政府説明責任局（Government Accountability Office：GAO）は2017年12月4日、連邦学資援助申請に向けて大学生及びその家族が提出する個人情報に関して、教育省（Department of Education）の連邦学資援助局（Office of Federal Student Aid：FSA）及び大学による管理状況を検証した報告書「連邦学資援助 ～学生の情報を保護するために高等教育機関に対するプログラム管理・監督の改善が必要～（Federal Student Aid: Better Program Management and Oversight of Postsecondary Schools Needed to Protect Student Information）」を公表した。
本報告書は、
- ①FSA及び大学による、連邦学資援助プログラム管理のために収集した情報の利用状況の説明、
- ②収集した情報の管理・保護のためのFSAの方針・手続が連邦要件に準拠する度合いの特定、
- ③学資援助情報管理のために大学が策定した方針・手続の説明、
- ④FSAによる、大学が収集した情報を確実に保護する状況を確保する度合いの特定、
を目的としたもので、GAOは、教育省及びFSAの方針の検証及び職員との面接を行った他、無作為に抽出した大学560校を対象とした調査を実施した。
その結果、①に関しては、FSA及び大学では、学生・家族などから収集する情報は、学生の連邦学資援助プログラムやその他援助プログラムへの参加資格、援助受給者に対する学費の支払い、及び、ローン返済の状況や滞納されたローン返済の回収、などを判断するために利用されていることが明らかにされた。
また、②に関しては、教育省及びFSAは、連邦法に準拠して、学生の情報を管理・保護するための方針及び手続きを策定しているが、電子データを使用した手続きが完全に確立されていないこと、職員が定期的に研修を受ける状況が確保されていないこと、及び、義務付けられている教育省内での記録管理プログラム評価を実施していないことなどが、FSAによる手続きの有効性に影響を与えていることが明らかになった。また、学生情報の保護に関しては、FSAは、電子情報システムにおけるプライバシーリスクに関する分析を定期的に行っておらず、情報システム保護のための方針・手続きも、必ずしも現状に即している訳ではないことが判明した。
さらに、③に関しては、GAOが大学を対象として実施した調査結果によると、連邦学資援助プログラムに参加する大学の約95％は情報管理のための方針を策定しているが、記録保存手段・保存期間・廃棄管理等に関する方針の内容は様々であることが明らかにされた。
一方、④に関しては、FSAは大学による学資援助プログラム参加を監督するものの、大学における情報セキュリティプログラムの監督はFSAによる監督責任に含まれず、大学によるコンプライアンスを監督するために、FSAは、各大学の学資援助プログラムのレビューをリスク要因数に基づいて実施していることが明らかになった。
しかし、一部の大学では深刻なデータ漏洩問題があることが報告されているにもかかわらず、レビュー対象の大学を選択するにあたり、情報セキュリティプログラムを大学が実施しているか否かが見極められていないことが判明した。
さらに、教育省は、連邦学資援助プログラムに参加する条件として、学生情報を保護する能力の実証を大学に義務付けておらず、大学による学資援助情報の保護を監督するFSAの有効性が懸念される状況であることが明らかにされた。
これらの結果に基づいて、GAOは、FSAに対し、連邦学資援助記録の管理・保護と大学に対する監督を強化するために、7項目の対策を提案した。なお、FSAは、このうち5件に合意し、1件に一部同意し、残りの1件には同意しなかった。
なお、本報告書は、「FEDERAL STUDENT AID Better Program Management and Oversight of Postsecondary Schools Needed to Protect Student Information」（PDF:8.71MB）からダウンロード可能。
2017年12月4日
Government Accountability Office： Federal Student Aid: Better Program Management and Oversight of Postsecondary Schools Needed to Protect Student Information
