【ニュース・アメリカ】教育省、大学による虚偽広告などの被害を受けた学生からの学資ローン返済免除申請を部分的にのみ認める方針を発表

 
教育省(Department of Education)は2017年12月21日、大学による虚偽の広告などに騙されて入学した連邦学資ローン利用者に対し、当該プログラム卒業者の年収に応じて負債返済免除を部分的にのみ認める計画を発表した。これは、オバマ政権下では、2015年に経営が破綻した営利大学のコリンシアン大学(Corinthian Colleges)の卒業生などに対して100%返済免除が認められていたことから大きな方向転換となる。
 
教育省は、申請者約1万2,900人に対し、今後数週間以内に負債返済の全額もしくは一部免除を通達する書簡を送付予定である一方、約8,600人には申請却下の書簡を送付するという。免除額の割合の決定には、当該プログラム卒業者の典型的な年収と、それと同等プログラム卒業者の一般的な年収とを、教育省が収集した「十分な収入のある就職(gainful employment)」データに基づいて比較し、当該プログラム卒業者の年収が同等プログラム卒業者の一般的年収の49%以下である場合は全額返済免除、50~59%の場合は50%免除、60~69%の場合は40%免除、70~79%の場合は30%免除、80~89%の場合は20%免除、90%以上の場合は10%免除とした。
 
これに対し、学生擁護団体は方針の転換を強く批判しており、大学アクセス・成功研究所(Institute for College Access and Success)副会長のデビー・コクレーン(Debbie Cochrane)氏は、ベッツイー・デボス長官(Betsy DeVos)が、学資ローン返済免除の「混乱した手続き」をさらに混乱させる方向に導く誤った方針転換とした他、大学に騙され、価値のないプログラムに学資ローンを利用し、専攻分野以外の仕事や最低賃金の仕事に就業する学資ローン利用者を不公平に取り扱うことになると批判した。
 
また、オバマ政権下で教育省幹部職を務め、現在はシンクタンク「ニューアメリカ(New America)」高等教育政策ディレクター代理を務めるクレア・マッキャン(Clare McCann)氏は、一部返済免除の判定方法に関して不明な点が多いことを指摘し、枠組み策定プロセスの適切性に関しても疑問を呈した。さらには、同じコリンシアン大学の元学生による申請に、審査時期によって異なる基準を適用することが法的に公平であるか否かも疑わしいとした。
 
なお、2017年11月には、民主党連邦議員26人が、大学を卒業したものの学資ローン返済のために十分な収入が得られない学生を保護するために収集された「十分な収入のある就職」データが、教育省の単独の判断により、学資ローン返済免除の判定という本来の目的とは異なる用途で使用されたことに関し、デボス長官及び教育省学資援助局(Office of Federal Student Aid)最高執行責任者のウェイン・ジョンソン(A. Wayne Johnson)氏に対して異議を唱える内容の書簡を送付している。
 
なお、教育省による発表は、「Improved Borrower Defense Discharge Process Will Aid Defrauded Borrowers, Protect Taxpayers」から閲覧可能。
 
また、民主党連邦議員がデボス長官とジョンソン氏に送付した書簡(PDF:2.91MB)は、<https://www.help.senate.gov/imo/media/doc/BD%20Limiting%20Relief%20Outgoing%2011Nov2017.pdf>からダウンロード可能。
 
2017年12月21日
 
Inside Higher ED:Partial Relief for Defrauded Borrowers
 

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