【ニュース・イギリス】成績のかさ上げへの取組

 
2019年7月11日、学生局(Office for Students:OfS)は学位取得時における成績の価値が下落しているとの報告を行った。
 

学位を取得する人が増え、その中でも特に優等学位(※)であるFirst及び2:1の成績を取得する人数が増えており、学位基準の信頼性に関する国民からの関心の高まりは当然のことである。各界のリーダーによって一般的に知られるようになり、全国メディアで取り上げられてきた成績のインフレについての懸念は、雇用主と将来の学生になる若者の観点から大学教育の価値を落とす恐れがある。したがって、我々が成績等級の信頼性に関する世間からの信頼をもう一度取り戻し、維持することが不可欠である。
 
このことが、OfSの規制目標の一つが、成績等級が長期に亘ってその価値の保持を保証することの理由である。今回発表した成績等級における傾向の新たなデータは、そのプロセスの一つである。我々は、透明性が重要な規制手段であるため、個々のプロバイダーや部門全体に対して、経年経過に関するデータを公開する。透明性は、重要な規制手段である。それは重要問題として注意を集め、高等教育機関全体にそのやり方についての疑問を促す。
 
我々がこのようなデータを公開するのは二度目である。2018年12月に、2017年までの分析結果を公開した。7月11日に我々は2018年も含む分析結果を公開した。必然的に、データにはタイムラグが生じる。そのため新たなデータは12月の行動要求よりも前のものであり、これらの複雑な問題に対応する部門による正しい努力が実を結ぶかどうか見通すには早すぎるのである。
 
そして、独立した高等教育機関は、我々が成績基準を維持されていることを証明する部門を支援することを求めている部門や学生団体と協力して、基準を設置し維持する責任を有することを認識しているのである。
 
我々は英国質保証常任委員会(UK Standing Committee for Quality Assessment:UKSCQA、高等教育界主導による高等教育質評価方法監視機関)が、一連の分類データを「セクター認識基準」として合意し、成績評価の価値を守るための措置を講じたことを歓迎する。これらの措置には、評価が学生を伸ばし、挑戦を促し、レビューすること、最終成績分類がどのように算定されているか説明し、最終試験のシステムを支援し強化すること、更なるデータを公開すること、学生の成績結果に関する分析を含んでいる。我々は、OfSがいかに、そして、いつ、規制枠組みの中でこれらの新たな部門主導による活動の一部を実施するかについて、これからの数ヶ月間相談する予定である。
 
それまでの間、我々は今回の分析について注意深く検討する。分析結果は、事実上すべての高等教育機関によって授与されたFirst学位の割合に関して、統計的に大きな変化があったことを示している。我々の分析は、学生の特性の変化の幅を考慮しているが、その増加の割合はこれらの特性の変化によって説明できないことを示している。全分野に亘って、最優秀成績の占める割合が、13.9%と予期せぬ上昇をしている。我々は、異なる背景の学生間の成績達成の差を埋めることが、この上昇を説明できるわけではないと分かっており、証拠を重んじる規制当局として、我々は説明できないままになっている上昇の要因に関する理解を改善したいと考えている。
 
全大学、カレッジ、その他登録された高等教育機関が、学位の基準を維持するための役割を果たしているか確認するため、2010-11学事年度に学位授与の権利を持つこととなった機関、2010-11学事年度と2017-18学事年度の間にFirst学位の割合がもっとも増加した機関に我々は尋ねたい。
 
特に焦点を当てる機関は、

説明できないほどFirst学位を増加させた機関、
もしくは、2010-11学事年度と2017-18学事年度での間に、First学位を説明できないほどの割合で増加させた機関。

高等教育機関がこれらの増加をどのように説明するかを我々が理解するのを助ける、さらなる情報を提供するように、我々は高等教育機関にお願いする。我々は、例えば、成績授与機関が成績等級の算定方法に最近変更を加えたかどうか、もしくは、スタッフ、教育、サービス、施設への投資など説明できない増加を確実に説明できるほかの証拠を成績授与機関が見つけたのかどうかについて理解したい。我々は、また、アカデミックガバナンスの取り決めが適切で効果的であることを保証するために、統治機関が実施した措置にも関心がある。
 
この追加情報を求める際に、我々が公的データにて確認できる潮流が、これらの成績授与者による不正を指し示すと暗に意味するわけではない。我々は、公的監視もしくはそのようなものに従うであろう動きについての理由が、我々の注意を最も大きい説明できない増加を抱える高等教育機関に焦点を当てることを、より理解したい。学位基準の厳格な公的監視を受けて、我々は高等教育機関が一貫した基準を適用し続けることをどのように保証するのかを、理解したいと考えている。
 
そうすることが、学位への国民からの信頼を維持するのに不可欠である。

 
※ 4段階の優等学位(honoursレベル)

学士号の優等学位(honours)の種類
First class honours(First) 70以上
Second class honours,upper division(2:1) 60-69
Second class honours,lower division(2:2) 50-59
Third class honours(Third) 45-49
Ordinary degree(Pass) 40-45

 
2019年7月11日
 
OfS:Getting to grips with grade inflation
 

 

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 質の保証
統計、データ 統計・データ
レポート 海外センター