【ニュース・アメリカ】米国発祥の強力超高速レーザー技術、欧州・アジアなどの競合に押され気味

 
米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は2017年12月6日、超高速レーザーに関する報告書「強力超高速レーザーにおける機会 ~最も明るい光を目指して~(Opportunities in Intense Ultrafast Lasers: Reaching for the Brightest Light)」を発表し、米国における製造・医療・国家安全保障において様々な応用が可能な強力超高速レーザー技術は、競合国に押され気味であることを明らかにした。
 
本報告書によると、現在、強力レーザーシステムの80~90%は米国外に所在し、現在構築中の最高出力研究レーザーも全て海外に所在するという。同報告書は、超高速レーザー分野における米国の地位を向上させるために提案事項5点を提示しており、これには、エネルギー省(Department of Energy)による、レーザー科学・応用・技術支援を目的とした大規模ネットワークの構築や、大規模・オープンアクセス強力レーザー施設を少なくとも1件開発する計画などが含まれている。
 
これらの強力なレーザーは、米国発祥であるが、欧州及びアジアの研究助成機関が、共同研究や施設開発などへの投資に約10年前から力を入れ始めているという。同報告書を作成した委員会は、強力超高速レーザーは、科学を越えて、核兵器備蓄・産業・医療などにおいて幅広い応用が可能としている。例えば、エネルギー省の核兵器備蓄計画(Stockpile Stewardship Program)では、強力超高速レーザーの科学応用として、高エネルギー物質のX線撮影を行う高エネルギーX線の創出が行えるほか、製造業においては、正確な切断や、周囲の物質を損傷することなく物体に小さく深い穴をあけるために、これらのレーザーを利用することができるとしている。
 
現在、強力超高速レーザーの管理機関としての役割を果たす連邦省庁はなく、省庁間管理も米国では行われていないが、同分野における統合・調整を改善するために、同報告書は、国防総省(Department of Defense)、エネルギー省、米国科学財団(National Science Foundation:NSF)などといった研究省庁に対し、科学ステークホルダーを巻き込んで、研究ニーズに最適な施設及びレーザーパラメータを特定することを提案している。また、エネルギー省に対しては、強力レーザーの総合省庁間国家戦略の策定を主導することを要請している。
 
なお、本報告書は、「OPPORTUNITIES IN INTENSE ULTRAFAST LASERS Reaching for the Brightest Light」から閲覧可能。
 
2017年12月6日
 
National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:New Report: U.S. Has Lost Its Dominance in Highly Intense, Ultrafast Laser Technology to Europe and Asia
 

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
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