2016年9月21日、Times Higher Education(THE)誌が“World University Rankings 2016-2017”を発表した。
評価指標は昨年同様、5つのカテゴリーに分類される13の指標を用い、研究大学の主たるミッションに関わる活動を横断的に評価している。
- 教育(学習環境)【30%】
評判調査(15%)、教員1人当たり学生数(4.5%)、博士号/学士号の取得者比(2.25%)、教員1人当たりの博士号授与数(6%)、教員1人当たりの大学の収入(2.25%) - 研究【30%】
評判調査(18%)、研究費収入(6%)、研究者1人当たりの発表論文数(6%) - 被引用論文(研究の影響力)【30%】
論文1本あたりの平均引用回数(2015~2016年度は、共著者1,000人以上の論文を除外していたが、今回は新たな分数カウント方法を導入することでこれらの論文も対象とした。) - 国際性(職員、学生、研究)【7.5%】
留学生/自国出身学生の割合(2.5%)、外国人教員/自国出身教員の割合(2.5%)、国際共著論文の割合(2.5%) - 産業界からの収入(知識移転)【2.5%】
教員1人当たりの産業界からの収入
※なお、収入額、論文数等の評価に際しては、各大学の分野構成や各分野の特性に応じた標準化がなされている。(評価方法詳細を参照。)
オックスフォード大学がTHE世界大学ランキングにおいて、英国大学で初めて1位となり、5年連続1位であったカリフォルニア工科大学は2位となった。オックスフォード大学の成功は、ランキング指標の主要4項目(教育、研究、被引用論文、国際性)において改善が見られたことにあるが、特に、研究費収入を含む大学の総収入がスタッフ数に比べて急速に伸び、研究のインパクトが大きくなっていること、及び海外の優秀な頭脳をうまく呼び込んできたことにある。
国レベルで見ると、アジア諸国が際立っている。香港中文大学、韓国科学技術院の2つの大学が新たにトップ100入りし、さらに4大学(香港市立大学、中国科学技術大学、復旦大学、香港理工大学)がトップ200に入った。また、中国の主要2大学が順位を上げ、北京大学が29位(昨年42位)、清華大学が35位(同47位)となっている。アジアのトップはシンガポール国立大学で、過去最高の24位となった。アジア全体で見ると、トップ200位入りしたのは、昨年の15大学から19大学に増えたが、日本は東京大学の39位(昨年43位)、京都大学の91位(同88位)のみである。
全体としては、200以内に大きな変動はなく、国別のランク入り状況は、米国が63大学でトップ、英国32大学、ドイツ22大学、オランダ14大学と続く。
英国国際教育研究所の研究評価担当副所長であるRajica Bhandari氏は、“アジアの大学が急上昇している3つの主な要因は、人口の急増により高等教育の必要性が増していること、政府が大学に対し多額の投資をしていること、及び各大学が自己改善していることである。また、西洋の大学で学んで自国に帰った多くのアジア人研究者が、自国の高等教育部門を変えるということが実際に始まっている。”と述べた。
Times Higher Education:World University Rankings 2016-2017: results announced
THE World University Rankings 2016-2017
2016 | 2015 | University | Country | 総合点 |
△1 | 2 | University of Oxford | UK | 95.0 |
▼2 | 1 | California Institute of Technology | USA | 94.3 |
3 | 3 | Stanford University | USA | 93.8 |
4 | 4 | University of Cambridge | UK | 93.6 |
5 | 5 | Massachusetts Institute of Technology | USA | 93.4 |
6 | 6 | Harvard University | USA | 92.7 |
7 | 7 | Princeton University | USA | 90.2 |
8 | 8 | Imperial College London | UK | 90.0 |
9 | 9 | ETH Zurich(Swiss Federal Institute of Technology Zurich) | Switzerland | 89.3 |
△=10 | 13 | University of Californi, Berkeley | USA | 88.9 |
=10 | 10 | University of Chicago | USA | 88.9 |
12 | 12 | Yale University | USA | 88.2 |
△13 | 17 | University of Pennsylvania | USA | 87.1 |
△14 | 16 | University of California, Los Angeles | USA | 86.6 |
▼15 | 14 | University College London (UCL) | UK | 86.5 |
▼16 | 15 | Columbia University | USA | 86.1 |
▼17 | 11 | Johns Hopkins University | USA | 85.9 |
△18 | 20 | Duke University | USA | 84.7 |
