【ニュース・アメリカ】ニューアメリカ、高等教育が所得の不平等を強化する例を提示した研究論文データをさらに深く分析

 
無党派系シンクタンクのニューアメリカ(New America)は2017年10月26日、スタンフォード大学(Stanford University、カリフォルニア州)経済学教授のラジ・チェティー(Raj Chetty)氏らが主導する「機会均等プロジェクト(Equality of Opportunity Project)」が2017年1月に発表した研究論文「流動性成績表 ~世代間流動性における大学の役割~(Mobility Report Cards:The Role of Colleges in Intergenerational Mobility)」で提示されたデータを分析した報告書「上昇中か?画期的研究が高等教育におけるアクセス・成功・流動性に関して我々に伝えること(Moving on Up? What a Groundbreaking Study Tells Us about Access, Success, and Mobility in Higher Ed)」を発表した。
 
本報告書は、「機会均等プロジェクト」による論文が、富裕層家庭出身学生の大学卒業後の給与が低所得層家庭出身学生の給与を平均29%上回ることを始め、高等教育が所得の不平等を緩和するのではなく、更に強化している多数の例を提示しているにもかかわらず、論文発表の時期と新政権発足の時期が重なったために教育関連メディア・研究者から十分に注目されなかったことを受け、同論文で提示されたデータを更に深く分析した結果をまとめたものである。
 
主な結果は以下の通り。

  • データセットに含まれる大学381校のうち217校において、年収レベルが全体の下位40%に属する低所得層家庭出身学生数が、1999年~2013年の間に平均4.6%減少。一方、約3分の2の大学において、年収レベルが全体の上位20%に属する富裕層家庭出身学生数は同期間で平均5.4%増加。
  • プリンストン大学(Prince­ton University、ニュージャージー州)では、2017年秋学期在籍学生のうち低所得層学生を対象とした奨学金「ペルグラント(Pell Grants)」受給資格者の割合が約10年前の3倍となる22%という例外はあるものの、大半のアイビーリーグ大学では年収レベルが全体の下位25%に属する低所得層家庭出身学生が学生全体に占める割合は少なく、増加傾向なし。
  • データセットに含まれる著名公立大学32校のうち、約3分の2は富裕層出身学生の入学者数が20年前と比較して増加しており、それ以外の公立大学約200校でも同様の傾向。
  • 年収レベルが全体の下位40%に属する低所得層家庭出身学生が大学進学者全体に占める割合は、1999年~2013年の間に34%から25%に低下。一方、上位20%に属する富裕層家庭出身学生の割合は、同期間で33%から40%に増加。

 
なお、本報告書は、「MOVING ON UP?」[PDF:346KB]からダウンロード可能。
 
2017年10月26日
 
New America:Moving on Up? What a Groundbreaking Study Tells Us about Access, Success, and Mobility in Higher Ed
 
The Chronicle of Higher Education:Public Colleges Backslide on Access, Report Says
 

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
統計、データ 統計・データ
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