【ニュース・アメリカ】米国芸術科学アカデミー、大学卒業率向上を目的とした投資が経済に与える影響を検証

 
米国芸術科学アカデミー(American Academy of Arts & Sciences)は2017年10月24日、ムーディーズ・アナリティクス社(Moody’s Analytics)との協力の下で作成した、大学卒業率の向上が経済に与える影響を検証した報告書「大学卒業率向上による経済的インパクト(The Economic Impact of Increasing College Completion)」を発表した。
 
本研究結果は、大学生の卒業率向上を目的とした持続的投資は、長期的にみて個人の経済利益と国家の経済成長に繋がることを示唆している。米国芸術科学アカデミー会長のジョナサン・ファントン(Jonathan Fanton)氏は、短期的な結果が重視される中にあって、大学卒業率向上のための投資は、長期的な成果を創出するとコメントしている。
 
本報告書作成に関与した同アカデミーの学士課程教育の未来委員会(Commission on the Future of Undergraduate Education)は、大学入学者のうち、入学後6年以内に学位を取得した学生は全体の60%のみで、修了証もしくは準学士号取得を目指して大学に進学した学生においては、3年以内に学位・修了証を取得する割合は30%に留まることを明らかにしている。
 
本報告書は、奨学金による学資援助の拡大や交通費補助、アドバイザーへのアクセスなどを含む支援の強化により、大学卒業率の向上に繋がるとし、ニューヨーク市立大学(City University of New York)において、様々な支援を提供したことによって卒業率が約50%向上した例や、ジョージア州立大学(Georgia State University)において、支援のための介入が必要な時期と手段を判断するためにビッグデータを活用した例などを提示している。
 
また、ムーディーズ・アナリティクス社は、準学士号・学士号課程における卒業率向上を目的としてこれらのプログラムに対する投資を拡大した場合の支出とインパクトを評価するモデルを開発し、コストと利益を分析した結果、

  1. 投資を開始した初期は、学生がまだ在学中であるため、新たな支出が顕著に高く利益はほとんどない、
  2. 最初の10年間では、学位を取得した学生が労働力となる数が増加することにより、利益とコストがほぼ同じになる、
  3. 投資開始から11年目以降に、労働力となった教育を受けた米国人がより高い収入を得るようになり、利益が投資を上回る、などが明らかにされた。

なお、本報告書は、「The Economic Impact of Increasing College Completion」[PDF:1.67MB]からダウンロード可能。
 
2017年10月24日
 
American Academy of Arts & Sciences:Increasing College Completion as an Engine for Economic Growth
 

地域 北米
アメリカ
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