【ニュース・フランス】フランスの出生率下がる。フランスの例外は終焉か?

 
2018年1月16日、INSEE(フランス国立統計経済研究所)はフランスの人口動態に関する最新データを発表した。それによれば、ここ3年続けて、出生数が減少している。ここ20年ほどの間、出生数が増加し、平均余命に変化はなかったものの、死亡数は増加した。したがって、出生数と死亡数の差は大幅に減少してきた。これまでヨーロッパ諸国で例外的だといわれてきたフランスの出生率はここに来て、ヨーロッパの標準値に近づいてきた。その背景には不安定な労働環境、家族政策、生活様式と多くの原因がある。
 
フランスの人口が6,720万人を維持し、微増するとしても、このところ、そのピッチは低下している。出生数から死亡数を減じた数が年々の人口増加数となるが、2008年-2013年には+0.5%、2015年-2016年には+0.4%だったものが、最近では+0.3%になった。この出生数から死亡数を減じた数でみると、2017年の164,000人は戦後のデータの中でも最少となっている。出生率の減少と死亡率の増加という2つの原因がある。これまで高い出生率は国の現状、そして将来が健全で明るい証拠とされてきた。出生数の減少はここ3年連続した現象で、2017年に生まれた新生児は767,000人であったが、これは2016年に比べ17,000人少なく、2015-2016年における減少よりも顕著に大きな減り方である。
 
この現象は、出産適齢期の女性人口が減っていることからも部分的には説明できるが、第一の原因は出生率の低下である。1人の女性が生涯に産む子供の数が2016年には1.92人、2012年では2.0人であったものが、昨年は1.88人まで低下している。世代を超えて人口を維持するための「人口置き換え水準」は2.1程度であるから、そこから大きく低下したことになる。とりわけ、25歳から34歳の女性が以前よりも子供を産まなくなったことが大きく影響している。
 
家族手当の削減
では、なぜ出生率が低下したのか、その変動を説明するモデルは存在しないが、Paris-Sorbonne大学の人口地理学を専門とするLaurent Chalardによれば、個人的な決断によるもので、精神状態に依存するという。この意見に研究者たちは同意している。2008年のリーマンショックは、多くの先進国で出生率低下を引き起こしたと、パリ・自然史博物館教授のGilles Pisonは分析している。フランスにおいては、社会・経済政策の影響でこの一連の事象の帰結は遅れて現れた。オランド政権の5年間における家族手当の削減は出生数を減らすことになった。また、それに続くマクロン政権も、家族手当を受けるための収入上限額を下げたことから、中流の若い夫婦家庭における出生数低下を招くだろう。2012年以来、50,000人分の託児所が開設されたが、この数は当初予定された275,000人分に比べ遥かに少ない。これらの要素はしっかりと出生数減少に影響している。
 
これらの減少はここ40年間の家族政策を忠実に反映している。2012年に実施された政策はその後、2016年になってその影響が出始め、2017年にはそれが如実なものとなった。また、地方自治体による子供支援のための受入施設の縮小の影響を忘れてはならない。家庭生活と職業生活を両立させるというのはますます困難になっている。
 
この出生数が低下している原因の仮説として、若者は以前よりも就学期間が長くなり、したがって結婚年齢も遅く、その結果第一子を設けるのも遅くなるというものである。実際、女性が育児に携わる年齢は10年前の29.8歳から30.6歳と高くなっている。労働市場における不安定性は若者に子供を作ろうという意識を遠ざけている。彼らは家庭を設けることよりも、まず仕事を安定させることを優先している。
 
【諸データ】
出生数:1957年当時851,500人だったものが、2017年には767,000人となった。
死亡数:1957年当時542,200人だったものが、2017年には603,000人となった。したがって、その差は325,900人(1960年)、182,000人(1976年)、302,400人(2006年)、そして164,000人(2017年)と小さくなった。
 
女性1人が生涯に産む子供の数は、1995年の1.73人から上昇を続け、2010年の2,03人をピークに下り坂となり、2017年現在、1.88人となっている。これはアイルランドの1.90人(2016年)に次いでおり、英国の1.80人(2015年)、ドイツ1.50人(2015年)、イタリア1.35人(2015年)、スペイン1.34人(2016年)を大きく上回っている。
 
2017年の異性間婚姻数が22,100組、異性間民事連帯契約(PACS)数が185,000組となっている。
 
平均寿命は男性では2005年に76.7歳であったものが、2017年では79.5歳となっており、女性では2005年に83.8歳だったものが、2017年、85.3歳となっている。したがって、男女間における平均寿命の差は小さくなっている。
 
2018年1月16日
 
Le Monde:Natalité  : vers la fin de l’exception française
 

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統計、データ 統計・データ
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