【ニュース・イギリス】王立学会会長:16歳以降の教育の改革し、学歴重視の緩和を

 
2022年6月29日、英国王立学会 の会長である Sir Adrian Smith は、ビジネス界、産業界、学術界、慈善団体および主要な芸術機関のトップを対象とした講演で、国の不平等の拡大と生産性の停滞の対処として、イングランドの16歳以降のカリキュラムを拡大することを呼びかけた。

 
Smith 卿は、経済が必要とする高スキル職への進路として、従来の A レベルの代わりとして、広い範囲のスキルや学術範囲を網羅する幅広いバカロレア式の資格試験にするべきであると述べた。

 
また、T レベルを含む、技術資格を若者に提供できる機会に関してコメントし、「もし学歴重視主義の呪縛から解かれないのであれば、ただ時間が過ぎていくだけとなるであろう。」

 
「16歳で多岐にわたるスキルの可能性を放棄させている」、学生の視点を狭め、生涯を通して様々な職に適応させる能力を制限させている A レベルの制度を批判した。

 
「あまりにも長い間、教育制度の中にある不利な要因の格差を縮めることに進歩がなかった。Covid-19 により学習が中断された今こそが、全ての人々の成果を改善するための適切なタイミングである。」

 
「教育改革は、社会流動性に明確で大きな影響を与え、政府が目指す「レベリングアップ」の達成に役立つ可能性がある。もし我々が「レベリングアップ」を真剣に目指すのであれば、継続および技術教育部門に注目し、技術系と学術系におけるキャリア進路の関係を再検討する必要がある。」

 
Smith 卿は、現在、より優れたバカロレア式の方法を取っているいくつかの学校で、一部に限りその恩恵を受けていることを強調し、高いパフォーマンスを可能にする環境を提供するだけでは十分ではなく、「どのような人でも、どこに住んでいようとも、全ての人々に卓越した教育を政府が届けるように期待しなければならない。」と述べた。

 
「産業が発展し、生産性が高まり、より平等な社会を作り上げたいのであれば、将来に向けて、より賢く準備する必要がある。その唯一の方法は教育を正しくすることである。現在、我々は20世紀の教育制度を21世紀の中で対応している状態である。今こそ、その質を上げる時である。」

 
幅広い教育への移行の初期段階として、Smith 卿は、将来の学習、就職、また生活に欠かせない数学、統計、データのスキルを身につける Core Math 資格を数学のトレーニングとして16歳以降の全ての人が受けることを推奨した。

 
「我々の日常生活において、常にあふれるばかりの数字、数値、統計を目の当たりにしている。全てのデータを処理するスキルを習った人があまりにも少なく、何百万人の人が経済繁栄に必要な充実した職に就けず、あまりにも多くの人が国民的な議論に自信をもって参加する権利を奪っている。」

 
Smith 卿は、より多くの教師を採用する必要があると述べている。熟練した、自信にあふれ、やる気のある教師も、国の教育制度への野心的な改革の実施を支援するために維持されなければならない。

 
Smith 卿は、政府の最近の教育白書が教師の募集と定着の問題に触れているが、「良い教師を維持するためには、より深く、より体系的な支援が必要である」ことを認めている。

 
Smith 卿は、全ての中等および継続教育の教師が、毎年最低35時間、科目ごとに特有のスキルや知識の更新のための訓練を継続的に行うことができるように求めた。

 
この講演は、英国王立学会の教育会議で行われた。一日かけた会議ではビジネス界、産業界、学術界、慈善団体および主要な芸術機関のトップが集まり、次回の総選挙を前に様々な提言を議論する場でもあった。


英国王立学会: 
‘Break the stranglehold of academic snobbery’ to change post-16 education and achieve levelling up ambitions, says President of the Royal Society


地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育