【ニュース・イギリス】名門大学への進学率の目標値と現実との相違

 
 2019年12月12日、高等教育政策研究所(HEPI)は新しい高等教育進学に関する報告書「社会流動性とエリート大学」を発表した。名門大学への進学率は、現在の進展状況からすると、学生局(OfS)が目標としている水準に達するまで96年はかかると報告している。
 
この報告書はUniversity of Exeter のElliot Major 教授とPallavi Amitava Banerjee博士の共著で、その主な内容は以下の通りである:

  • 2037/2038学事年度までに高等教育の格差を解消するというOfSの計画に従うと、イングランドで最も貧しい地区の若者の名門大学への進学率を、現在最も裕福な地区の若者の進学率まで引き上げるには、現在より早い進展がなければ、1世紀近くかかる。
  • 最も裕福な地区の高等教育進学率と全ての地区の若者の進学率を確実に同率にしたいのであれば、名門大学の定員枠を170,000人と現在の2倍にする必要がある。
  • 名門大学の定員数を一定に保つのであれば、富裕層の学生の数を10,000人または三分の一にまで減らす必要がある。

 
報告書が推奨する主な改善策は以下の通りである:

  • 学生の経済状況など特別な事情を考慮した許可(※1)を増やす-両著者はイングランドの大学は学位コースにおけるcontextual offerの場合、スコットランドでの成功例のように標準的な入学条件と最低限の入学条件を設けるべきと主張する。
  • ランダムな割り当て-他の国で起こっているように、大学は高等教育の最低基準をクリアした学生が無作為に入学できるよう考慮しなくてはならない。
  • より多様な条件- 学生局(OfS)は、名門大学がより多くの学位アプレンタスシップ(※2)やパートタイム、成人学生に対する教養課程や進学準備コースを含む、大学への進学方法を多様化させる革新的な方法によって学生定員枠を拡大するよう検討するべきである。

 
※1 学生の経済状況など特別な事情を考慮した許可:学生の経済状況、出身校、家庭環境等を考慮し、成績は合格に足りないが、将来的に高等教育に
   おいて学力を伸ばす可能性があると考えられる学生に対して出される入学許可。
 
※2 学位アプレンタスシップ:北欧を中心にヨーロッパで広く取り入れられている職業教育制度の一環。英国では2015年に開始され、大学と企業が
   共同で作成したカリキュラムの元、学生が「見習い」として実際の会社で働きながら学士号・修士号を取得し、大卒もしくは院卒と同等の学歴
   を取得することが可能な制度。学生は企業によるトレーニングを受けながら働き、同時にパートナーシップを結んだ大学等の教育を無料で
   受けることができる。元々は、経済的な問題で進学を断念した若者が、高等教育と同等の学歴を得ることで就職の幅を広げられるように
   との目的で政府によって作られた制度。

 


高等教育政策研究所(HEPI): It could take a century to hit the latest official university access targets

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 入試・学生募集、学生の多様性
統計、データ 統計・データ