【ニュース・アメリカ】中程度のスキルが必要な職の求職者に大学学位保有を求める「学位インフレ」、企業にも労働者にも悪影響

 
ハーバード・ビジネススクール(Harvard Business School、マサチューセッツ州)、アクセンチュア社(Accenture)、及び、非営利機関のグラッズ・オブ・ライフ(Grads of Life)は2017年10月25日、報告書「学位による却下(Dismissed by Degrees)」を発表した。
 
本報告書は、中程度のスキルのみが必要な職への就職者に対し、大学学位保有を義務付けるという「学位インフレ(Degree Inflation)」による影響を分析したものである。「学位インフレ」傾向は最近米国で頻繁にみられるようになっているが、本報告書はこの傾向が、米国のビジネスに損害を与えるだけでなく、中程度のスキルしかもたない米国人数百万人に対するキャリアパスを閉ざすことになると警告している。
 
また、この現象は、就職も進学もしていない「オポチュニティ・ユース(Opportunity Youth)」と呼ばれる16~24歳の青年に特に影響を与え、就職・勤続機会を更に制限する可能性があるという。「学位インフレ」による影響を受けるのは、スーパーバイザー、サポートスペシャリスト、販売員、点検・試験官、事務職員、秘書・管理補佐職員などで、これらの役職の最終学歴条件を大学卒業とすることにより、大学学位を保有しない関連職務経験者の就職機会が奪われることになるとしている。
 
また、大学学位を保有しない関連職務経験者の生産性は大卒者よりも高いにも関わらず、大卒者を中程度スキルの職に採用することにより、適任者の採用が困難となり、離職率も高くなることが判明した。このような現状にありながら、雇用主の半数以上は経験の浅い大卒者に対し、学位を保有しない経験者よりも高額の給与を支払い、大卒者採用のために経験者を不採用としているという。
 
このようなスキルギャップに対応するために、本報告書が雇用主に提案する内容は以下の通り。

  • 組織・業界内で学位インフレの傾向のある中程度のスキルを必要とする役職を特定。
  • 大学学位に代わる基準を検討し、必要とされる具体的なハードスキル・ソフトスキルを特定すると共に、組織内外での研修プログラム・研修生制度・インターンシップなどといったシステムを開発。
  • 学位保有者と非保有者の採用に伴う隠れたコストを検証。
  • 資格に依存するだけでなく、適切な能力を持つ人材を維持する魅力的な企業となるための戦略に投資。

 
なお、本報告書は、「Dismissed by Degrees」[PDF:2.25MB]からダウンロード可能。
 
2017年10月25日
 

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