▼19 | 18 | Cornell University | USA | 84.6 |
△20 | 25 | Northwestern University | USA | 83.7 |
△前年より上昇 ▼前年より下降
上位400位入りした日本の大学
2016 | 2015 | University | 総合点 |
△39 | 43 | University of Tokyo | 74.1 |
▼=91 | =88 | Kyoto University | 61.2 |
201-250 | 201-250 | Tohoku University | – |
251-300 | 251-300 | Osaka University | – |
▼251-300 | 201-250 | Tokyo Institute of Techonology | – |
301-350 | 301-350 | Nagoya University | – |
△351-400 | 401-500 | Kyushu University | – |
△351-400 | – | Toyota Technological Institute | – |
△前年より上昇 ▼前年より下降
国・地域別上位400位入り大学数/上位20ヶ国とその変遷
順位 | 国・地域名 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 |
1 | United States | 109 | 112 | 108 | 106 |
2 | United Kingdom | 51 | 46 | 45 | 49 |
3 | Germany | 37 | 35 | 28 | 25 |
4 | Australia | 23 | 22 | 20 | 19 |
=5 | Canada | 17 | 18 | 18 | 16 |
=5 | France | 17 | 15 | 11 | 11 |
7 | Italy | 16 | 18 | 17 | 15 |
8 | Netherlands | 13 | 13 | 13 | 13 |
9 | Sweden | 11 | 11 | 10 | 10 |
10 | South Korea | 9 | 8 | 9 | 7 |
=11 | Switzerland | 8 | 9 | 8 | 8 |
=11 | Japan | 8 | 6 | 12 | 11 |
=13 | China | 7 | 8 | 12 | 8 |
=13 | Belgium | 7 | 7 | 7 | 7 |
=15 | Denmark | 6 | 6 | 5 | 5 |
=15 | Finland | 6 | 6 | 7 | 5 |
=15 | Hong Kong | 6 | 6 | 6 | 6 |
=18 | Spain | 5 | 5 | 6 | 9 |
=18 | Republic of Ireland | 5 | 6 | 5 | 5 |
=20 | Austria | 4 | 5 | 5 | 6 |
=20 | New Zealand | 4 | 3 | 5 | 5 |
=20 | Norway | 4 | 4 | 4 | 4 |
【関係機関の反応】
○ラッセルグループ(Russell Group)
ラッセルグループ事務局長のWendy Piatt氏は次のように述べた。“ラッセルグループの大学はよく競い合い、12大学がトップ100入りし、そのうち3大学はトップ10に入った。一方で、より多くの中国の大学がトップ200に入り、ドイツや日本の大学は多額の投資の恩恵を受けるなど、競争相手は我々を追い立ててきている。EU離脱によってもたらされる不確実性がある中、英国の研究・イノベーションへの投資を増やし、我々の大学がトップの地位を守り、英国経済を向上させられるようにすることがより一層重要である。我々が迫り来る競争相手を食い止め、成功し続けるためには、英国が優秀な研究者や学生を世界中のどこからでも受け入れるという姿勢を見せなければならない。また、全てのランキングになにかしらの制限があるため、大学や学位課程の質を判断するのに単独で用いられるべきではない。どのランキングも特定の大学の全ての強さを捉えることはできない。”
Russell Group:THE World Rankings 2016
【メディア報道】
○ガーディアン紙:オックスフォード大学が英国初の世界ランキングトップに
オックスフォード大学が世界ランキングで1位となり、英国の大学初の栄誉を勝ち取った。ケンブリッジ大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンは、それぞれ4位、8位となった。しかし、英国のEU離脱決定が、こうした安定を揺るがし、欧州大陸の大学との連携を妨げるなど、英国の高等教育機関に脅威を与えるという警告もなされている。また、外国人学生に英国大学への進学をためらわせることにもなる。
Justine Greening教育大臣は、“英国には世界最高クラスの大学がいくつもあるが、英国の大学が初めて1位となったことは素晴らしいことである。この成功が続くことを期待するとともに、国内のどこにいる学生にもそれに触れる機会を与えたい。そのために我々は高等教育機関が質の高い教育と、学生と雇用者双方が求める技術を提供できるような改革を進めているところである。”と述べた。
The Guardian:Oxford becomes first UK university to top global rankings