【ニュース・イギリス】学費値下がり、しかし理系は値上がり?

2018年11月2日、BBC Newsは、イングランドの大学学費が6,500ポンドに値下がりするが、将来高収入を得る可能性のある医科、理科系等は13,500ポンドに値上がりする可能性があることについて以下のとおり報じた。
この件は、Philip Augar氏を代表として現在首相が進めている、18歳以上の高等教育の見直し作業において真剣に討議されているものだとされている。

 

BBCによれば、ことさら重要なこととして、それは大学側がひそかに恐れていたことがまさにそのような方向に行くということである。人文・教養・芸術系の学生が学費切り下げを祝うにはまだ早く、まだこれは結論に至っていない。現在のところリーク等の域を出ず、2019年(注:初頭の予定)に正式に発表されるまではわからない。

 

学科によって学費が異なるという方向に進んでいるようである。現在の学費上限は9,250ポンドであり、これが6,500ポンドに下がるが、コストのかかる学科は13,000ポンド以上と倍の学費になることもありえるとされている。
これは、将来の収入が医学、自然科学、数学、工学を専攻した方が芸術・教養、人文科学系より高額になるという考えに基づいている。また、歴史学や英文学のように、芸術、人文科学系は、設備が必要であったり教育時間が長くなったりする自然科学系よりも安く済む、という考えからもきている。よって、全科目で学費が一様であるべきではなく、費用は適宜調整されるべきという議論が存在している。

 

多くの大学はこの提案に対し激烈な嫌悪を示すであろう。
大学は、芸術・教養、人文科学系を下層とする二層制度を作ることになり、下層の学科は資金不足に陥ると見るだろうとされている。また、このような制度は貧困家庭からの学生を医学や自然科学系から遠ざけ、他の安い学科に押し込めるという社会的に逆進的な仕組みとなるという反論があるだろうとしている。

 

学費とその返済金があまりにも高額であるという懸念から見直し作業を行わせているため、政府はそれほど高額とは見なされないような何かを考え付くことを迫られるだろう。また、EU離脱に向けて手一杯の政府が、国内で何か違いを見せることができるということを示そうとする時期でもある。
大学関係者は異なる学費段階といったような計画案をやめて別のことをするように求めるだろうし、そのため、今後数ヶ月で決断が近付くにつれ、学費の変更に関する意見交換会や先制攻撃を見込んでいるとされている。

 

教育省(DfE:Department for Education)は、18歳以上の高等教育の見直しは学生にとっての学費の価値を求めるものであるとしたが、見直し内容の見込みや事前情報に関してはコメントを控えた。

 

1ポンド≒147円(2018年11月2日)

 

BBC News:Tuition fees cut to £6,500 but higher for science?

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