【ニュース・イギリス】大学は学費に見合う価値のあるところであるべき

2018年11月5日、議会の教育委員会は「高等教育における学費の価値」(Value for money in higher education)に関する報告書を公表し、その中で高等教育は卒業後の成果、技能の教育、恵まれない環境からの生徒の参加向上に焦点を絞る必要があることを述べた。

 

アクセシビリティ
委員会は、大学と政府両者に、学生によりよい成果を保証するために学位アプレンティスシップ(degree apprenticeship)*の拡大、大学をより幅広い学生にとってよりアクセスしやすい場所にすること、また過当な学長の給与に関して取り組んでいくように呼びかけている。

 

卒業後の成果
報告書では、大学に卒業後の将来の見込みについて、収入と就職先の両方との関係で、より透明性を高めるよう求めている。国家統計局(ONS:Office for National Statistics)の2017年の調査によると、最近の卒業生の49%は英国で大卒向け未満の仕事に就いていることがわかった。委員会は、卒業後の成果の情報が増えれば、学生はより良い情報の下に選択をでき、機関がより説明責任を果たすことになると考えている。

 

技能と学位アプレンティスシップ
高等教育は第4次産業革命に向けて学生を育て、国内での技能需要を満たすことにより重要な役割を果たさなくてはいけないと報告書は述べている。政府が発表した最近の雇用者技能調査の結果では、なかなか埋めることが困難な空きポジションの原因の3分の2は、少なくとも部分的には、志願者の技能、資格、経験の不足である。委員会はすべての高等教育機関に対して国の生産力向上のため“重要”とされる学位アプレンティスシップの提供を求めている。

 

社会的公正さと柔軟な学習――生活費給付奨学金の復活
委員会は、パートタイム学生数及び成人学生数の減少並びに社会的に恵まれない環境から高等教育へ進む学生への影響を“深く懸念”している。大学はもっと柔軟な学習環境を、例えば、単位互換、就労体験型学習や就学中断制度などを提供し、従来の“厳格な”大学3年制の考えから抜け出す必要がある。
英財政研究所(IFS:Institution for Fiscal Studies)の研究調査によると、2012年の学費の値上がりと生活費ローンの導入で、貧困層の学生に3年間の課程で57,000ポンドの負債が生じることになる。政府は、学生ローンと生活費給付奨学金の所得調査システムを復活させるべきである。

 

学長及び上級職の給与
報告書では学長の“不当で”過大な給与が異例と言うより普通になってしまっており、学生や納税者にとって見合う価値のないものであるとしている。雑誌“Times Higher Education”の学長給与調査では、給与、ボーナス、手当の合計で学長たちは平均268,103ポンドを支払われていた。
学生局(OfS:Office for Students)は上級管理職の報酬に関してより強硬な姿勢をとり、特に職員の平均給与の8倍以上が機関から学長に支払われている場合、介入を恐れないようにするべきである。委員会はOfSに、職員の平均給与、実績、その他の評価に結びつく、許容可能な賃金水準の基準の公表を呼びかけている。

 

無条件合格
報告書では、学生に対し提示される無条件合格の急激な増加に注目して、OfSにその利用を抑え、そのやり方が学生の利益にとって有害であり高等教育制度自体を蝕むと警告するようにも求めている。

 

*学位アプレンティスシップ:英国の職業教育制度の一つ。実際に雇用され賃金を支払われることと大学や職業訓練事業者へ通うことがセットになっており、最終的に学士号や修士号を得ることができる制度。

 

1ポンド≒147円(2018年11月5日)

 

Parliament.uk:Universities must focus on value for money

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の就職、学生の多様性、高技能職業人材の育成