【ニュース・イギリス】在英日本人研究者が永住権ビザ申請却下のため離国を強いられることに

中国国際関係を専門とし、英国政府に助言した経験もあるノッティンガム大学の英国研究会議研究員(RCUK Research Fellow)の廣野美和氏の英国における永住権ビザ申請が却下されたことに対して、ノッティンガム大学の関係者から強い非難の声が上がっている。
廣野氏は2008年、ノッティンガム大学に英国研究会議研究員として着任した。同研究員制度は、5年間の期間を経たのち自動的に正規研究職に就任できるというものであったが、廣野氏が2014年3月に申請した永住権(Indefinite Leave to Remain)ビザは許可されなかった。理由は、過去5年間で180日以上英国を離れていた年があってはならないという規則による。廣野氏は、2009年~2010年にかけて、中国における国際平和保護政策と人道的戦術に関する研究のため200日ほど国外で過ごした。この「180日ルール」は、2012年に導入されたものだが、今回内務省は同規則が存在する以前の時期について規定を適用し、廣野氏の申請を却下したものである。
廣野氏は、英国籍の1歳児の母であり、ノッティンガムで既に自宅も購入している。かような理由もあり、人権的見地からアピール権(ビザ申請却下に対して異議申し立てをし、再審議を求める権利)を獲得した。しかしながら内務省は譲らず、事態は長期化し、再審議のためパスポートを内務省に預けて既に1年が経過、海外出張にも行けず研究にも私生活にも支障をきたしている状況に限界を感じた廣野氏はアピール権を放棄して日本で京都大学のポジションを得ることを決意した。
ノッティンガム大学政治・国際関係学部長のMathew Humphrey氏は、「廣野氏の研究は英国における対中国政策に多大な影響があった。」と残念がる。そして、同大学のPhilip Cowley氏(議会政治専門)も、「政府のこの判断は、狂気の沙汰以外の何ものでもない。英国にとって最も重要な海外政策に関する専門家を追い出すようなことをするのがまともとは考えられない。人道的見地からも、英国の利益にとっても、正当化する理由は見つからない。」と強く非難する。
内務省は、全ての申請に対し「申請の利益と出入国管理規則に則って判断を下している。」と述べている。

(「Visa refusal for China expert Miwa Hirono is‘pure madness’」より。)

地域 西欧、アジア・オセアニア
イギリス、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
人材育成 研究者の雇用