【ニュース・イギリス】大学が成績のかさ上げへの対策に向け前進

 
2018年11月28日、英国大学協会(UUK:Universities UK)は、同協会と他の高等教育機関が、成績のかさ上げが生じているという見解に対して取り組み、学生の取得する成績とその成績の価値に対する国民の信頼を保証するため、成績分類システムの幅広い変更を計画していることを発表した。
 
今回発表された報告書はUUK、Guild HE(大学、カレッジ、継続教育カレッジ、専門職の教育機関などからなる、英国高等教育界の代表組織)、大学質保証機関(QAA:Quality Assurance Agency)が、英国質保証常任委員会(UKSCQA:UK Standing Committee for Quality Assessment、高等教育界主導による高等教育の質評価方法監視機関)のために、優秀な成績(First and Upper–second class degree)を取得した大学卒業生の数が増加した背後にある理由を調べたものである。
 
報告書は、教育や学習への追加投資や、学生の意欲の向上を含む幅広い要因が優秀な成績の増加に繋がっている可能性を示唆した。しかしこのように優秀な成績の増加傾向が続くことは、英国の大学の学位の価値の信頼性を損ない、雇用者や学生にとって成績分類が役に立ちにくいものとなる危険性がある。
 
同日、UKSCQAは、学位資格の価値を保護していくため、報告書の勧告が高等教育界によってどのように展開され、実行されていくかに関するフィードバックを得るために、英国全土にわたる協議作業を開始した。
 
学位の成績分類はそれぞれの機関の問題で、そして学位は、学者による評価、内部・外部からの評定や教育界全体の枠組みに基づいて授与される。
 
大学は、学位資格の価値を保証することや、学生が受け取るであろう結果への国民の信頼を保つことに専心している。従って、報告書は、学位資格の価値を保護していく活動につながるよう、大学は高等教育界全体にわたる意思表明を打ち出すべきだと推奨している。この意思表明には、下記のような約束が含まれる。

  • 機関レベルで、学位の成果に関するエビデンス、つまり外部機関が保証したデータ付きの、全ての成績段階の学生が示した技能と知識を見直し、公開すること。これにより、大学の運営機関は、その大学が自らの学位資格の価値を保護していることを保証することができるようになる。
  • それぞれの学位の成績分類にどのような成果の質が必要であるかを示すために、全大学で用いられる共通の判断基準に合意すること。
  • 学生の学位の最終的な成績分類を分かりやすい書式で決めるため、ある慣行が広く受け入れられている規範となぜ異なっているのかを含め、大学が使っている成績付けのシステムと過程とを説明し、公開すること。

 また、報告書の中では下記のことも記載されている。

  • 学位の成績分類は、いくつかの大学のランキングによって明確に特徴付けられている。学生獲得の競争が激しいところでは、大学にはランキングの中でよい成績を上げるための動機がある。協議作業の一環として、大学は、そうした動機が、ランキング内の上位成績の数と結び付いた組織の業績に、成績のかさ上げを誘発するような影響を招く可能性を減らすような処置を取るべきかどうかを検討することになる。
  • 大学は、成績の端数処理(例えば、純粋な素点の端数を処理して最も近い整数にすること)がいつ、どのように用いられるのか、そして単位の「手加減」(一般的には、低い点数に目をつぶったり、他の単位の成績を考慮に入れてあげたりすること)の慣行を継続すべきかどうか、再検討するべきである。
  • 大学は、学位の結果に関するデータを一般の人や大学が容易に比較できるようにする情報と方法を開発するために、HESA(Higher Education Statistics Agency、高等教育統計局)と協力すべきである。

 
UUK:Universities taking steps to tackle grade inflation

地域 西欧
イギリス
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