【ニュース・イギリス】学生ローン返済条件の変更で60万人の卒業生に画期的な恩恵

 
2018年4月6日、教育省(DfE:Department for Education)は、2012年以来最大の制度変更で、学生ローンの返済開始が生ずる収入が年間25,000ポンドへ上昇すると発表した。
 
同省は、同日から施行される返済開始年収の変更で、数十万人に及ぶ卒業生が1年につき360ポンド得をすると述べている。約60万人の大卒者がこの制度変更で恩恵を受け、その内容というのは、2012年以降学生ローンを利用した債務者の返済は年間収入が25,000ポンドになるまで開始しないというものであり、(この額は現行の)21,000ポンドから引き上げられている。学生ローンの返済期間である30年間が経過した後には、負債は全て政府によって帳消しとされるので、これは一部の卒業生にとって30年間で24,000ポンドの得となりうる。
 
年収が25,000ポンドを上回る卒業生も、従来に比べ支払額がより下がることで恩恵を受ける。例えば、(変更にともなう年収別の1ヶ月あたりの返済額の変更は以下のとおり):
・ 年収25,000ポンドの場合は30ポンドから0ポンドへ
・ 年収27,000ポンドの場合は45ポンドから15ポンドへ
・ 年収30,000ポンドの場合は67ポンドから37ポンドへ
・ 年収33,000ポンドの場合は90ポンドから60ポンドへ
・ 年収35,000ポンドの場合は105ポンドから75ポンドへ
・ 年収40,000ポンドの場合は142ポンドから112ポンドへ
 
英国に在住している卒業生は、この救済措置を受けるために何もする必要はない。返済は、源泉徴収(PAYE)で支払っている者の場合は雇用者によって自動的に計算され、そうでなければ英国歳入関税局(HMRC)に提出する確定申告での還付の一環としてなされる。
 
なお、フルタイム学生は卒業後の(翌会計年度開始である)4月までローンの返済は求められない。
 
GOV.UK:600,000 graduates to benefit from financial milestone
 

【メディアの反応】
 
○BBC News
 
BBC Newsは、本件についておおむね以下のように報じた。
 
英国学生連合(NUS:National Union of Students)は、この制度変更は多くの者にとって“ありがたい救い”であると述べている。
 
これまで、2012年9月以降に借りられたローンの返済開始年収は、2020/2021会計年度の間21,000ポンドで固定されていた。しかし昨秋、May首相は新しい会計年度から返済開始年収を引き上げることを発表した。
 
この変更ではまた、給料からの返済割合もより小さなものとなるため、25,000ポンドより年収の多い者の返済額も低くなる。
 
英財政研究所(IFS:Institute for Fiscal Studies)が行った調査では、返済開始年収を25,000ポンドに上げることは年収が中間所得層の卒業生に最も利益があり、最大で生涯を通じて15,700ポンドの得が生じる。
 
低所得層の卒業生は、その職業人生の大部分にわたり返済開始年収より低い収入であることが多いため、生涯の返済額の減少はより小さいとIFSは計算している。
 
学生ローンを完済するであろう高所得層の卒業生は年間の支払額が減るとはいえ、これは単に返済期間が延びるだけであるので、生涯を通しての返済額にはほとんど影響がない。
 
IFSのエコノミストであるLaura van der Erve氏は、“全体として、返済開始金額の引き上げの結果として、平均的な卒業生にとっては10,000ポンドほど返済額が減るだろう。これは、高等教育を提供するための政府の長期的費用を大きく増やすことになる。政府の長期的な費用は、一年あたり20億ポンド以上上昇し、40%近く増加する。”と述べている。
 
BBC News:Student loan repayment threshold rises[2018年4月6日付け]

 
1ポンド≒150円(2018年4月6日)
 

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