【ニュース・中国】省費師範生新たな育成モデルを模索

 
農村振興戦略の実施と農村教育の振興のカギは、農村教員陣の質的向上にある。吉林師範大学は、近年、省費師範生の育成過程で直面した現実的困難に対応するため、農村の小中学校における教育・教学実践の需要を方向性とし、師徳素養と教学素養の向上を重点とし、段階的実践を媒体とし、螺旋式一体化教育の実践を支えとする「二つの素養・三つの段階・四次元のスパイラル」という新たな育成モデルを打ち出した。
 
二つの素養:師徳素養+教学素養
 
師徳は教員の素養の核を為すもので、公費師範生が教員という職業の理想を実現するための重要な保障となるものである。政策による指導のもと、吉林師範大学は公費師範生の育成過程で、積極的に「立徳樹人(品格のある人材の育成)」の基本任務を全うし、師徳養成教育を強化し、師範生が崇高な理想を打ち立てるのを導き、理想・信念の教育、健全な心を育む教育を重視しており、師徳養成教育を教員養成の最優先事項としている。
 
また、一連の特色ある専門科目とファシリテータートレーニングを開設し、各種の授業を受け持つ教員の職業資質向上に資する教育資源を十分に掘り起こすことにより、専門性を身に付け、全ての教員養成専門の講義を教員としての職業能力を磨くモデル授業とした。
 
それと同時に、師範生が早く適切に実際の教育実践の場に溶け込めるようにするとともに、対話・交流、批評・振り返りといった手段によって自らの教学実践ノウハウを形成し発展させることができるよう、実践に基づく双方向式教育の科目も設置した。「教員言語」、「教員職業基本技能」、「学科科目と教学論」を必修科目に加えると同時に、教員養成に関する選択科目の単位配分を高め、選択科目の中から教員養成系科目を四つ選択し、必修・選択合わせて17単位分の教員養成系科目を履修することを学生に求めている。
 
第7学期に開設する教員職業能力向上実践科目は、関連学科の教員を講師に招いて、座談会やモデル授業など種々な形で学生を指導・訓練し、学生の実践/実戦能力の向上を図る。カリキュラムの方向性をさらに具体化し、科目の実践性と実務性を強化し、明確に段階化された教員職業能力育成システムを構築した。
 
三つの段階:2.5+0.5+0.5+0.5
 
広く豊かで確かな専門基礎知識と教育基礎理論を習得し、教学活動と教育管理を行っていくための効果的な教学実践技能と基本経験を得、農村の小中学校での教学業務への高い適応能力を備えた農村小中学校教員を養成するため、吉林師範大学は次のような段階的実践育成モデルを打ち出した。
 
「2.5」とは、学生が2年半かけて一般教養科目、専門科目、教員養成科目を履修し終えることを指す。一つ目の「0.5」は、第6学期の11~18週目のうち、2週間は校内での模擬実習、6週間は実践基地での教育実習を行うことを指す。二つ目の「0.5」は、第7学期に校内で教員技能向上実践訓練を受けながら、卒業論文を完成させることを指す。三つ目の「0.5」は、第8学期全体を利用して実践基地または受け入れ校で実習を行い、同時に就職に向けた準備も行うことを指す。
 
吉林師範大学は「社会奉仕との結合、職業選択との結合」を旨とする社会実践を重視している。そのニーズを満たすため、テーマが明確で、互いに関連性を有し、斬新な形で、魅力ある社会実践考察「モジュール群」を開発し、これを実践基地に取り込むことで、成長過程も学年も専門も長所も異なる公費師範生らに対し、それぞれの個性に合った成長の場を提供している。
 
また、現地の教育の実情に合った師範生の教学能力の育成をより的確に行い、三者契約を結んでいる県(市)のニーズと公費師範生の教育・育成をよりよい形で連動させ、師範生が卒業後即戦力として教育現場で仕事ができるようにするため、吉林師範大学は積極的に三者契約を結んでいる県(市)との意思疎通を図り、現地の教育局に学生の2度の実習を手配してもらうよう働きかけを行っている。
 
四次元のスパイラル:体験-レベルアップ-実践-振り返り
 
師範生の育成の全過程で、吉林師範大学は一貫して理論教育と実践教育の同時化並びに連続的かつ高度な融合を強調してきた。吉林師範大学は、実習や実践の中で見られる問題を育成システムに反映させ、「段階的で、指導がきめ細かく、きちんと振り返りをする」スパイラル式実践を展開しており、従来のワンステップ式教育実習/実践を三つの実践段階に分けてきめ細かな育成を行うという持続可能な実践に発展させた。
 
まず、同一の実践段階において体験者の視点からふさわしいシチュエーションを設定し、見学・ロールプレイ・意見交換・研究などの方法を通じて、積極的に考え、研究や問題解決に加わっていくよう学生を導き、「体験-レベルアップ-実践-振り返り」による「ミニスパイラル」式の実践への適応を図っていく。
 
それぞれの実践段階で、学んだ「知識」の数値化の難易度に基づいて、授業内容の深さや実践の応用範囲の広さの割合を測り、理論分析と価値思考を、実践行動をつなぐ横糸とし、教学計画の作成手順や、編集・組み合わせの論理性の高さ、潜在的な科目に対する思考の深さを肌で感じられるようにし、学生の学習・探究への興味を高め、問題解決のプロセスで実践の振り返りを実施することにより、学生のアイデンティティーや帰属感を強め、品格と素養を高め、品格教育と専門教育の完全な形での結合を実現する。
 
また、「体験-レベルアップ-実践-振り返り」のダブルスパイラル式実践プロセスにおいては、全過程で「指導教員二人制」を実施する。吉林師範大学は、本学教員と農村の小中学校の優秀な教員による指導教員チームを結成し、積極的に実践基地の中堅教員を招いて学生にモデル授業や教学講座を実施してもらっている。
 
地方の師範学校は省費師範生を育成するにあたって、地方への立脚、学生本位の徹底と追求、方向性の確定と持続的改善を一貫して堅持するとともに、師範教員養成の実用性と教育・教学成果の重要性の再考を堅持し、「機械の製造」から「人間の育成」という教育論理の根本的転換の実現に努め、「理想と信念、道徳と情操、確かな学識、仁愛の心」を持ち、全方位的・全プロセスの地方の基礎教育に奉仕する高い資質を持った応用型の専門的な農村教員の育成を常に心がけなければならない。
 
(作者:張作嶺 吉林師範大学副学長)/『中国教育报』2019年09月02日第5版
 
2019年9月2日
 
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地域 アジア・オセアニア
中国
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