【ニュース・アメリカ】ムーディーズ投資家サービス社、2018年の米国高等教育の展望を「安定」から「マイナス」に格下げ

 
ムーディーズ投資家サービス社(Moody’s Investors Service, Inc.)は2017年12月5日、2018年の米国高等教育の展望を、「安定(stable)」から「マイナス(negative)」に修正した。
 
これは、事業収益総計の増加が緩やかであるのに対し、さらに大幅な支出増が見込まれるためで、同社副社長のスーザン・シャファー(Susan E Shaffer)氏によると、4年制大学の事業収益総計の年間増加率は約3.5%で、支出増加率の約4%よりも低く、大学医学センターを除くと、高等教育セクタ全体での収益増加率は3%未満となることが見込まれているという。
 
また、私立大学の業績が公立大学の業績を上回り、少なくとも全体の15%の大学において、収益増加の鈍化に対応するために支出削減が余儀なくされると予測されている。さらに、授業料収入、研究助成、及び、州政府からの助成の増加は継続して抑制され、公立大学における正味授業料収入増は2~3%に留まるとみられている。
 
一方、私立大学では、正味授業料収入は3~3.5%増と予測されているが、小・中規模大学は、公立・私立を問わず、総合大学と比較すると授業料収入増加率が低くなると考えられている。この他、連邦政府の政策変更による影響に対して脆弱で、税制改革は慈善家からの投資及び大学基金に悪影響を与える他、大学院生の授業料支援関連の変更は、大学院在籍者数及び研究レベルに悪影響を与えることになる。
 
それ以外にも、2018年には高等教育法(Higher Education Act)再授権が行われる可能性があり、低所得層学生向け連邦奨学金「ペルグラント(Pell Grant)」及び連邦直接ローンプログラムの変更により、大学の手の届きやすさと進学率に影響が与えられるとも考えられており、学資援助が削減された場合は、さらに正味授業料収入増が抑制されることになる。
 
なお、ムーディーズ社は、事業収益総計増加率が少なくとも3%を超えて支出増加率を上回り、学生の需要の継続的安定と強力な現金・投資レベルが確認された場合、見通しを「安定」に修正する可能性がある。
 
2017年12月5日
 
Moody’s Investors Service, Inc.:Moody’s: US higher education sector outlook revised to negative as revenue growth prospects soften
 

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
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