【ニュース・イギリス】英国研究資金の増加は期待ほどではなかった

 
2021年10月28日、Natureは10月27日に発表された2022年の 予算案および予算の見直し案に関して英国の学術関係の内容を伝えた。予算案には Horizon Europe への資金提供も含まれているが、実際に英国の Horizon Europe への参加は暗礁に乗り上げている。

 
今回の予算案では英国の待望である科学研究への資金目標が2年先送りされた。しかし、EU の研究プログラムに参加するための資金が初めて計上された。財務大臣である Rishi Sunak 氏は、政府は当初計画されていた2024年ではなく2026年までには研究開発費を年間220億ポンドに引き上げることを発表した。つまり5年後の公的研究費は2021年と比べておよそ50億ポンド(35%)増加することになる。

 
英国王立化学会の会長である Helen Pain 氏は、「研究開発の目標の条件が変更されたので、多くの研究者がこの発表を残念に思ったであろう。しかし現在、財政上大変厳しい状態であることも認識している。」と語った。

 
ここ数週間、Covid-19 の影響で国庫に打撃を受け、財政が厳しくなっていていることから政府は研究費への資金を引き上げるという公約から手を引くのではないかと言う大きな懸念があった。

 
EU 離脱後、政府は研究開発を経済成長の発展に利用することによって、英国を「科学超大国」にすることを目標にすることを表明した。220億ポンドの目標は2027年までに研究開発費を官民の支出を GDP の2.4%にするという、当時の Theresa May 首相の2018年の公約に基づいて2020年3月に政府が発表したものである。

 
220億ポンドの目標が延期された現在、そのような投資レベルに達するかどうか不明である。ロンドンの科学ロビー団体である Campaign for Science and Engineering (CaSE) が昨月発表した分析によると、3年間の目標達成の遅れは英国科学に対する民間の研究開発において110億ポンドの損失になるという。「この目標を実現し、企業の信頼と投資を維持するために一層の努力が必要である。」と CaSE の Daniel Rathbone 氏は述べた。

 
Horizon Europeに対する明確さ

 
今回の発表でようやく、科学者達にとって欧州委員会の重要な研究プログラムである Horizon Europe に参加するための資金がどこから捻出されるか明確になった。参加費はこれまでの欧州連合(EU)の加盟国参加金から、EU 離脱後は別の資金源が必要となった。財務省の資料によると追加資金として年間10億から20億ポンドがプログラム参加のために負担される予定となっている。ただ、資金的には準備が整ったが、実際の合意に至っていない。英国政府とEU側の交渉は英国とアイルランド島間の税関国境をめぐり交渉が停滞している。

 
海外援助支出

 
支出公約の一環として、財務大臣は海外援助支出を2024/2025年度までに国民総所得の0.7%に戻すことが可能であると予測した。政府開発援助として知られているこの資金の一部は、海外の研究者達との提携関係を作り上げることにより新型感染症など開発途上国の差し迫った問題に取り組むものである。昨年11月に Covid-19 による経済的低迷のため、開発援助金を GDP の0.7%から0.5%に引き下げた。これは多くの反響を呼び、1億2000万ポンドの研究費の減少のため、800以上の研究プロジェクトが影響を受けた。

 

nature.com: UK research funding to grow slower than hoped

 
GOV.UK :Budget and Spending Review – October 2021: What you need to know

 
GOV.UK :Autumn Budget and Spending Review 2021

 


「Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite」:
  Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite


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