【国際協力員レポート・ドイツ】大学事務職員に求められる役割に関する考察-日独の大学事務職員の業務比較を通して-

社会が大きく変化する現代において、日本の大学を取り巻く環境もまた大きく変化している。その一つの例として、大学の国際化が挙げられる。「大学改革」の名のもとに、各大学がさまざまな取り組みを実施している。このことが意味するのは、各大学において、これまでになかった種類の業務が発生しており、これに取り組む教職員が存在するということである。このような状況において、大学の事務職員が携わる業務の幅もまた変化している。これに伴い、事務職員に求められる能力や役割も変化しているといわれる。
ところで、日本の大学の教員と事務職員の関係は、しばしば「車の両輪」に例えられる。松下(1992:40)によれば、「車の両輪」とは、慶應義塾大学の小泉信三氏が1960年に刊行された同大学の「塾監局小史」の巻頭言にて「教授職員と行政職員とは車の両輪である」と述べたことが始まりである。今日においても、教員と事務職員とはいずれも欠くことのできない対等なパートナーであることを強調しつつ、それによって、事務職員を啓発することを試みる文脈で用いられることが多いように思われる。
筆者がこの表現に初めて触れたのは、平成21年10月3日に東北大学で開催された国立大学マネジメント研究会東北地域交流会においてであった。東北大学の事務職員として働き始めてまだ3日目だった筆者は、大学職員育成をテーマとしたこの交流会の議論が自分自身のこれからの仕事それ自体についての議論であるとはわからずに、それでもどうやら重要であるらしいと、一聴衆として、受け止めた。
しかしながら、大学での業務経験を重ねるにつれ、果たして教員と事務職員を「車の両輪」に例えることは本当に妥当だろうかと疑問に感じるようになった。例えば、筆者が所属大学で経験した派遣交換留学の業務についても、「募集要項を準備する」「募集の案内を出す」「応募書類を受け付ける」「面接選考の準備をする」等という部分は職員が担当し、「書面選考をする」「面接選考をする」という部分は教員が担当する(詳細については、第4 章で述べる)。教員と事務職員の業務役割は、明らかに性質が異なるのである。つまり、「車の両輪」とすると、あまりにも左右の釣り合いのとれない車になってしまう。
果たして、大学の事務職員の役割とは何であるか。
本稿では、近年の日本の大学の事務職員に関する議論を踏まえつつ、その役割について、ドイツの大学の事務職員との比較において検討する。しかしながら、大学の事務職員の業務は多岐にわたり、一般化して論じることは難しい。そのため、筆者の、所属大学における経験を踏まえ、派遣交換留学関連業務における事務職員の役割に焦点を絞る。
次章では、まず、本稿で取り扱う日本の大学の事務職員について定義するとともに、大学の事務職員について、これまでどのような議論が展開されてきたか/いるかを確認する。続いて、第3章では、ドイツの大学の事務職員とはどのような立場の職員であるかを検討する。第4章では、日本の大学の具体的な事例として、筆者の所属大学である東北大学の事例を取り上げる。第5章では、ドイツの3つの大学における具体的な事例を取り上げる。最後に、日独の事務職員の役割を比較し、日本の大学の事務職員の役割について考察する。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 半田 史陽
【所属】 東北大学
【派遣年度】 2017年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ボン研究連絡センター

地域 中東欧・ロシア
ドイツ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事
人材育成 職員の養成・確保
レポート 国際協力員