【ニュース・アメリカ】大学リメディアル教育要件を撤廃・変更するイニシアティブ、学位取得率の大幅向上には繋がらず(8月5日)

ハーバード大学(Harvard University)教育大学院に所属する教育学教授で経済学者のトーマス・ケーン(Thomas Kane)氏らは、大学卒業率停滞の原因の1つと考えられているリメディアル教育改革の一環としてテネシー州で行われた、高校で大学リメディアル授業を提供するという取り組みを検証した研究結果報告書「高校における大学リメディアル教育 ~テネシー州全域におけるプログラムからの証拠~(College Remediation Goes Back to High School: Evidence from a Statewide Program in Tennessee)」を発表した。
 
これによると、フロリダ州・テキサス州・カリフォルニア州が州の方針として導入した、大学リメディアル教育要件を撤廃・変更するイニシアティブは、学位取得率の大幅向上には繋がらないことが判明した。
 
本研究は、数学の大学リメディアル授業を高校で提供するという、2012年に立ち上げられたテネシー州全域での取り組み「円滑な連携と統合学習支援(Seamless Alignment and Integrated Learning Support:SAILS)」プログラムに関し、学位取得率向上への影響を分析している。SAILSプログラムでは、11年生時に受験したACT試験結果に基づき、数学のリメディアル授業が必要と判断された生徒に対し、テネシー州のコミュニティカレッジで提供されるリメディアル授業をモデルとした数学の授業を、12年生時にオンラインと対面授業のハイブリッド講座として受講させている。
 
ケーン氏らによる分析の結果、高校在学中にSAILSプログラムに参加した学生は、そうでない学生と比較すると、大学2年修了時までに平均4.5単位を余分に取得していることが判明した他、数学の有用性の理解度が高まるなど、大学準備としてのプラス面が確認された。
 
しかし、その一方で、リメディアル教育要件の撤廃が、準学士号もしくは修了証の2年以内の取得に顕著な影響を与えることはないことも判明したという。ケーン氏は、同研究結果を現時点で得たことにより、取り組みの方向転換が可能になるとコメントしている。
 

なお、本報告書は、こちらからダウンロード可能。
 

Inside Higher ED:
Remedial Education Fixes Won’t Cure Completion Crisis

地域 北米
アメリカ
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