理解していない。
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  • 4分の3以上の学生が学生ローンにかかる利子は不公平と考えている。81%は学生ローンの負債は30年後には帳消しにするべきだと考えている。
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  • 4分の1以下(22%)の学生しか毎年大学進学者の人数に上限を設けるべきであると考えていない。若者は高等教育を学びたいと考えているすべての者に対して門戸を開くべきで、上限を設けるべきでないと真剣に考えている。

超党派大学議員連盟の共同議長である、前大学大臣であったChris Skidmore 国会議員のコメント:

 
これらの結果でわかるように、大変多くの若者が大学で学び、学位を取得する機会を望んでいる。ただ良い仕事を得て良い給与を求めているだけでなく、自身の可能性を追求し、よりよい教育を受け、熟練した個人になるためである。

 
大学進学希望者が過去最高となってきている中で、次世代の若者にどこで何が学べるのかなどを大雑把に決定づけてしまうようにして、意欲に制限をつけてはいけない。学生の選択肢が少なくなるような改革を通して、学びたいと希望している学生の機会を断ち切ってしてしまうことは、恵まれない環境の出身者である若者の生涯のチャンスをなくし、また政府のレベリングアップ戦略にも疑問が出てくる。政策立案者は今こそ自身の生活を向上しようとしている人々の願望や意欲に逆らわず、共に協力する時である。

 
超党派大学議員連盟の共同議長である Daniel Zeichner 委員のコメント:

 
今回の調査で恵まれない環境出身者に関する多くの定説が覆された。彼らは大学に進学することで違いがあることを理解しており、生活の向上という、いわば人生の転換をもたらすものと考えている。また大学進学を高価なものと考えているが、その価値を見出している。つまり、「価値の低い」コースと言われているコースを閉鎖するのではなく、学生の選択を促進し、大学が果たしている変革という役割を支援するべきである。政策立案者は実際に取り残されている人たちの立場を理解して、現実に追いつく必要がある。


「Degree apprenticeships hold limited appeal, survey of sixth formers suggests」:
  Degree apprenticeships hold limited appeal, survey of sixth formers suggests


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イギリス
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