【ニュース・イギリス】現世代の社会的流動性の展望は暗い

 
2022年6月1日、Sutton Trust は25年周年を記念して発表した報告書において、現在の学校年齢の生徒たちの社会的流動性の展望は暗いと警告している。

  • 主要な報告書は Covid-19 の流行による学習損失で社会流動性が12%低下すると予測した。
  • 英国女王の戴冠式直後に生まれた世代が謳歌した「黄金時代」と比べ、現世代は機会の減少に直面している。
  • 恵まれない環境の生徒を支援し、教育から就職の間の移行を改善するために長期的な教育政策が必要である。

報告書では、恵まれない生徒の将来の生活機会は Covid-19 の流行や生活費の高騰危機のため打撃を受けるであろうと警告している。研究者は、英国の相対的な所得流動レベルは Covid-19 によって、学校での学習時間の欠如の激しい乖離から12%低下する可能性を予想した。これは他の国と比べて格段の減少となる。

 
報告書である「Social Mobility- Past、Present and Future 」は、住宅所有の格差が深刻になることも挙げている。2000年から2017年の間に、持ち家と比べて賃貸住宅で育った人たちの格差が2倍となった。報告書は、このような傾向がCovid-19の影響や現在の経済的課題とともに将来の世代の社会的流動性を脅かしていると警告している。

 
英国女王の即位70年記念祝賀の中、時代の推移による社会的流動性に関する総括は、収入の上昇は言うまでもなく、よりよい人生を送るという夢は、21世紀初頭に育った世代にとっては消えつつあるとまとめた。彼らの展望は、英国女王の治世が始まって間もなく出生し、社会の機会拡張によって後押しされた「社会的地位上昇の黄金世代」を満喫した世代とは対照的である。

 
同報告書は全体的な社会流動性の傾向を評価するために、社会的な階級や、教育など様々な指標を検討しており、最近10年間では小さい改善がみられている。しかし、収入の上昇、社会的に高い階級に入る、大学の学位取得、家の所有など出身家庭環境による格差はまだ残っている。また、社会流動性の研究は過去25年間に増加しており、特に2005年の Sutton Trust の影響力のある研究以降、英国の活字メディアで飛躍的に増加している。

 
研究者は、特定の教育制度や学校は若者の人生を変えることができるが、教育制度全体がすべての学生に対して平等に恩恵を与える制度となっていないと締めくくっている。最も恵まれない生徒を支援し、教育と就職への転換期の改善や、両親が家庭内での学習を支援することなど、長期的な教育政策が必要であると主張している。

 
Sutton Trust はこの25年間、流動性の成功の道として高等教育への参加に取り組んできており、この間に大学への参加が改善されたことは肯定的である。しかし、Sutton Trust は大学に進学しないグループに一層焦点を絞り、出世のためや将来の職場での成功に向けたより良い道を提供することを求めている。


Sutton Trust: Social mobility prospects bleak for Jubilee generation


地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
人材育成 学生の多様性