【ニュース・イギリス】学費に値する価値の転換点-2018年学生学術経験調査

 
2018年6月7日、Advance HEと高等教育政策研究所(HEPI:Higher Education Policy Institute)は2018年の学生学術経験調査(SAES:Student Academic Experience Survey)の結果について、以下のように発表した。学生達の報告では、彼らの高等教育経験から得られる「学費に値する価値」の受け止め方について、統計的に明らかな改善が見られた。

 
SAESは2006年に開始された定期的な調査で、学術経験及び自分たちに影響する政策的問題についての学生の意見を記録するものであり、14,000人以上の学生が参加している。

 
今年の調査では以下の点が明らかになっている:

  • 英国の学生の38%が、自分たちの課程から得られる価値は「良いか非常に良い」と受け止めている。これは昨年の調査より3%改善しており、また5年にわたる長期低落傾向を覆すものである。
  • 価値を「悪い」または「非常に悪い」と受け止めている学生は、昨年の34%から減少して32%となった。
  • 特に統計上明らかな点として、学生数の最大を占めるイングランド出身の学生に明確な改善が見られ、35%が「良い」または「非常に良い」と報告している。
  • 統計上明らかな改善とは言えないものの、スコットランド出身の学生は60%が「良い」または「非常に良い」と受け止めており、一方で、ウェールズや英国で学ぶEUからの学生は昨年同様、それぞれ48%と47%がそのような価値の受け止めをしていた。北アイルランド出身の学生については、十分に明らかとは言えないものの、価値の受け止めが下落した。
  • 教育評価(TEF:Teaching Excellence Framework)*で「金」を取得した大学の学生はより良い価値を受けていそうなものだが、この判断基準において「銀」や「銅」の大学の学生との間に目立つ差はなかった。

なお、本調査に今年新しく追加された部分では、学生に、無作為に選ばれた要素の一覧から、価値の良し悪しについて考える時に主に何を念頭に置いているかを示すよう求めている。学費に値する「良い」または「非常に良い」価値を受け取っていると答えた学生の68%が教育の質を最も重要な要素だとみなしている一方、「悪い」または「非常に悪い」と考えた学生の62%が授業料を最も重要な要素として示していた。

 
HEPI:Turning the corner on value for money ? 2018 HEPI / Advance HE Student Academic Experience Survey highlights students’ belief that value for money in higher education is improving

 
【メディアの反応】
 
BBCはSam Gyimah大学・科学担当大臣が本調査の発表に関して、卒業した学生の就職に将来性がない、十分な実力のない課程が一部にあると述べたと報じた。

 
BBCによれば、大臣は、学費に値する良い価値を得ていると感じる学生が5人に2人未満でしかないということを示す本調査の発表に際し、大学に対し全ての科目の質を保証する努力をするよう強く迫った。また、急に膨張した一部の課程では十分な机や講義室がないという学生の不満がある、と述べて警告した。

 
(注:イングランドでは2014年から2016年にかけて、大学が入れることのできる学部学生数の上限が撤廃されている。)

 
BBC News:Universities warned over courses for ‘bums on seats’(2018年6月7日付け)

 
*教育評価:大学等各高等教育機関の教育の実績を明確に示すため、2015年に導入が決定された評価制度。各機関における「教育の質」、「学習環境」、「学習の成果」に基づき、「金」、「銀」、「銅」の3種類の評価が与えられる。一度得た評価は最大3年間有効。
 
イングランド政府により任意参加で実施されている事業だが、イングランド以外の英国の大学も参加が可能。公的助成を受けているイングランドの大学がTEFを受けた場合、授業料の値上げが可能な仕組みとなっている。

地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育、質の保証
学生の経済的支援 学費
レポート 海外センター